学校も終わり、いつもならユナと帰るころ僕は校内中を歩き回っていた。

・・・ユナどこにいったんだろう。

どこを探してもユナはいない。

もう帰っちゃったのかも。

下駄箱を見ればわかるか。

下駄箱を見てみる。

そこにはユナの靴はまだあった。

隣のクラスの下駄箱にはなつの靴が・・・

「・・・っ!」

僕は嫌な予感がした。

さっき、屋上でユナは僕が帰るのを待っていて、そのあとなつに何かしたとしたら・・・。

いや、たまたまだろ。

そんなことえお考えながら僕の足は屋上に向かっていた。

――――ガチャッ

屋上の扉を開ける。

そこにみたのは・・・

「・・・ユナッ!」

ユナがなつに向かって金属バットを振り上げている姿だった。

僕はユナが金属バットを振り下ろすよりはやくユナのところに行こうとしたが間に合わなかった。

――――ドガッッ

「きゃぁぁぁっ!!・・・やめっ・・・痛ッ・・・!!」

鈍い音ともになつの悲鳴が聞こえた。

それでもユナはバットを振り続ける。

僕はそんな信じられない光景に体が震えて足が動かなかった。

それでもやっと声がでた。

「やめ・・・やめろー!!」

せいいっぱいの声で叫んだ。

その声に反応したユナはバットを振り下ろす手を止めた。

「なーんだ・・・来ちゃったんだ。」

「来ちゃったんだ・・・ってなんだよ!今何してんたんだよ!」

僕はユナに掴みかかる。

「あぁ、あの子にゆっくり痛みを味あわせてから消しちゃおうかと思って。」

そんなことを平気で言うユナが怖い。

「痛っ・・・テルキ・・・助け・・」

「おい!なつ!しっかりしろ!」

なつはぐったりと倒れこむ。

コンクリートの上にはなつの血が飛び散っていた。

「ユナ・・・こんなことしたら・・・なつ、死んじゃうよ。」

「へぇ、そんなにその子が大事?やっぱり早く殺しておけばよかった。」

「ユナっ!!いい加減にしろよ!僕、ユナとは・・・」

「別れるって言うの?」

「・・・。」

「ねぇ、ユナの事嫌いになった?

ねぇ、ユナよりなつが大事?

ねぇ、テルキくんはユナを責めるの?

ねぇ、ユナは何も悪い事してないよね?

ねぇ・・・・答えてよっ!!」

ユナの目は人間の目・・・というよりは他の、何か違う目をしていた。

ユナの狂ったような質問攻めに僕は何も答えられなかった。

「テルキくんはユナだけのものなんだよ・・・?」

僕にバットを向ける。

「何する・・・」

ユナは勢いよくバットを振り上げる。

「・・・ユナ・・・何も悪い事してないよね?」

ニコッと笑うユナの笑顔は恐ろしかった。

「・・・ユナは悪くないんだよね?」

今にも振り下ろしそうなバットが目に映る。

きっとユナは悪い事をしている、なんて言ったら僕にそのバットが振り下ろされるだろう。

そんなことを考えながら僕はくびを縦に何回も振った。

「そう、よかった。テルキくんは傷つけたくなかったもん。」

「それよりなつを病院へ・・・」

僕がなつを掴んだ時だった。

「・・・テルキくん全然わかってない。」

「えっ・・・」

ユナは僕の頭にバットを思い切り振り下ろした。

―――ゴンッ

「うぁぁぁっ!!」

体に痛みと衝撃が走る。

ユナはそんなことを気にもとめず僕の体を殴る。

コンクリートに飛び散ったなつの血に混ざり、僕の血まで飛ぶ。

ユナは僕がなつを掴んでいた手を無理やり離すと、その手にバットを振り下ろした。

――――グシャッ

「うぁぁぁ!あぁぁぁっ!!」

何かが潰れるような音がした。

「あはははははっ・・・これであの子を掴んだ時についたバイ菌は消えたね。」

僕はその声をききながら意識がなくなっていった。




「食べれるの?」

「うん、お腹空いてるから。」

なつが作ったパンケーキを受け取る。

「今食べていいかな。」

「う、うん。」

恥ずかしそうに下を向くなつ。

僕はパンケーキを一口食べる。

「うん!おいしいよ!」

「ははっ。照れるな。」

僕はパンケーキを全部口に詰め込んだ。

「ありがとう。」

「うん、またね。」

なつが屋上を出ようとしたときだった。

「あっ・・・ぁ・・」

「ん?」

なつの声を聞き僕は振り返った。

「ユ・・・」

そこには怒りに満ちた顔で立っているユナがいた。

「あんた・・・木元なつ?」

「ぅ・・・うん。」

「今、テルキに何あげたの?」

「パ、パンケーキ・・・」

「どうして?」

「いつもパン買って食べてたから・・・でも、今日はユナちゃんのお弁当があるからいいかなって思ったけど・・・」

「・・・じゃぁ、なんであげたの?」

「僕が食べたいって言ったんだよ!」

僕があわててユナとなつの間にはいる。

「テル・・・キくんが言ったの・・・?」

「うん。」

「ユナが作ったお弁当よりあいつが作ったやつが食べたいの!?」

ユナは怒鳴る。

「そういうわけじゃなくて・・・。たまたまなつのを先に食べただけで・・・」

「・・・言い訳なんて聞きたくないっ!!」

ユナが激しく怒鳴る。

「あの人にメアド・・・おしえてたよね・・・?」

急に静かな声で話すユナ。

背筋がゾクッとする。

「友達なんだからおしえるのは普通なんじゃ・・・ないかな?」

落ち着かせるような口調で話してみる。

「普通?あれが?あんなに仲いいのに友達?普通?・・・あはは・・・」

「ユナ・・・?」

「ふざけないでよっっ!!」

そう叫ぶと、なつの首元を掴み手すりに押しつける。

「あんたがいなければ・・・あんたさえ・・」

なつの首を掴む手に力がはいる。

「く・・・苦しい・・」

「このまま突き落とせば・・・」

ユナはなつの上半身を手すりの外に投げ出す。

「キャァッッ!!」

なつの悲鳴が聞こえる。

「離せってば!!」

僕はユナを引っ張る。

慌ててユナが手を離したなつを掴んで引っ張り上げる。

「はぁ・・・はぁ・・・。」

なつが苦しそうに呼吸をする。

「・・・どうして?どうしてこの女を助けるの?

・・・邪魔されてもいいの?」

僕は首を横にふる。

「だったら・・・・」

「そんなことしていいわけないだろ!」

僕はユナを怒鳴りつける。

「なつ・・・大丈夫か?」

コンクリートに倒れこむなつをゆっくり起こす。

「うん、大丈夫。」

「ごめんね?テルキくん。木元さんもごめんなさい。ユナ、先教室戻るね。」

そう言うと屋上に通じる階段を駆け降りていった。

「ごめん、本当に大丈夫か?」

「うん、ユナちゃんメアド交換したこと知ってたね。」

「ごめん、僕の不注意で。」

「ううん。大丈夫、テルキ先に戻っていいよ。一緒に行くとまたなんか言われるかも・・・」

「わかった。もう授業始まるからなつも急いでな。」

僕はそれだけ言い残すと教室に戻った。

教室に入ると、先に戻ったはずのユナがまだ来ていなかった。

どうしてだろう。

僕より先に戻ったはずなのに・・・。


「ん・・・」

あれ、ここどこだ?

部屋の中をぐるっと見回す。

あぁ、そういえばユナの家に泊まったんだった。

でも、なんでこんなに散らかって・・・

あぁ、昨日ユナが怒って・・・。

昨日のユナの怒った顔を思い出し、背筋がゾクッとした。

隣を見るとユナが横になって寝ている。

可愛い寝顔だ・・・。

「んぅー・・・っ」

ユナが目をこすり開いた。

その時僕と目があった。

「あっ!ごめんね。お腹空いたよね、今つくるから!」

ユナはそう言い残して台所に急ぐ。


「はいっ。できたよ。」

目の前に置かれたのは、パンとスクランブルエッグと牛乳とウインナーだった。

「いただきまーす!」

お腹が空きすぎた僕は、ガツガツと勢いよく食べる。

「ふふっ。子供みたい。」

と言って笑う。

「ひょんなほとないお・・・。」

パンを口に詰め込みすぎて上手くしゃべれなかった。

「そういうところもね。」

と言ってまた笑う。

そんな笑顔を見て僕もニコっと自然な笑顔がこぼれる。

「あっ、今日土曜日だよね。どこか行く?」

食器を洗いながら隣にいた僕に話しかける。

「んー・・・。」

僕はちょっと考えてから「ケータイ買いたいかな・・・。」と言った。

でも、そんなこと言ってユナは怒らないかな?と心配になる。

「いいよ。ユナが壊しちゃったんだもんね。ユナがいいの選んであげる。」

「そっか・・・。ありがとう。」

すんなりと買うことを許してくれた。


***学校***


僕とユナは一緒に登校していた。

教室に入ると後ろから声をかけられた。

振り向くとなつが立っていた。

「ねぇ!どうしたの!?ケータイつながらないから心配したんだよ?」

「ご、ごめん。」

2人で階段の隅で話す。

「何かあった?」

僕は黙ってるわけにもいかず、ケータイを折られたことを話した。

「そんな・・・。そんなことされてなんで別れないの!?」

「だって・・・いつものユナは・・・」

「それはわかってる。無理に別れろとは言わないけど・・・。でも、気をつけてね。」

「わかった。」

なつはとても優しい子だ。

いっそのことなつと付き合ったほうがいいのかもしれない。

でも、普段のユナを思い出すとそんなことはできない。

「新しいケータイ買えた?」

「うん。これだよ。電話番号とメルアド登録しといて。」

「わかった。でも、ユナちゃんに分からないようにしてね。ケータイ折られたの私のせいだし。」

「違うよ。僕が怪しまれるような行動とったから・・・。じゃぁ、そろそろ行くね。」

「うん、何かあったら連絡してね☆」

僕はそのとき気付かなかった。

僕たちを見る視線があることに・・・


***お昼***


朝から気になっていた。

ユナが手にもっている物に。

「ねぇ。その荷物なに?」

「あぁ、これね。テルキくんのお弁当だよ。」

と言って僕に手渡す。

僕はいつもパンを買って食べていたから、こんな嬉しいことはない。

「ありがとう!」

「屋上で食べよっか。」

2人は屋上に向かう。

―――――ガチャッ

「あっ、ユナ職員室に用があるんだった。先に食べてていいからね。」

と言って、階段を降りていった。

僕は屋上の綺麗なところを探した。

するとそこになつがいた。

「あっ。テルキ!何してるの?」

「あぁ、ユナが作ったお弁当を食べるところだよ。」

「そっか・・・。私ね、テルキくんいつも買ったパン食べてたでしょ?だからお腹空くと思ってパンケーキ作ったの。でも、ユナちゃんのお弁当あるからいらないね。」

「えっ!いるいる。食べたいよ。」

僕はなつがバックにしまおうとするのを止めた。