中国華南・改善道場 -3ページ目

すぐやる

改善格言:4
すぐやる


噴流半田槽で半田付けをすると,部品が入っていないスルーホールに半田が付いてしまう.
半田槽を通した後に,部品を挿入し手半田する場合は具合が悪い.半田槽で付いてしまった半田を吸引してから部品を挿入しなければならない.

ステンレスのピンを使った治具を使えばよいのだが,生産量が少ない製品には使いにくい.
耐熱テープでスルーホールをマスキングして半田槽を通すことになる.

しかしこの耐熱テープを貼る作業がばかばかしい.せっかく貼ったモノを半田槽を通ったあとに剥がさなければならない.剥がすために貼っているようなものだ.

爪楊枝をスルーホールに刺して半田槽を通そうということになった.

現場のリーダに爪楊枝をもってこいと言うと,爪楊枝の購入依頼を書いて総務に買ってもらうと言う.
こういうリーダは即叱られることになる(笑)
「食堂に行ってもらって来い!」

改善を思いついたらすぐにやる.
改善の効果は,始めた時から累積で効いて来る.一日遅れれば一日分の効果がなくなる.
すぐやってみて効果を確認する.うまくゆかなければ更に改善する.
スピードが重要だ.

総務に大量に爪楊枝を買ってもらってうまくゆかなければ,爪楊枝はムダになる.


接着剤の乾燥を,ラインアウトしてバッチ処理する工程があった.
中間在庫をなくし,生産リードタイムを短縮するためにインラインで乾燥させる事にした.
即座に工程の中に小さなコンベアを持ってきて,ダンボールで乾燥炉を造り布団乾燥機の温風を入れた.
これでうまくゆくことを確認してから,設備の設計をすれば良いのだ.
いきなりインライン乾燥設備を作ってうまく行かなければ,何度も手直しをすることになる.
すぐに,手元にある材料でやってみることが重要だ.

改善リーダを育てろ!

改善格言:3
改善リーダを育てろ!


中国の工場で現場リーダを観察していると,彼らは作業員を従わせるのが,リーダの仕事だと考えているように見える.

現場リーダの力量をレベル分けしてみると,

問題外のリーダ:問題が起きているのに気が付かない
駄目なリーダ:問題が起きている工程の作業者を叱咤激励して,生産をスムースにしようとする
普通のリーダ:問題が起きている工程を手伝って,生産をスムースにしようとする
良いリーダ:問題が起きている工程を改善して,生産をスムースにしようとする

現場リーダの本来の仕事は,改善だ.

通常現場リーダは,今の仕事がうまく出来ることが評価され,現場リーダとしての職責を与えられている.従って今までのやり方を守る「旧守派」であることが多い.

しかし今までのやり方でやっていては,問題はなくならない.
品質問題やネック工程などは,今までの方法でやっているから,解決できないのだ.
改善が必要だ.

現場リーダには,まず改善に挑戦する勇気を与えなければならない.

右・左・右・左,両手同時,交互動作

改善格言:2
右・左・右・左,両手同時,交互動作


中国ローカル企業の指導を始めたころに,作業手順書がないのに驚いたことがある.製品の分解図面しかない.これを見て班長が工程を決め,各作業者が工程ごとの作業をしていた.

従って班長が変われば,作り方が変わる.同じ班長でも前回と今回では作り方が変わる.
しかも作業員ごとに作業方法が違う.従って同じロット,同じラインで生産された製品でも良く見ると違っている.

こういう製品は「工業製品」とは言わない,「工芸製品」だ.
工芸製品としての付加価値があればよいが,大量に作って大量に販売する工業製品で,このような個体差があるのは困ったことになる.

ここまで極端な例は,日系企業では見ない.
しかし作業手順書や作業要領書があっても,動作まできちっと指導していない例を見かける.
動作まできちっと規定しておかなければ,品質や生産性のバラツキとなる.

作業者が両手を同時,交互に使って流れるような動作となるようにする.
そのために作業者の立ち位置,治工具の置き方・置き場所,部品の置き方・置き場所を決める.

ある工場では,4人の組み立て作業現場で,両手同時・交互動作を作業員に指導しただけで,3人で組み立てができるようになった.作業の仕方を教え,何回か練習をしただけだ.30分もかからずに25%の作業効率改善ができた.


作業員は先生.作業員から学べ

改善の心構えとか,ノウハウを格言にしてみようと思います.
まずは第一弾

改善格言:1
「作業員は先生.作業員から学べ」


大の大人が,中国の農村から出てきた若い出稼ぎ作業者を先生だと言うのは,おかしな話かもしれない.
しかし自分自身は,彼らから多くを学んでいる.私が指導をしているリーダたちにも,作業員から学べとよく言っている.

作業員から学べといっても,彼らは何も教えてはくれない.
彼らの動作から学ばなければならない.

現場のリーダは,作業方法を熟知しており,作業者に教えることが出来る.しかしその作業を一日に何千回も繰り返しているのは,作業者だ.日々それを繰り返しているわけだから,体が作業を覚えている.そして一番やり易い方法で作業しているはずだ.

口でうまく説明できなくとも,その動作を観察すると,うまく出来ていないところ,うまく出来ているところが見えてくる.

うまくできていないところは,うまく出来るように道具立てや,やり方を改善する.
うまく出来ているところは,他の作業員も真似ができるように手順化する.


ある工場の組み立てラインで一箇所必ずボトルネックとなってしまう作業があった.
特に複雑な作業ではない.黒い遮光テープを台紙からはがし,製品に貼り付けるだけだ.
しかしこの作業がうまく出来ずに,ここで製品が停滞してしまう.

細長い遮光テープを台紙から剥がし製品に貼り付けようとすると,テープが指に絡みつきうまく作業できないのだ.

班長がいくら教えてもうまく出来ない.班長すらうまく出来ないのだ.


その作業をじっと観察をすると,台紙から剥がしたテープは静電気が帯電しており,つかもうとする指に吸い付けられているのが分かる.原因は分かったが,どうすれば良いかが分からない.アイオナイザーで除電しようと思っても,うまくゆかない.むしろ風で余計にやりにくくなる.

こういう時にうまく出来ている作業員を観察する.
うまく出来ている作業者は,台紙からテープを剥がした後テープを掴みに行かないのだ.
指先を出して,テープが静電気の力で引き寄せられてくるのを待って掴んでいる.
その動作は,全くムダな動きがなく,惚れ惚れするほど美しかった.

たぶん彼女は,静電気が発生してテープが吸い寄せられているメカニズムは知らないだろう.むしろテープが指に吸い寄せられていることすら知らないかもしれない.何度も同じ作業を繰り返すことによって,うまく出来る方法を編み出していたのだ.

理屈は分からなくても,言葉で説明できなくても,作業者たちは動作で我々にどう改善すればよいか,どこを改善すべきかを教えてくれる.

新年快楽!

永らくご無沙汰していました.

中国からアメブロにアクセスできなくなり,ブロク更新のモチベーションが維持できませんでした.
ぼちぼちとまたブログを更新しようと思います.

まずは新年の決意(笑)

2012年には「中国の産業発展に貢献した外国人」として,政府から表彰を受けます.

すごい目標を立てましたが,どうすれば良いか分かっていません(笑)
2022年に引退する時に,100人の優秀な経営者に引退記念パーティを開いてもらうための,第一歩です.

『吹牛』といわれようがかまいません(笑)
大きな目標を掲げておけば,きっと誰かが助けてくれます.