学歴社会は今日も常識か?それとも既に崩壊した神話となったのか?その真相を検証する!
日本は学歴社会です。これは今日、誰もが信じる当たり前の常識論です。
だからこそ、学歴の大切さを重視する、親達はこぞって自らの子供により良い教育を望むのでしょう。
そうであるならな学歴によって雇用形態にもなんらかの影響を与えていると考えるのは自然な事で
一般には非正規雇用などの劣悪な雇用には学歴の低い人が多く
正規雇用などのより安定した雇用には学歴の高い人が就業していると言う意見が大勢を占めています。
何をいまさらわかりきった事をと思われてしまいそうですが
私はあえて労働力調査から確かな国家の統計を持ってこの常識論を検証してみたいと思います。
果たして雇用形態の良し悪しに対して、学歴神話はどう答えを返すのでしょうか?
①②は15歳以上の就業者を卒業者のみで学歴別に分けたものです。(①は比率、②は人数)
②の人数で見るとわかるとおり、15歳以上の卒業した就業者で
圧倒的に多いのは俗に低学歴と言われる小・中・高卒者です。
その数は3661万人と大卒・大学院卒業者の1465万人の2.5倍にもなります。
ですので、当たり前ですが数で言えば小・中・高卒者の正規雇用者数は1758万人
大卒・大学院卒業者の正規雇用者数は1028万人と低学歴の正規雇用者数が730万人ほど
数で上回っており、だいたいその差は1.71倍ぐらいです。
一方、非正規の数を比較すると小・中・高卒者では1032万人と
なんと大卒・大学院卒業者の非正規の数である203万人の5.08倍程あります。
小・中・高卒者と大卒・大学院卒業者の数での比較を見る限り
学歴の低い人に非正規雇用者が多いと言う一般論が広まるのは理解できる所です。
①の比率で比較してもやはり小・中・高卒者の正規雇用者率は48.02%なのに対して
大卒・大学院卒業者は70.17%と学歴が高い方が正規雇用者になっている比率は高く
非正規雇用者の比率を比較しても小・中・高卒者は28.81%、大卒・大学院卒業者は13.85%と
その差は2倍を超えています。
比率で見ても学歴が雇用形態の良し悪しに影響を与えているという一般論は正しいようです。
しかし、私はそんなありきたりで単純な一般論で満足できるほど素直ではありません。
ですから本ブログもここまで15歳以上の人口を一色単にした平面的で2次元的な答えに満足せず
性別や年齢層、婚姻状態などいろいろな角度と切り口から物事の本質を出来うる限り
立体的に見極めようとしています。ですから私は一般論のその先を見極めたいと思います。
③~⑥のグラフは①②のグラフを性別で分けた物です。
性別で分けてみると、馬鹿馬鹿しいほどはっきりわかる事が一つあります。
③と⑤をご覧になってください。男女で比較してパートの比率がはっきりと違う事がわかります。
①のグラフで小・中・高卒者の非正規の比率を引き上げていたのはこのパートです。
このパートについては前回の記事 で女性の婚姻者が主に従事する雇用形態 という事が
はっきりしています。
したがって①の小・中・高卒者のパート比率の高さは
直接的には学歴による物ではなく、むしろ女性の婚姻が直接的な影響を
与えてると考えるべきだと思います。
そこで、ここでもう一度①の非正規雇用者の比率からパートを除いて比較してみましょう。
すると小・中・高卒者では数では464万人と大卒・大学院卒業者は151万人と
やはり、小・中・高卒者と大卒・大学院卒業者の差は3.07倍と
小・中・高卒者のパートを除く非正規数は多いですし、全体の総数を思い起こしてみてください。
そもそも、小・中・高卒者の総数は大卒・大学院卒業者の2.5倍です。
したがって、この倍率はやはり高いのではないかと思われますが
そこで、比率で見てみると、パートを除く非正規の比率は小・中・高卒者で12.67%
大卒・大学院卒業者では10.3%となり、その差2.37%とほとんど学歴による差は生じていません。
さらに女性の婚姻による特殊要因を排除するため、③④の男性のみのグラフを見てください。
数でこそパートも含めた非正規の小・中・高卒者は314万人
大卒・大学院卒業者は93万人とその倍率は3.37倍となっていますが
パートも含めた非正規の小・中・高卒者の比率は14.79%、大卒・大学院卒業者では5.02%と
その差はほぼ10%ほどの9.77%となっています。
学歴による非正規雇用への影響は男性では小・中・高卒者と大卒・大学院卒業者では
わずか10%未満しか無い事実が浮き彫りになってきます。
たしかに学歴が無いと非正規雇用になる比率は高いようですが
学歴が非正規雇用にならないための決定的な免罪符にはなりえてない事がわかります。
小・中・高卒者だから非正規雇用、大卒・大学院卒業者だから正規雇用という
わけでは決して無いのです。
非正規に学歴の低い人が多いと感じるのは小・中・高卒者の総数が多いため
その数が単純に多くなるだけで、比率から見れば
男性では小・中・高卒だろうが大卒・大学院卒だろうが
非正規雇用となる可能性が十分あるという事になります。
しかし、これでは一般論とされている学歴社会が神話となり崩壊してしまいます。
あながち、学歴社会というのも全くの嘘ではないと私は思います。
それは③の男性の正規雇用の比率を見ればわかるとうり
小・中・高卒者の正規比率は59.71%、大卒・大学院卒業者は74.17%
役員の比率は小・中・高卒者は6.97%、大卒・大学院卒業者は10.31%と
大卒・大学院卒業者の方が企業組織のなかでより安定した地位を得られるようです。
ですが正規や役員になれなかった小・中・高卒者は
一方的に非正規に追いやられているわけではありません。
たしかに役員や正規になれなかった小・中・高卒者の9.97%は
非正規となるしかないようですが、自営業の比率を比較してみてください。
小・中・高卒者の自営業の比率は16.92%、大卒・大学院卒業者は6.55%と
自営業者は小・中・高卒者の比率が多いのです。
学歴社会の中で企業組織に地位を得られにくい小・中・高卒者は
非正規雇用になるだけではなく、独立自営の道を切り開いている事がわかります。
男性の場合は組織に頼って地位を得る生き方ならば学歴は武器になり大切ですが
そうでない独立思考的な生き方をするなら決して学歴は必要でない事がわかります。
今日の雇用環境が年々悪化する中、学歴をつけて組織の中で正規の地位を得ることが
決して安定した確実な生き方とは言い切れなくなっている事は前回の記事 から
若年層の正規雇用の未婚者が圧倒的に多いという 事実から、ある程度浮き彫りになっています。
むしろ、今の時代は小・中・高卒者であろうが組織に頼らないで独立自営したり、
大卒・大学院卒業者であれば組織を動かす役員になるといった人生の明確な方向性が
個々の男性には学歴よりも、もっとも大切で必要とされるのではないのでしょうか。
男性は学歴をつけて正規雇用になって家庭を持ち生活していくといった生き方は
もはや今は家庭を持つ事すら難しい、過去の遺物になってきているようです。
それでは学歴は今やあまり役に立たないのでしょうか?
今は学歴は男性にとっては生き方によっては重要でなくても
むしろ女性にとっては学歴はとても重要なのではないかという事が
⑤のグラフをご覧になるとわかります。
学歴による雇用環境の差は男性よりも女性の方が色濃く現れています。
女性の正規比率は小・中・高卒者で31.88%、大卒・大学院卒業者で57.43%と
その差は25.55%もあり、男性の14.46%の差よりも遙に高いのです。
では、小・中・高卒者で正規になれない女性は男性のように
独立自営の道を歩んでいるのでしょうか?
女性の自営業者の比率は小・中・高卒者で6.38%、大卒・大学院卒業者で4.86%と
あまり差はありません。
ところが女性の家族従業者やパートの比率を見てください。
女性の大卒・大学院卒業者の家族従業者が2.86%、パートが11.71%なのに対して
小・中・高卒者の女性の家族従業者は10.21%、パートは32.99%と言った
婚姻者が 主に従事している雇用形態 に就いていることがわかります。
つまり、女性は学歴が無いと社会で活躍する機会が男性よりも失われるだけでなく
家庭に入る生き方を選択するため、追い討ちをかけるように
さらに雇用形態の選択の余地が狭まってしまうと言う事のようです。
婚姻によって、よりよい配偶者である男性に恵まれるとはわからない
女性にとって学歴は安易に婚姻を選択しないための生活を支えるために
必要であり婚姻後も、家庭を支えるための生きていくための柱になりうる物だと言えます。
婚姻して主婦になればあとはサラリーマンの旦那に頼ればいいという
時代ではない今日、学歴は女性にとって
より良い婚姻を得るための単身生活を支える余裕として
婚姻後に家庭を支えるためのより良い雇用を得るために
重要な要素であると言う事が言えます。
この事は最後の⑦と⑧の婚姻者のみの女性のグラフを見てもわかります。
⑦⑧を見るとわかるとおり婚姻後も学歴は大きく女性の雇用環境に影響しています。
女性のパート比率は小・中・高卒者で38.51%、大卒・大学院卒業者で19.54%とその差は18.97%もあり
正規比率は小・中・高卒者で25.35%、大卒・大学院卒業者で45.98%とその差は20.63%と
小・中・高卒者と大卒・大学院卒業者ではパートの比率と正規の比率がちょうど裏返しになっています。
大卒・大学院卒業者は契約者や嘱託と言った非正規雇用でも専門的知識を有する非正規の比率が
小・中・高卒者に比較して2倍近くあるのに対して、小・中・高卒者では家族従業者の比率が14.26%と
大卒・大学院卒業者の家族従業者の4.60%よりも大きいのがわかります。
さて、今回はここまでにしておきたいと思います。
本ブログでは学歴社会の真相をさらに労働力調査から別の角度で検証していきたいと思います。
別の角度から見ればより詳細な真相が導き出せるかも知れません。
出典
総務省統計局 の 労働力調査、平成18年平均(詳細結果)
報告書非掲載表-第4表-年齢階級・教育,就業状態別15歳以上人口
超未婚化社会の正体は非正規雇用者の増加が原因なのか?超未婚化の正体に迫る
結婚や出産世代である25~34歳の年齢層の若年層の未婚率は
男性は5割を超え、女性は4割を超えるという
今日、男女ともほぼ二人に一人は婚姻していないと言う異常とも言って良いであろう状況にあります。
どこかの空気を読めない厚生労働大臣 が子供を生む機械として女性にがんばれと
エールを送って散々な目にあっていたのが記憶に新しいですが
基本的に婚姻関係が成立しなければ子供は生まれにくいものだと思います。
某大臣はまずはがんばって結婚して下さいと
男女を結婚するための機械に例えて発言した方がまだカッコがついたのかもしれません。
この某大臣 、最近は挙句の果てに景気回復を受けて雇用環境が改善しているなどと
ボケ老人のような世迷いごとを連発していますが
労働力調査を見る限り、雇用環境が改善しているようには私には到底思えません。
なんにせよ、理解しがたい人物が税金を高額な給与にして
国務大臣に居座っていると思うとその任命者である総理大臣とともにうんざりする毎日です。
ともかく超少子高齢化が声高に叫ばれる今日ですが、
そもそも超少子化と切っても切り離せないであろう未婚化社会については
とうの国務大臣すらケアしていないようなので、あまりスポットが当たらないような気がします。
今回も前回の記事 から引き続き、結婚、出産世代である25~34歳の世代を中心に
さらに婚姻と雇用(就業)形態がどのような関係にあるのか、詳しく探って行きたいと思います。
①と②は15歳以上就業者の男女を年齢層と雇用(就業)形態別に分けたグラフです。
①は比率で②は人数で見たものです。①はちょうど前回 のグラフ を年齢層別に分けた物になります。
①を見てみると15~24歳の世代の未婚率の高さは婚姻するには若すぎる世代なので除くとして
(15~24歳の世代の未婚率に100%と言う数値が存在しますが、これは統計ですのでご了承ください。)
やはり、結婚、出産適齢期世代である25~34歳の年齢層が
35歳以上の世代と比較して、どの雇用形態でも、大幅に高い傾向にある事がはっきりとわかります。
25~34歳の年齢層の未婚率を雇用(就業)形態別に大まかに分類すると
アルバイト(70.49%)・派遣(67.31%)・契約・嘱託(70.97%)、その他の非正規(60.71%)が高い未婚率
自営業(34.29%)、家族従業者(45.45%)、内職者(0.0%)、役員(40.91%)、パート(31.25%)が低い未婚率
正規は(55.35%)と両者の中間になっており
雇用(就業)形態別により婚姻状況に違いがある事が浮き彫りになっています。
ちなみに25~34歳の世代は②の人数の面から見ても25~34歳に継ぐ、
35~44歳の世代と比較しても全就業人口は約1400万人 とほぼ同じなのに
25~34歳の世代では未婚数が倍以上になっている事がわかります。
単純に歳がまだまだ若いから結婚してないだけという理由も考えられますが
それで、かたずけられる数値には到底、思えません。
年齢層別の婚姻状況は①と②のグラフで十分わかりますが
雇用形態別に見ると非正規雇用で不安定な職種であるはずのパートなどが
低い未婚率になっているなど、婚姻と雇用(就業)形態による関係が
イマイチ理解しにくい部分があります。
さらに雇用(就業)形態と婚姻の関係を探るためには
やはり、本ブログのいつものとうりの手順で性別で分けてみたほうがいいのかもしれません。
③④は①のグラフを⑤⑥は②のグラフをさらに男女別に切り分けた物です。
③から結婚適齢期である、25~34歳の年齢層の男性の未婚率を雇用(就業)形態別に見ると
パート(90%)、アルバイト(84.62%)・派遣(72.22%)・契約・嘱託(67.86%)、その他の非正規(66.67%)と言った
非正規雇用といわれる雇用形態全般と家族従業者(66.67%)が高い未婚率
自営業(30.77%)、内職者(0.0%)、役員(38.89%)が低い未婚率
正規は(49.85%)と両者の中間になっています。
男性の非正規は未婚率が家族従業者を除く、非正規以外の就業(雇用)形態よりも高く
前回の記事でも取り上げていた、男性の婚姻と職の安定度の関係がここでも裏付けられているようです。
④から結婚適齢期である、25~34歳の年齢層の女性の未婚率を雇用(就業)形態別に見ると
正規(66.67%)、アルバイト(60%)・派遣(64.71%)・契約・嘱託(73.53%)が高い未婚率
家族従業者(20%)、内職者(0.0%)、役員(25%)、パート(25.49%)が低い未婚率
自営業(44.44%),、その他の非正規(53.85%)が両者の中間になっています。
女性の場合は男性とは違い、雇用(就業)形態が婚姻に影響しているというよりも
婚姻が雇用(就業)形態に影響していると言う見かたが出来るのではないでしょうか。
女性は職の安定度に関わっている非正規または正規に関係なく
積極的に社会参加する事で未婚率が高くなり
婚姻する事でパートや家族従業者を選択するような傾向が読み取れます。
なるほど同世代(25~34歳)の男性の雇用(就業)形態別の未婚率と比較してみると
パートの男性は90%、女性は25.49%、家族従業者は男性は66.67%、女性は20%と
パートや家族従業者以外の雇用(就業)形態よりも、性別によって差異が激しく
①のパートや家族従業者の未婚率を女性の婚姻者が引き下げているのがわかります。
男性では未婚の雇用(就業)形態であるはずのパートや家族従業者は
女性にとっては逆に未婚率が低く、婚姻者が従事する雇用形態で
労働力調査におけるパートや家族従業者と言う就業(雇用)形態は
女性の婚姻者が主に就業している就業(雇用)形態であり
女性の婚姻状態が就業(雇用)形態の選択に影響を与えている事がわかります。
非正規雇用などの雇用形態の質の悪化が直接に婚姻に影響を与えるのは
主に男性の場合にだけ当てはまる話のようです。
ここで一つの疑問が浮かび上がります。
俗に言われている非正規雇用の増加等の雇用環境の悪化が未婚化社会の原因である。
正規雇用を増やせば婚姻者が増えるんだと言う主張です。
たしかに男性の未婚率が職の安定度と関連がある事を見る限りにおいて
男性の不安定な雇用環境が女性の自立を促して
女性の未婚化にも影響しているという見かたも出来なくはありません。
未婚化社会の正体は一体なんなのでしょうか?
非正規雇用などの不安定な雇用形態が増加し
正規が減少するからなどという、わかりやすい答えでは私は満足できません。
なぜなら⑤と⑥の人数で見ると結婚適齢期の男女でもっとも未婚者が多いのは
ほかならぬ正規雇用だからです。
たしかに比率で見れば男性の非正規雇用は未婚率が高く
男性の非正規化は婚姻相手となる女性に影響を及ぼすと言う主張
は少なからず間違いではないと思うにたる主張です。
しかし、では⑤と⑥の正規雇用の圧倒的な未婚者数は一体どう説明するのでしょうか?
どうみても数で見る限り未婚化社会の主役は正規雇用です。
③と④を見る限り、非正規を正規に変えても、それほど未婚率が下がるわけではありません。
少数派の非正規雇用者を正規雇用にする事がそれほど
未婚社会に対する効果的な結果を生み出すとは正直思えないのです。
非正規雇用が増加し、非正規雇用者は婚姻しにくいと言うのも
男性に限っては間違いではありませんが
未婚化社会の正体はその数から正規雇用が婚姻しない社会だと言う事です。
私にわかるのは今回の記事から、今や正規雇用だからといって
安心して婚姻できる社会にはなっていないと言う事だけです。
出典
総務省統計局 の 労働力調査、平成18年平均(詳細結果)
特別集計-第1表-年齢階級・教育・配偶関係,就業状態別15歳以上人口
※空気を読めない厚生労働大臣 -自民党 柳澤伯夫(71歳) 衆議院議員
超少子化社会の到来!!その影に隠された若年層未婚社会と雇用環境悪化の関係は!?
出生率が低迷し、これから超少子高齢化社会が訪れると言われています。
その超少子化の一因と言われているのが若年層の婚姻率の低下です。
本当にそうなのか詳しい因果関係まではわかりませんが
少なくとも婚姻は子供が生まれ育つための一つの前提条件であろうかと思います。
(まあ、必ずしもそうとは言えません。未婚の母なんてのもありますから。)
総務省統計局の労働力調査を見ていると
配偶関係として、15歳以上人口の婚姻関係について調査した内容が目に付きます。
若年層の子育て世代に非正規雇用者などが増加する事によって
若年層の雇用の質の悪化から未婚化が進んでいるなどの話も誠しやかに囁かれています。
婚姻関係が働く事に対してどのような関係を持ち、影響を与えているかはとても興味深く
非正規雇用の問題を扱っている本ブログにおいても注目しなければならないと思います。
今回は最新の平成18年平均の労働力調査から
15歳以上人口の婚姻状態を調べてみたいと思います。
(でも、労働力調査では限界があります。あらかじめご了承ください。)
①~②のグラフは15歳以上の男女の婚姻状況の比率を年齢別及び性別に分けたグラフ
③~④のグラフは15歳以上の男女の婚姻状況を人数で年齢別及び性別に分けたグラフです。
①~②を見ていてやはり目立つのは結婚適齢期の出産、子育て世代に当たる25歳~34歳の年齢層です。
未婚率が男女とも35歳~の世代と比べると突出して高くなっています。
(15歳~24歳の世代は婚姻状態をどうこう言うのは若すぎるのでここでは除外します。)
25~34歳の男性は56.08%、 女性は43.25%と
35~44歳の世代と比べると男性は2倍、女性は3倍の未婚率です。
率直な感想として単純に若いからまだ独身を楽しんでるのだとか、そういうもっともらしい理由で
かたずけられる比率ではないように思われます。
私も以前メディアなどを通して、若年層の5割は未婚と言う話を聞いた事はありました。
(たしか労働政策研究所かどこかの調査内容を基にした話だったと思います)
少々オーバーな話だなと聞き流していましたが、改めて労働力調査から婚姻状況を調べてみると
結婚適齢期の世代で5割は未婚といってもオーバーな話でもなんでもない事がわかります。
特に結婚適齢期の男性は5割を超えていますし、子供を出産する側の女性も4割超は未婚と
少子化の裏には若年層の未婚化が進んでいる事がはっきりとわかります。
ちなみに②のグラフで65歳以上で女性の離別・死別者が多いのは
寿命が女性の方が長いため女性の高齢者世代は男性婚姻者との
死別者が多いのではないかと思われますが詳しい事は労働力調査ではさすがにわかりません。
⑤~⑥のグラフは就業者の男女の婚姻状況の比率を年齢別及び性別に分けたグラフ
⑦~⑧のグラフは就業者の男女の婚姻状況を人数で年齢別及び性別に分けたグラフです。
※就業者=15歳以上人口-(完全失業者+非労働力人口)
①~④のグラフは15歳以上人口と大まか過ぎるのでさらに対象を細かくして
就業者の婚姻状況を見てみたいと思います。
対象を就業者に絞ってみると新たな特徴が浮かび上がります。
結婚適齢期である24~34歳の世代で女性の未婚率が男性を上回っています。
働く女性は未婚である比率が高いと言う事でしょう。
②の15歳以上人口では24~34歳の世代の女性の未婚率は43.25%でしたが
⑥の就業者では57.43%と14.18%もの差が広がっています。
15歳以上人口の適齢期の女性全体の未婚比率を引き下げている非未婚女性は
就業者以外に含まれている事がわかります。
一つの結果論からいえばの適齢期の就業女性が若年層の未婚化の一因であるように見えてしまい
働く女性はけしからん見たいな、そんなご意見が出てきそうですが、
そんな単純な話でもないようにも思えます。
以前調査した内容 から多くの婚姻女性が家事・育児に追われて働きたくても働けない
非労働力人口として存在すると言う結果はわかっています。
そもそも働く女性に原因があるのか、働いてる女性は結婚しにくい社会なのか
いろいろな見方があると私は思います。
この辺の婚姻の因果関係について非常に複雑です。
ただ女性は職を得ると家事や育児を考えると働きにくい社会なのではと
漠然と考えてはいます。女性の職の安定度は結果的に家事、育児の障害をクリアしないかぎり
婚姻になんらかの大きな影響を及ぼす要素ではないかと考えられます。
(仕事だけでなく家事・育児に熱心な男性を教育で養成するとかが現実的なのかもしれません。)
⑨~⑩のグラフは完全失業者の男女の婚姻状況の比率を年齢別及び性別に分けたグラフ
⑪~⑫のグラフは完全失業者の男女の婚姻状況を人数で年齢別及び性別に分けたグラフです。
※完全失業者=15歳以上人口-(就業者+非労働力人口)
⑤~⑧では就業者の婚姻状況でしたがそれだけでは不満なので
さらに今度は完全失業者の婚姻状況がどうなっているのかも見てみて見る事にします。
⑨~⑩を見るとわかりますが完全失業者では男女とも結婚、出産適齢期だけでなく
世代全般に未婚率が就業者と同じか、超えているのがわかります。
(※未婚完全失業者の比率が0%の65歳以上の世代は除く)
完全失業者は基本的に職探しをしていて、積極的に就業者になろうとしている人達です。
そこには職がないと生活に困るなどの逼迫した理由があるのでしょう。
失業という不安定な状況がいっそう未婚に拍車をかけていると言う見方は否定は出来ません。
失業男性の25~34歳の84.44%、35~44歳の65.38%、45~54歳の40.00%、55~64歳の14.2%と
就業男性の25~34歳の52.87%、35~44歳の22.55%、45~54歳の11.62%、55~64歳の5.42%が未婚
失業女性の25~34歳の58.06%、35~44歳の28.57%、45~54歳の18.75%、55~64歳の7.14%と
就業女性の25~34歳の57.42%、35~44歳の18.00%、45~54歳の6..54%、55~64歳の4.46%が未婚と
失業者と就業者の未婚比率を男女で比較して見ると男性の方が
失業者の未婚率が高くなる傾向があるのがはっきりとわかります。
特に結婚適齢期の25~34歳それに継ぐ世代の35~44歳男女の失業者では
男性の失業者が圧倒的に未婚率が高い事がわかります。
男性は女性に比較して職が安定していないと未婚率が高くなる傾向があるようです。
それは裏を返すと女性の職の不安定は婚姻への影響が男性よりも低いという事なのでしょう。
わかりやすく言えば同じ失業者でも女性は職が不安定であれば婚姻して
職の安定している男性の扶養家族となる人生の選択も、男性よりし易いという事ではないでしょうか。
(逆のケースが男性に無いとはいいません。女性はそういう選択をよりしやすいという結果論です。)
どちらにしても就業する事で女性を扶養するためにも
男性にとって婚姻するためには職の安定は大切な要素のようです。
⑬~⑭のグラフは非労働力人口の男女の婚姻状況の比率を年齢別及び性別に分けたグラフ
⑮~⑯のグラフは非労働力人口の男女の婚姻状況を人数で年齢別及び性別に分けたグラフです。
※非労働力人口=15歳以上人口-(就業者+完全失業者)
最後に残された非労働力人口が男女の婚姻状況に対してどのような影響を与えているのでしょうか?
これまでの就業者や完全失業者の婚姻状況だけでなく
やはりここにメスを入れないと全体は把握しにくい所です。
⑬~⑭を見てください。これまでの就業者や完全失業者にはない男女で全く違う婚姻状況が
非労働力人口にははっきりと現れています。
(※15~24歳は在学者世代、55歳以上は引退世代なので除きます。)
非労働力人口の男性の未婚率は25~34歳で92.31%、35~44歳で79.17%、45~54歳で67.86%ですが
非労働力人口の女性の未婚率は25~34歳で12.32%、35~44歳で06.09%、45~54歳で05.33%と
25~54歳の非労働力人口の女性は基本的に婚姻者であり、
男性は未婚者であるという結果が恐ろしいほどはっきりとわかります。
特に若年層の結婚適齢期世代である25~34歳は非労働力人口になると9割は未婚です。
人口数にして39万人の大半である36万人が未婚になっている事がわかります。
非労働力人口の婚姻状況を見ることにより男性の婚姻に職の安定性が大きく関わっている事は
女性との違いを見ればもはや間違いないであろう事がわかります。
ちなみに55歳以上の男性で急激に婚姻者が増加するのは⑮を見る限り
非労働力人口にかつては就業者でもあり婚姻者でもあった引退者が加わっているため
比率が大きく変るためであろうと思われます。
未婚者の人口数の絶対数は19万人と他の世代とあまり変りません。
どうやら若年層の未婚の問題は性別でその事情が異なり
男性は職の安定性が得られない社会の存在が婚姻の前に立ちはだかり
女性が働きつづけながら婚姻しようとする場合、子育てや育児が働く事を阻みかねないリスクがあり
働く事をあきらめて職を失い家事・育児に専念する覚悟でないと婚姻できない
なんとも硬直した社会の存在が漠然と見えてきます。
⑰は本ブログの主題でもある非正規雇用を含む雇用形態で分けた未婚率です。
注意して頂きたいのはこれは全て既卒者の統計数値だと言うことです。
全ての年代で在学者は含まれていません。
⑰を男性と女性別に見ると男性ではやはり正規の未婚率は28.81%と低く
アルバイトは56.60%、派遣は54.17%と非正規では未婚率が5割超と
高くなっているのがわかります。
職の安定性と男性の婚姻にはなんらかの因果関係がある事はここでも如実に現れています。
女性は正規であっても43.41%とアルバイトの46.96%や派遣の48.68%との
未婚率が高い非正規と比較してもそれほど変らず
雇用形態はそれほどまでに婚姻に影響しておらず
パートの未婚率が9.38%と考えると女性は非正規だからと言って
未婚率が高いといえない傾向があり
女性の場合、婚姻と職の不安定さとは因果関係が薄い事がわかります。
むしろ、安定しているはずの正規の女性の未婚率が比較的高いのも
正規雇用など社会的地位や責任を得て積極的に社会参加する事で
女性から婚姻と言う道を奪う硬直した社会の存在が見えてきます。
ともかく⑰のグラフは大まか過ぎてせめて年齢層別に分かれているデータが欲しいところです。
それは今後の調査で機会がありましたら、さらに雇用形態と年齢層別の婚姻状況を取り上げ
若年層の未婚の問題と非正規雇用などの雇用環境の悪化関係を探って記事にしていきたいと
考えています。
出典
総務省統計局 の 労働力調査、平成18年平均(詳細結果)
報告書非掲載表-第1表-就業状態,配偶関係・世帯の種類・教育別15歳以上人口