研修病院を無事卒業し、東京の自宅に戻ったのは3月の半ばだった。

溜まっていた有給を消化しつつ夜勤だけは続けながら引越しの準備をし

時節柄送別会もお別れの飲み会もなしにドタバタと戻ってきた。

あっという間の二年。

あっという間の研修医生活が終了した。

 

「もう生涯救急外来に入ることも、術場に入ることもないかもしれないと思うと感慨深い」

 

そうなのだ、研修が終わり自分の専門を選んだ後は

選ばなかった科の現場に入ることはなくなる。

引越し荷物をまとめながら、大学時代からコツコツ練習してきた

外科の糸結び用の練習版を眺め

ああ、これはもう不要になるのかとそっとゴミ箱に移した。

 

おじさんは今月60歳になった。

同級生は定年を迎えてゆったりした生活に入る時期だが

彼の場合は逆走しているのでここからが本番だ。

選んだのは在宅医療の現場。

一軒一軒事情の違うお宅に伺いながら

どう生きるかを一緒に考える医療に入ることになる。

採用してくださった先生は「その年齢だからできることがある」と力強く背中を押してくださった。

60歳新人医師、明日からまた新しい挑戦が始まる。

 

 

約2ヶ月通っているライザップの進捗を。

(週2回のパーソナルトレーニングの受講と食事制限)

 

体重、体脂肪ともに減。

特に脂肪は大幅減。

なんとおおよそ生後ひと月の赤ちゃんくらいの重さの脂肪を体内から消失することに成功しております!

筋肉量は大幅アップ。

血液検査の数値も大きく改善。

 

人生初の本格的なトレーニングに挫折はないか心配でしたが

トレーナーさんもそこはプロ。

老化が進み、硬くなった体や弱った筋力でもできる動きから始めて

スモールステップを積み上げてくださり

苦手意識はあるものの、少しずつ出来るようになったり、体に変化があったりすることを楽しみに

そして何よりも高い高い授業料を払ったことをやる気に変えて続けているようです。

残りあと3回。

これで終わりではなくて自己管理の始まりになるように

うすら笑いで冷酷に運動習慣と食事管理を継続していく所存。

 

改めてわかったことはやはりちゃんと食事を変えないと変わらないことがたくさんあること。

代表格は血糖値。

食べたものはてきめん血に出るね。

 

ストレスが溜まりすぎないように良いバランスを見つけながら続けないと。

頭の使い所です。

 研修は最終盤を迎えている。2月は産婦人科。

 

産婦人科の研修はお産の立ち会いを一定数するのが決まりなので

夜中や早朝に電話が鳴り、とるものもとりあえず家を飛び出す日々。

まもなく60歳のおじさんには辛かろうと思うが

終わりがあるからこそ全力で頑張れることもある。

 

「お産って本当に命懸けだなと毎回思う。

何度見てもどんな妊婦さんも命懸けの出産が基本で

その上に時間がかかったり陣痛が強かったり弱かったり

子どもが大きかったり小さかったり色んなことが起こる。

帝王切開は帝王切開でものすごい体の負担を強いられる。

男で『お産見たらもう妻を女に見られないから見ない』とかいう奴いるけど

いっそ神だと思うから見たほうがいい。

女の人がどんな思いでどんな痛みで自分の子どもを自分の代わりに産んでるか知ったほうがいい。

親になるのは自分ごとなんだと思ったほうがいい。

全人類知ったほうがいい」

 

奥さんの妊娠中に不倫をしていた俳優やタレントさんが猛烈に叩かれるのはここにあるよね。

やっぱりそれができる神経がわからないんだよね。

妊娠中もつわりや体の変化や眠気やだるさや節々の痛みに悩まされながら

必死で胎児を守り、あの死ぬほどの痛みを味わって子どもを産み

産んだ後は眠れない日々を過ごしているのに何やってんのかお前は、ってことだよね。

裏切られたとか不潔だとかそう言うのとも違う。

お前にできねえことをやってんだよこっちは! 

何ならお前が代わりにやってみろ、ってことだよね。

 

突然語気を荒げて語り出したわたしをびっくりした顔で見て小さな声でつぶやいた。

「いや、だから俺はわかってるって。女の人は本当にすごいと思います・・・はい」