彼は民に言った。
「あなた方は王家の血筋を引く者であるから、王様が戻って来るように言っておられます。そうすれば王家の家族として迎えられます。今従っている親方とは手を切って、王様の元へ帰りなさい」(親方 = 悪魔)
「そこでは今迄とは比較にならない程の財産や栄誉があるのだから」
民の内の甲が言った。
「私達をからかわないで呉れ。この世界にお城の殿様より偉い人がいるなんて誰が信じる者か」
そして甲は去って行った。(科学万能主義 )
又、民の内の乙が言った。
「王様のおられることは聞いたことがある。しかし私達が王家の血筋であることが、どうして判るのか? 証拠 をだしてくれ」こうして乙もまた去って行った。(進化論)
次に民の内の丙が言った。
「この人は見すぼらしくて、とても王子には見えない。殿様のほうが遥かに立派ではないか」 (常識論)
そこで王子は考えた。
「そうだ大臣達に命じてお城の殿様にも出来ない事をこの民に見せてやろう。そうすれば私が王子である事を信じるようになるであろう」