碁盤斬り | Pessimistic Optimist

Pessimistic Optimist

徒然の想いと出来事

今年11本目の劇場鑑賞映画は公開されたばかりの邦画でした。

 

草彅剛主演の時代劇「碁盤斬り」です。

 

この様な時代劇が作られていたとは全く知らず、映画館のチラシを見て初めて知ったのですが、その時何より注目したのは監督が白石和彌だった事でした。

 

白石監督を初めて知ったのは「凶悪」という映画でしたが、容赦ない凶悪犯の表現法やリアリティに震撼するものがありました。

 

俄然注目する監督としてインプットされましたが、その後も「日本で一番悪い奴ら」「彼女がその名を知らない鳥たち」「孤狼の血」「凪待ち」「孤狼の血 LEVEL2」「死刑にいたる病」と6本も同監督の作品を鑑賞していますが、全作とにかくリアルで、暴力的な表現も容赦なく、しかし人間の性を抉り出す手腕に長けた個人的には非常に感覚的に合う監督の1人と言えます。

 

言い方を変えれば、ある意味エグイ現代劇を得意にしている監督が、何故か初めて時代劇にトライしたのが今作になる訳で、とすると時代劇でもかなりエグイ殺陣シーンや、おぞましい迄の人間像が次々に登場するのか・・・等々予想をしていました(^-^;

 

実際に鑑賞してみると・・・いや~非常に良い意味で裏切られました!!見事な迄に「静」を重視した秀作でした。

 

囲碁を通じて表現される人の内面、武士としての不器用な迄の生き様、人と人との心の触れ合い、といったものを静かに淡々と描き、来るべきクライマックスの死闘においても、白石監督なら、血しぶき飛び散るグロさ満開でもおかしくないと思っていましたが、その場面でさえ、むしろ精神性を重んじた味わい深い表現になっていて、全編通じた趣きに共感しまくりでした。

 

こうした「静」を意識した時代劇の秀作として「最後の忠臣蔵」が思い出されますが、片や浄瑠璃、今作では囲碁と日本の伝統文化を上手く絡める手法も含め、ひょっとすると白石監督も、「最後の忠臣蔵」を少なからず意識したのかもしれません。

 

主演の草彅剛は相変わらず草彅剛のままで、決して演技は上手くないと毎回思うのですが、その存在感は独特で、だからこそ脇を固めるアクの強い上手い俳優陣の演技が生きる気がします。

 

特に今作では名優、國村隼との絡みが秀逸ですし、斎藤工もイイ味を出していて、作品の厚みに貢献しています。

 

ストーリーは至って単純ですが、だからこそ登場人物1人1人の立場や心情に感情移入出来ますし、元来日本にあっただろう「静」の文化や精神性を再認識出来る秀作として、お薦めしたい1本になりました(*^^)v