映画 「ブルックリンでオペラを」 2024(令和6)年4月5日公開 ★★★★☆

(英語; 字幕翻訳 高内朝子)

 

 

ニューヨーク、ブルックリン。

 

夫スティーブンをさがす妻のパトリシア(アン・ハサウエイ)。

財団の理事長は作曲家のスティーブン・ローデム(ピーター・ディンクレイジ)に

新曲の進捗状況を聞き、再来週にはスコアを見たい・・と。

シブい顔のスティーブをパトリシアがとりなします。

 

スティーブンは現代オペラの作曲家ながら、現在大スランプで、5年間も書けていません。

精神科の主治医パトリシアと結婚したものの、未だ鬱状態。

 

 

今日も新曲のアイディアが閃かないスティーブンを、

愛犬リーバイと共に強引に散歩に送り出すパトリシア。

「自分の殻をやぶって、新しい世界で、知らない人と出会うのが治療よ」

 

言われた通りに歩きはじめますが、

途中でバーに立ち寄り、ウイスキーを飲んでいると

先客の女性に話しかけられます。

 

 

「朝の11時から飲んでるなんて、なんの仕事をしているの?」

作曲家だというと、その女性(マリサ・トメイ)はカトリーナと名乗り、

タグボードの船長で今日は非番だからと、船に案内してくれます。

 

 

言われるままに船に乗り込み、お茶を飲んでいると

「私、恋愛依存症なの」と、いきなり服を脱ぎはじめ

船のなかのベッドで一線を越えてしまいます。

 

あわてて逃げ出したスティーブンは海に転落してしまいますが

その時に新曲のアイディアが閃き、一気に書き上げます。

「She came to me」というそのオペラは大好評。

 

ところがカトリーナも客席でそれを見ており、

ストーカーみたいにやって来る彼女が怖くなって、スティーブンはまた逃げ出します。

 

「ちゃんと病院で見てもらえ」といわれたカトリーナが受診したのは

なんとパトリシアのクリニック。

オペラのモデルがカトリーナだということが、妻にもバレてしまいます。

 

 

 

パトリシアには学生時代に出産した18歳のジュリアンという優秀な息子がおり

スティーブンとは義理の関係。

 

ジュリアンは今、一緒に研究発表をやっている16歳のテレザに夢中で、

彼女もまた飛び級で大学を受けようという優等生です。

 

テレザの家もちょっと複雑で、口うるさい法廷速記者の父トレイは継父。

移民の母マグダレナは彼には何も言い返せません。

 

掃除が大好きなパトリシアが、新入りの家政婦といっしょに家じゅうをピカピカにしていると

そこへ息子のジュリアンがテレザを連れて帰ってきます。

「テレザはジュリアンの恋人よ」

パトリシアは家政婦に紹介しますが、テレザは驚き、

「私の母です」

新入りの家政婦は、テレザの母、マグダレナでした。(あらすじ とりあえずここまで)

 

 

 

 

 

予告編の感じでは、スティーブンとパトリシアの夫婦の不倫話に思えますが

それはそれほど進展なくて、2つの家の母親の連れ子同士男女の恋愛、が話の中心になります。

 

相関図はそれほど複雑ではないですが、クセ強めでちょっと感情移入が難しい登場人物が多く、

テレザの母マグダレナにはちょっと同情しました。

 

だって、テレザとパトリシアは既に親しいのに

自分は何も聞かされていないのって、ショックですよね。

「あなたの彼氏の家のトイレ掃除をするなんて気まずいわ」

 

テレザにしてみれば、純粋な白人でないジュリアンを

差別主義者のトレイに会わせるのがイヤだったんでしょうけど。

 

このつづきです(ネタバレ

 

ジュリアンの部屋を掃除していたマグダレナは、

ベッドの下に娘テレザの半裸のポラロイドがたくさんあるのに気づきます。

驚いて何枚かを持ち帰り、トレイに見せると

「これで彼を告訴できる」といわれます。

 

帰宅したテレザを問い詰めると

「セックスはしたけどちゃんと避妊してる」

「合意の上のセックスなんだから関係ない」

 

このテレザの声をトレイは録音しており、

「この録音テープと写真で彼はもう逃れられない」

「16歳はまだセックスに合意はできない年齢だ」

 

仕事柄、法曹関係に顔のきくトレイは

(血のつながりはないものの)養父として裁判に持っていく気満々です。

 

恐ろしくなったマグダレナはジュリアンの家に相談。

「速記者に嵌められたとは・・・」

「それなら結婚しちゃえばいいんじゃない?」とスティーブン。

 

ところがニューヨークでは16歳の結婚は認められておらず、

デラウェア州まで行く必要がありました。

でもテレザは家に監禁されており、

車で逃げても警察にも顔のきく養父が道路を封鎖するに決まっています。

 

まずは

トレイの趣味である「南北戦争コスプレ大会」に参加するのを口実に

テレザを家から連れ出し、そのあと

車がつかえないとすると、何で移動するか?

閃いたスティーブンは、全速力でカトリーナのタグボートまで走ります。

                     (あらすじ ここまで)

 

 

あらすじはかなり省略してますけど、

若いカップルを養父の追跡から救うラストは楽しかった!

自分の家族の幸せよりも「自分の価値観」を優先する人って

一定数いるでしょうが、ざま見ろ!って感じでした。

 

精神を病んだ精神科医のパトリシアがすべてを捨てて修道女になる

っていうのは、ハッピーエンドなのか、ちょっとわかりませんでしたが。

 

 

今回もピーター・ディンクレイジがすごい!

神話や伝説のなかでは、小さい体であることが必至ですが、

彼が最近演じているのは、小柄である必要のない役ばかりです。

「スリー・ビルボード」も「パーフェクト・ケア」も「シラノ」も・・・

 

本作でも「身長差で笑わせる」シーンは全くないし、

これは彼の魅力なんでしょうけど、頼もしいしセクシーでした。

(犬のリーバイとも、けっこう似てました)

 

 

テレザの母親役、既視感あったと思ったら

東欧映画には欠かせない歌手で女優のヨアンナ・クーリクでした。

ハリウッド映画にでるなんて、最初で最後かも。

下の2本は、私の生涯30本のなかに入りそうな傑作映画です。

 

冒頭は、カウンターテノールの歌うカルメンの「ハバネラ」

スティーブンの作曲したオペラ作品が2本、

そしてラストは、GG賞の主題歌賞にもノミネートされた“Addicted to Romance” 

ブルース・スプリングスティーンの書きおろしで、音楽も充実しています。