私が本当に辛いのは、



通夜が終わった後の、夜だった…









りえ「!!」




眠れない。







目を閉じるのが怖い。






無理やり目を閉じても、荒くなる息遣い。





怖い。




でも声を出して泣くことはできない…




私は、どうすればいいのだろう・・・





私は真っ暗の中、ひざを抱えて声を押し殺して泣いた。






泣いている間は少し気が紛れる。






冷静になると、妹の死体の映像が脳裏に焼きついて消えなかった。








通夜が終わり、家に帰ったあたしたち




実家には父と母、妹のミサ


私は祖母と祖父の家に行った




なぜなら、父が祖母のことを気にかけていたからだ。



だから私に祖母の傍にいて欲しい、とお願いしてきた。




通夜の途中、祖母はずっと泣いていた。



まりの友達が笑っているときも、すみっこで、こっそり




近所の人が、笑顔で励ましてくれている時も。








だめだったんだろう





人の無邪気な笑顔にも、敵意を向けてしまうくらいに。





優しい祖母でも





人を心から恨むことがある…







それくらい、祖母にとって




孫の死というものは、



受け入れがたいものだったのだろう。









通夜はいつの間にか終わり、



人でいっぱいだった式場は、いつの間にか人はまばらになっていた。




りえ「ねぇね…お寿司食べてもいいかな?」


ミサ(一番下の妹)「私も食べたぁい♪」




母「もちろん、いいわよ」






ミサ「やったね♪」





久しぶりのお寿司。



少しさみしい気持ちは消えないけれど。


でも、やっぱり食べている時間は幸せだった。




幸せ…



そう、思い込みたかったんだ。








りえ「ねえね、早くお寿司、食べたいねぇ~♪」



妹「あー本当だあ♪」




通夜野参列者も落ち着き、殆どの人は参列者同士で話をしたり、奥の食事のスペースで落ち着いたりしている。



りえ「ねぇ、お母さん。私たちの分は残っているの?」



母「ん…まぁ、残してくれるんじゃないのかな?」



母もだいぶ落ち着いたようだ。



『只今通夜の最中』とでも言われなければ、通夜だとわからないくらいだ。


少し、笑顔が目立つ。




そうだよね、こうやって笑って、人は辛いことを乗り越えていくんだよね。



あたしから見たまりは、決して明るい子ではなかった気がするけれど、


この場に違和感なく混じれるくらい、まりはこんな感じで、明るい子だったんだろうな…




りえ「ね、サーモンはあたしが食べるからね?」


妹「私はイクラが食べたいな~」




そうだ、こんな感じで いつも三人で食べ物の話ばかりしていた。







受付は従兄弟たちに任せて、あたしたち家族は前の方に座っていた

お坊さんが来たら、とりあえず深く頭を下げて

なんだかよくわからない話を聞いていた。

御焼香の順番がきたから、とりあえず母と父の真似をしといた。


こんなルーチンな作業、意味などないのだろうけれど、とりあえず従っておいた。

…でなければ、頭がおかしくなりそうだ…



近所の人が殆ど来てくれて、

みんな暗い顔をしていた。

泣いている人もいた。結構、多く。



久し振りに会ったおばちゃんと、こんな再会、したくなかったよ…と心から思った。

おばちゃんたちの泣いた顔、今日始めてみたよ…



でも泣かなかった。泣いたらオシマイだと思ったから。


普段はちょっと冷たい末っ子の妹が、担任の先生と話して泣いても

母が友人に囲まれて泣いても


泣けなかった。




涙は、昨日に置いてきてしまったようだ…



「…りえ!!」


りえ「…あぁ、わざわざありがとー」



わざとらしく笑ってみたが、彼女には効果はなかったようだ。


レイナ「…最近まりちゃんと話してないなって思ってて…今度話したいなあなんて思ってたのに…」


彼女は私の幼馴染み

小学生の頃などは、妹と交えてよく遊んでいたな…


レイナ「…こんなこと…ッ全然想像できてなくて…なんかもぉ…私…」


りえ「…あたしだって想像してなかったよ。今日も喧嘩してるんだろうなーっとは、考えていたかもしれないけど」



レイナが少し笑う

でもその顔は、彼女本来の笑顔とはほど遠くて

泣き腫らした目は誤魔化せなかった


レイナのお母さんも、レイナの後ろで、青いハンカチを握りしめていた。


あたしに何か言ってくれたけれど、ちょっと聞き取れなかった。


でも、気持ちはすごく伝わってきて、


りえ「…ありがとうございます…」


あたしは、伏し目がちにお礼を言って、頭を下げることしかできなかった。