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昔、花森安治という編集者がいた。暮らしの手帳という雑誌の初代(だったかな)編集長でね、記事に載せる料理のレシピなんかには特に注文が多くて、編集者は戦々恐々だったらしい。
編集の方針が曖昧さの排除だったらしく、「暮らしの手帳の料理のレシピは書いてある通りに調理するとちゃんとその通りできる」という評判だったらしいよ。つまりそのほかの雑誌のレシピは表現があいまいで再現性に乏しかったということね。
オレが今回クラニオセイクラルの書籍を書いた理由のひとつがね、「誰でもクラニオの恩恵を受けられる」だったのよ。編集者さんにも「世界で一番わかりやすいクラニオの書籍」というやり取りがあった。
クラニオセイクラルは繊細な手の感覚を必要とはするんだけれど、禁忌症だけきちんと理解していれば正確に手を当てることでかなりの効果を出すことができる。実際筋膜リリースのテキストにクラニオのテクニックがそのまま掲載されていたりということがあるのよ。
それは正当なクラニオではない、というのであればきっとそうなんだろう。でもオレはその「邪道(正統ではない、という意味合いで)」クラニオで二十数年以上にわたっていろんなクライアントの症状を改善してきた。きっとそれはオレが現役の間は継続されるだろうし、同じ考えのセラピストの引き継がれていってほしいと考えている。
自らを高名な編集者になぞらえるのは傲慢だけれど、「読んだとおりにすれば効果が出せる」クラニオセイクラルの書籍ができました。しんどい人と支える人とのお役に立ちますように。
頭をゆるめて心身の不調を除く【スゴい手技! 頭蓋仙骨(クラニオセイクラル)療法を使う】 | 金谷康弘 |本 | 通販 | Amazon
大阪マラソンで異様な選手の姿が話題になっている。顔から手足から(たぶん)全身に黒い丸いシールを貼っている。何じゃあれは?と思われた方も多いかもしれない。小泉八雲もびっくりよ。
チタンを特殊な方法で浸透させた「チタンテープ」というやつで一部のアスリートやセラピストに絶大な人気がある。以前寛平ちゃんが24時間テレビで走っていた時もあっちこっちにこれを貼っていたし、この間のオリンピック(どこでやったんだっけ?)でも柔道の選手がこめかみに貼っていた。
テーピングはもともと白色だったんだけれど、競技中に目立たないようにということで肌色のテープが売られるようになった。オレがセラピストになった90年代のちょっと前に固定ではなく筋肉の補助の目的で貼付する「キネシオテーピング」というのが爆発的に流行したんだけれど、これは肌色が基本だった。
チタンテープがいつごろから使われるようになったのか記憶していないけれど手持ちのチタンテーピングの書籍は1996年初版、とある。そのころはチタンテープは基本、肌色一色しかなかったと思う。ふつうのテーピングみたいな形状のものや、キネシオテープと同じように伸縮性を持たせたものもあるけれど基本は伸縮性を持たない円形のシールみたいのがチタンテープの代表選手だったの。
ちょうど同じころ箱根駅伝で山梨学院大学の選手たちが格子状の奇妙なテープを肩とか頸に貼っているのが目を引いた。これがのちにブームになるスパイラルテーピング。チタンテープと同じようにカラダのポイントに郵便切手くらいの大きさのテープを貼付することで筋肉のバランスが整う、という。
そんな小さなテープがどうして目を引くことになったかというと、山梨学院大の駅伝選手はアフリカからの留学生が多かったの。彼らの褐色の肌に貼付されたスパイラルテープはとんでもなく目立った。たしか山梨学院はその年優勝したはずで、スパイラルテープはたちまち優勝の立役者として有名になった。
その後数年間、柔道整復師の間でスパイラルテーピングは大流行よ。セミナーは常に満杯。それだけニーズがあったんだろうね。もちろん人気があった理由はテーピングそのものの効果の高さだったんだけれど、それだけじゃなく駅伝選手のインパクトが強かったのが流行の大きな理由なんだろうね。有名なアスリートが着ているウエアやシューズが人気なのと同じ理屈よね。
そうして歴史は繰り返されるのだろうか。全身に黒い丸いシールをペタペタ貼ったアスリートが活躍したのを見て、「自分も同じようなテーピングを貼りたい」と願う選手が出てくるんだろうか。きっとそのうち黒いチタンテープは販売されるだろう(純正品がなければゾロ品が出てくるのがセラピスト業界の常)し、貼り方のマニュアルが出版されたりもするんだろう。それらはちゃんと効果が上がるだろう。みんなが顔からカラダから黒い斑点をつけて一斉に走る。これからのマラソン大会の光景、ちょっと不気味かも。
オレがクラニオセイクラルを習った時にはあんまり詳しく学ばなかったんだけれど、クラニオには「エネルギー弾道テクニック」という技術が存在する。頭蓋骨の縫合に手を当てて制限(世間で言う骨のズレとか歪み)を調整したり変位のある脊椎骨に術者の示指と中指を当て、もう片方の手のひらをクライアントのアタマのてっぺんに当てておくと変位が矯正される、とかそういう手技。
それからただ痛みのある患部に手を当てておく、という手技もある。こうやって手を当てておくと患部に「脈」を感じる。ヒーリングパルスという名前がついている。それから患部に熱が生じ、最終的に解放されるという。やり方は簡単だけれど、ただ手を当てるだけのケアを実際に行うのは根性要るで、とクラニオセイクラルを発展させたアプレジャー医師は書いておられる。
オレが以前開業していたのは大阪市内の下町で、気さくで付き合いのいいオバちゃんクライアントがたくさんいた。何か新しいテクニックを習うたんびに「センセ、今度はどんなこと習ってきたんや?」と言って練習に付き合ってくださったの。ありがたいことよね。
もちろんエネルギー弾道テクニックもお付き合いいただいた。クライアントの膝に手を当ててそのままじっとしていると「えー、手充てとくだけ?なんや怪しいなあ」とかにぎやかなこと。ところがしばらくすると膝の硬くなっていた筋肉がプルプルと震え始め、患部が何やら熱感をもってきたじゃあありませんか。クライアントももちろんそれを実感していて「なんか熱くなってきた」と仰る。
プルプルが収まるのを待って手を離してみると確かに膝の痛みは軽減している。「へえ、えらいもんやな」とクライアントも感心してくださることしきり。
残念ながら書籍に書かれているようには効果は持続せず、エネルギー弾道テクニックはオレの臨床のルーティンにはならなかった。ただし「手を当てること」の価値は十分に理解することができた。
さて、ここまでお読みいただければ見当がつくように、この「エネルギー弾道テクニック」、レイキと似ていませんか。レイキのセッション中に手が当たっている個所に「熱」を感じることは多くの人が証言している。中には「電気か何かを当てているに違いない」とベッドの下をくまなく調べたという話もどこかで読んだことがある。あなたがレイキプラクティショナーであるのならヒーリングをしているときや受けているときにそういう経験をしたことがあるかもしれない。
ヒーリングパルスはどうだろうか?「ある日、パブでお酒を飲んでいたら、知人がかなり酔って高い椅子から落ち、床に倒れてしまいました。(中略)本人は酔っているせいか、あまり痛くないようなので、私は血をふき取り、ティッシュの上から、手をしばらく当てていました。傷口がズキンズキンと波打っているのを、手に感じました。十五分くらいたって、手を離してみると、血も止まっていたし、傷口もふさがっていました。」
「通りがかった道で十歳くらいの少年が、何人かの友達に囲まれて、足を押さえてうずくまっていました。聞くと(中略)かかとを捻挫したらしいのです。かかとのあたりからくるぶしまで、もうすでにかなりふくれていました。私の両手でしばらく、かかとの周りを覆うようにしていたところ、ピクピクと二、三回、骨が動いたような感じがありました。(中略)十五分ほどして手を離すと、少年は歩けるようになり、あまり痛みも感じなくなったといいました。」(台由紀子 驚異のレイキ療法 廣済堂)
あんまりレイキでヒーリングパルスに言及したものは見たことないけれど、ヒーラー本人が意識していないだけなのかもしれないね。レイキとクラニオと、他人の空似かなあ?



