
Bookデータベースより紹介
川田幸代29歳は社史編纂室勤務。姿が見えない幽霊部長、遅刻常習犯の本間課長、ダイナマイトボディの後輩みっこちゃん、「ヤリチン先輩」矢田がそのメンバー。ゆるゆるの職場でそれなりに働き、幸代は仲間と趣味(同人誌製作・販売)に没頭するはずだった。しかし、彼らは社の秘密に気づいてしまった。仕事が風雲急を告げる一方、友情も恋愛も五里霧中に。決断の時が迫る。 *******引用終わり
オタク魂溢れる三浦しをんならではの登場人物とストーリー。場所も三浦しをんらしくニッチな社史編纂室という設定も、いかにも、らしい。
緩やかな連載コラムでも読んでるような導入で、何やら三浦しをんワールドの中でもあまりオタクっぽくなると嫌だなと思いながら読んでいくうちに、ミステリーのよう謎が謎を呼ぶという展開。しかも、彼女たちが高度経済成長の穴と呼ぶ日本の商社の世界戦略を面白おかしく謎解きしていく。実際はともかく、物語として表の社史、裏社史と区分しながら、また同時に幸代の同人グループの活動や幸代のオタク小説が同時進行する。裏経済史ともいえるが、実は女性の文筆家たちが各所で活躍するものがたりでもあり、三浦しをんさんが「書く」ということに格別な想いを持っていることもわかるお話だ。
年齢や育った環境からオタクっぽい筋のところは、ともかくそれぞれの登場人物が一見ちゃらんぽらんなのだが、それなりに真面目で最後はみんなで成し遂げていく達成感を味わうという、大人のための青春小説のような爽やかな読後感を残すあたりは
本当に三浦しをんは凄いとしか言いようがない。