「朝鮮大学校物語」 | 架け橋人の会―韓日翻訳グループ

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아녕하세요? 今野です

今回は、ドキュメンタリー映画「ディア・ピョンヤン」や劇映画「かぞくのくに」の監督として知られるヤン・ヨンヒさんの小説を紹介します。

大阪育ちの主人公・ミヨンが東京にある全寮制の「朝鮮大学校」で、高い塀の内側と外の世界を行き来しつつ、恋と挫折、祖国や組織への葛藤を四年間の大学生活で経験する、という内容です。

フィクションですが、朝鮮大学校出身の著者の体験がもとになっているそうです。

 

上京し憧れの東京の文化にワクワクしたり、日本人男子学生との恋愛など、80年代の学生生活を素材とした青春小説としても十分楽しめるのではないかと思いました。

でも、やはり心に残っているのは「日本の中の北朝鮮」である朝鮮大学校の不思議さ(不思議という表現はふさわしくないかもしれませんが。。)や、「在日、朝鮮人であることは気にしていない」という言葉でミヨンを傷つけてしまう日本人たち、そして祖国・北朝鮮に住む姉との再会のくだりです。

朝鮮大学校の生活は、授業は制服(男性は学生服、女性はチマ・チョゴリ)着用、日本語禁止、政治学習、毎日行われる総括(皆の前で自己反省を述べたり反省文を書いたりすることのようです)、無断外出厳禁、、、など、ハードさは枚挙にいとまがありません。

また、ミヨンは卒業旅行としての「祖国訪問」で、自分が幼いころ北朝鮮に渡った姉と再会します。ミヨンの姉は、姉が置かれた過酷な状況を知りとまどうミヨンに「幸せになるのはあんたの義務」「もう無理して来なくていい。時間とお金使うなら他の国に行きなさい」などと言います。どんな思いでこんな言葉が出てきたのかとおもうと、切なすぎる場面でした。

最後の章では、ミヨンは卒業後の進路を自身で切り拓いていくことを選択します。

 

楽しく、なおかつさまざまなことに思いをめぐらせることができ、読んで良かった一冊でした。