傷跡と関節の動きについて | クラニオセイクラルな日々-あたまをさわれば幸せになる

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大阪市淀川区西中島かなや整骨院院長のブログ

ココロに効く、カラダに効く、クラニオセクラル・セラピー

継続して拝見している「膝が痛い」患者さんの話。頭蓋仙骨療法やら骨盤調整やらでカラダを整えた後、最近気に入ってる「重心の位置を変えるテーピング」を貼付。歩くのがラク、と仰ったので自分で貼付してください、とやり方を教えた。

 

次に拝見した時、歩くのは楽なんだけれど膝が突っ張るという。実はこの方、半月板を手術した既往症がある。手術と言っても内視鏡手術なので傷跡というほどのものではない。蚊に食われたような跡が膝に数か所残っているだけ。それでね、その「蚊の食い跡」をサージカルテープで囲ってみた。ちょうど傷を中心にして「井」の字の形に。そうしたらね、膝の曲げ伸ばしがスムーズになった、と喜んでくださったの。

 

傷跡が関節の可動域を制限する、というのは昔から言われていることで、筋膜リリースのテキストにも傷跡をリリースする手技というのが記載されている。ちょうど胸ぐらをつかまれたようなもんで、皮膚の遊びがなくなると関節の可動域が減少するんだろうね。もちろん手術痕と組織の癒着みたいのもあるんだろうけれどね。

 

昔々、寝違えの患者さんを拝見した時のこと。痛みはなくなったんだけれど左右どっちかを向きにくい、という訴えが残った。骨を触診してみてもよくわからん。それで患部をよくよく観察してみると、うっすらと数センチくらいの小さな傷跡があった。伺ってみるとずっと以前に脂肪腫か何かを摘出したことがあるからその時の傷と違うかな、との話。

 

当時はね、スパイラルテーピングの全盛期だった。布製のテープを細く裂いて格子状に貼付するテーピング法。たいていの整骨院がこれを貼っていてオレも講習を受けに行ったことがある。残念なことにオレのアタマではちゃんと理解できなくていつの間にか臨床では使わなくなってしまった。

 

ただその時に習ったテーピング法でね、傷跡をやっぱり格子状に囲む術式があったの。寝違いの後、左右どちらかを向きにくいという訴えが残った患者さんの頸にあった小さな傷跡にそのやり方でテープを貼ってみた。そうしたらね、首の動きにくさがちゃんと改善したのよ。

 

スパイラルテーピングは使わなくなったけれど、たまに今回みたいに傷跡による可動域制限を解放するためにテーピングを施行することがある。使うのは普通のサージカルテープ、紙絆創膏。簡単だけれどよく効く。それから今回の膝関節のような小さな傷跡でも関節の可動域に関係することがわかってちょっと驚きではあった。

 

ただねえ、なんでもかんでも傷跡ではないのよ。以前拝見した患者さんは、肺癌の手術後肩が挙がらなくなって困っておられた。これはもうてっきり傷跡による関節可動域の制限だと思ったオレは自信満々傷跡にサージカルテープを貼付したんだけれど肩の痛みは変わらない。結局手術後のストレスによるカウザルギーだったことが判明。

 

テーピングは即効性がある。ということは逆に効果がなければ適応外ということ。効かないテーピングをオマジナイのように貼っておられる患者さんを拝見すると、かつての自分を見るようで赤面する。