久しぶりに再開したエース全話マラソン。前の記事もぜひ参考にしてください。
ざっくり感想「ウルトラマンエース」第1話~第10話 | 怪獣玩具に魅せられて
ざっくり感想「ウルトラマンエース」第10話~第20話 | 怪獣玩具に魅せられて
『ウルトラマンエース』第21話~第30話 ざっくり感想
【第21話】
「幻の天女を見た!」(天女超獣アプラサール登場)
竜隊長フィーチャー回? いつもは北斗が信じてくれない側に立つのに、今回はまさかの隊長が、その立場となる。いきなり隊長のお目覚めシーンから始まって、秘密のはずの(絶対に秘密にならないであろう)隊長の自宅に不思議な美女? が訪ねてくるところから始まる。お手伝いさんとして雇ってくれなんて、いきなり言われたら誰だって門前払いするだろうに、次に行った優男でちょいキモなシンイチ青年はあっさり家にあげてウハウハ状態。一方、そんな彼女を門前払いしたTACには良い印象を持っておらず、周囲で異常が起こっているのにTACを追い返してしまう。そうしたら言わんこっちゃない。その正体はおとめ座爆発の際にヤプールに救出された宇宙人で、操られて超獣になってしまう。そこから先は夜の街を舞台にTACとの激闘が始まる。宇宙線で構成されているため武器が通じないが、竜隊長が特攻した時は体内に取り込んだりと、よく分からないところがある。それでいて、けっこう強い。最後にはエースの活躍で元の姿に戻してもらい、二人して宇宙に帰っていく。最後、失恋に打ちひしがれるシンイチ君に対して、「真夏の夜の夢だったんだ」と諭す竜隊長。確かに全体的に不思議な余韻のある話で、後年タロウでより強まる寓話感の強い作品だった。
【第22話】
「復讐鬼ヤプール」(凶悪超獣ブラックサタン・銀星人宇宙仮面登場)
たま~にある、美川隊員に言いよって来る男に良い奴はいない話。今回は命を救われた(むしろ、死からよみがえらせてくれた)優しそうな男が、まさかの宇宙仮面でした! っていう、まあそうだろうね! っていう展開になっている。隕石から現れた宇宙仮面。いきなりTAC基地に潜入するなど、とにかくアクティブで、警備員の倒し方が、相手の身体から火花を迸らせるっていうやり方で、これがね、けっこう新鮮。ああ、この表現は血潮が飛び散るような派手さがありながらグロさはなく、良いじゃん、と。この宇宙仮面が山中隊員が事故ったせいで死んでしまった美川隊員を蘇生させ、信頼を得て、TACの中に潜り込もうとするも、北斗の慧眼によって怪しまれることになる。グッジョブ北斗。対して今回の山中隊員は酷い。事故るし、美川隊員放置だし、病室での謝罪も超軽。お前、冒頭で北斗に説教たれてただろうがと。ただ今回、北斗は「信じてください!」パターンにはならずに、美川隊員以外の隊員も割と早く青年を疑う展開になっていて、そこにはストレスはなかったかな。エースとの戦いは、規模のデカい市街地で展開し、これが見どころたっぷり。ブラックサタンは、超獣の中ではいぶし銀な一体でカッコいい上、宇宙仮面からエネルギーが送られ続ける限り何度でも復活したり、多彩な武器を搭載していたりで、相当強い。途中、エースに家をかぶせて攻撃する一場面があって、終盤の逆転ではエースに石油タンクをぶつけられた上にタイマーボルトで炎上させられ、メタリウム光線でオーバーキル!! やりすぎやろ(笑)。豪快な戦闘が光る、中盤の名作の一本だけれど、最後燃えカスになった宇宙仮面を放置して引き上げるのは、さすがに突っ込んだ。
【第23話】
「逆転! ゾフィ只今参上」(異次元超人巨大ヤプール登場)
ここまでTACとエースを苦しめてきたヤプールと、取り敢えずの決着がつく一話。ハーメルンの笛吹き男よろしく、世界中の子どもたちを、変な替え歌で誘って誘拐する汚い老人。海の向こうに消えゆこうとする子供たちを追いかける北斗のシーンは、賽の河原を意識したような暗くて物寂しいテイストで、子どもの頃に観たら間違いなくトラウマレベル。エースのホラー演出は、じとっとした、いかにも和風な恐怖表現で、けっこう記憶に残るんですよね。次の話とかでも超怖い。今回は、ちゃんと北斗が「信じてください!」型孤立に陥る展開になっていて、それを夕子がケアするのが良いよね。夕子の存在が間違いなく本作の癒しになっていて、「右にまいりまーす」とか「近道なんでーす」とか、可愛い。たまらん。メビウスの輪の原理を使って異次元に潜り込む北斗。タイトル通りゾフィに連れていてもらう夕子。それは良いんだけど、ゾフィ、夕子をお届けしたら、あっさり帰っちゃって、ああ……って感じ。異次元を舞台にしたヤプールとの戦いは、今見るとけっこう黒い床とかが目に見えてきちゃうんだけど、当時の想像力と表現力でやりきったところは評価したい。終盤、エースと睨み合って、西部劇よろしく光線の打ち合いと弾き合いはめっちゃカッコよかった。ヤプールは本作と次作とで一端、滅びるんだけど、その後も超獣の登場展開は続くわけで、段々とシリーズの中でも整合性が付かなくなってゆく。この段階で中ボス的にヤプールを倒すって、やっぱり迷走していたのは否めないのかな。単独作品として観たら、面白いのだけれど。
【第24話】
「見よ! 真夜中の大変身」(異次元人マザロン人・地獄超獣マザリュース登場)
この話は凄い。何が凄いって、とにかくテンポが良く、次から次へと場面が切り交わる。真ん中のアイキャッチで、えーっ! まだ半分だったのって吃驚するくらい。それでいて間延び間や冗長さはなく、がっつり魅入ってしまった。ヤプールが倒された前話を受けて、爆散したヤプールの破片がもたらず禍を描いていて、冒頭から赤い雨が降り、母は超獣を生み、富士山が噴火する。途中の、夜中に母が超獣(=我が子)と対面する場面は、音楽の効果もあって不思議な祝祭感があり、何だったら日本昭和版の『ヘレディタリー』と言っても良い。さらには少年が夢の中で、異形の顔となった母親に追いかけられるって……トラウマレベルは突出している。超獣マザリュースは凄く不細工な顔に、赤子の鳴き声という、そしてそんな超獣を前に踊り狂う、鬼女と化した母親。それを呆然と見つめる少年……。大人の時分で見ても、「うわあぁぁ……」ってなる。そんでもってこの話の岸田森さんのナレーションが静かで、怖さに拍車をかけるんですよね。すごい話だなって、今見返しても思う。そしてもう一つ何が凄いって、ここまででまだ中盤少し過ぎ。本当の激突は噴火した富士山火口と富士山麓でのマザロン人との戦い。ここにも十分な時間が取られていて、見ごたえがある。エース全体を概観した時に、あんまり語られることのないエピソードではあるけれど、話運びとショットの繋ぎのうまさ、見せ場の多さなど、映像作品としてのクオリティが凄まじい、実は「隠れた傑作」の一本だと思う。
【第25話】
「ピラミッドは超獣の巣だ!」(古代超獣スフィンクス・古代超人オリオン星人登場)
北斗と夕子それぞれの見方、考え方の相違が光る回。地底から出現したピラミッドと謎の赤いガス、その現場の近くにいた少女ミチルをめぐって、二人の意見が珍しく食い違う。ミチルを怪しむ夕子と、ミチルをかばう北斗。おかしいわよ! って主張する夕子が、指をしゅびっ! と振ってるところが可愛い。意見の食い違いから夕子が単独でミチルを追い、それがピンチに繋がるという話展開が上手い。ただ、このミチルさんが、(申し訳ないけど)美少女と言われている割にはそんなでもないし、有害なガスをバスの中にまき散らすなど、迂闊過ぎるところが多くて、さすがにいらいらした。ここまでの数話、超獣や超人など敵側に魅力と個性あるやつが多くて、今回はそこは少々薄味だったかなと。じゃあ本作の見どころは何だろうと考えると、やっぱり広大な市街地での戦闘が楽しい。この頃のエースって、視聴率的にはけっこうヤバかったと思うんだけど、それでもここまでのスケール感でミニチュア組めるってのが凄いし、戦闘シーンは見ごたえがあった。建物の狭間「ナメ」の画とか、やっぱり楽しいよね。今回は久しぶりのエースブレード登場。ドラゴリーと言い今回のスフィンクスと言い、エース兄さんはドスを持つと首を狙いがちよね。スフィンクスに圧倒されそうになった時に、ミチルの笛で大人しくなるとか、それがオリオン星人の怒りを買って処刑されるとか、どこかで見たような展開ではあったかな。最後は、スフィンクスはタイマーショットで大爆発、ピラミッドはメタリウム光線で爆散と、今回もオーバーキルが際立つ。話的にはパッとしないけど、豪快さと度重なる爆発とが楽しめる怪獣アクションを楽しむなら、おススメの一本です。
【第26話】
「全滅! ウルトラ5兄弟」(地獄星人ヒッポリト星人登場)
序盤からいきなり登場するヒッポリト星人。超獣や怪獣が登場するための前振りとかはなくて、いきなり登場!! この潔さは、これまでヤプールをはじめとする侵略者から狙われまくっていたエースの世界だからこそかも知れない。前後編のうちの前編の分量としては過度といってもいいくらいのボリュームで、星人による破壊×2、エースとの死闘、ウルトラ5兄弟全滅! までを一本でやり切る。本当に、この時期のエースのテンポの良さときたら。その分、少しストーリーが置いてきぼり感を帯びていて、伏線だけ貼って後編に持ち越し! みたいな感じ。市街地に現れた星人が攻撃を受け付けないところで、お決まりの北斗だけ真相にたどり着いていてTACがそれを信じない状態。それが後手に回ることになってしまい、明らかな失策。結局エースだけが分かっていて、岩場での戦闘となる。久しぶりに市街地戦ではなかったわけだが、周りに一切の配慮の必要がなく、暴れたいだけ暴れられる環境の中、エースのアクションの切れがいつになく良くて、見ごたえがあった。たまには、こういう環境でのエースの力押しアクションも楽しい。善戦するかと思いきや、ヒッポリトカプセルによって固められ、即座にウルトラ兄弟登場。早い(笑)。そして呆気なく罠にはまるわけだが、セブンだけ星人と闘っていたのは、やっぱり人気ウルトラマンだからか。そのセブンですら見せ場を与えられた後は、あっさりとやられてしまい、ナレーションなどもないまま、全滅したウルトラ兄弟の哀しい姿を見せて終わる。今度はエース含めて全滅! ということで、リアタイで観たら、えっ!? やばくない!? 度は強かったかも。次なる救世主を見せない予告編もニクい。
【第27話】
「奇跡! ウルトラの父」(地獄星人ヒッポリト星人登場)
ウルトラ5兄弟やられた後、降伏してしまえとTACに詰め寄る人々と星人に対して、あくまでも守り抜くと断言する竜隊長。TACの父であるのみならず、地球を代表する「父」としての覚悟と雄姿が、5兄弟の「父」たるウルトラの父と重なって見える。特に我が身を犠牲にして、大切なものを守ろうとするところがストーリー上の重複になっているところは、よくある構造ながら上手いな、と。前編では心揺らいでいたTACだけれど、ウルトラ5兄弟の全滅を前にして、むしろ以前よりも結束が固くなったように見える。前編の汚名返上! ということで、皮肉ながらも久しぶりにプロの防衛チームとしての姿が見られて良かったところ。ただ、大事な大事な決定打を打つのに足場を確認しないとか、星人のミサイルから逃れる時に無駄に「天国と地獄」がかかるとか、決戦前のシリアスな展開に対して、どうにも詰めが甘い。TAC絶体絶命の折、ウルトラの父の登場による形成逆転、かと思いきやすぐにピンチ。からの怒りのエース無双! は、テンポが良すぎて置いて行かれそうになるけど、カラータイマーが赤であるにもかかわらず、主題歌に合わせて猛攻を繰り広げるエースの姿は中々にカッコよかった。ここまでで星人が強い描写をしっかりやていたからこそ、ピンチBGMに切り替わらずに星人爆殺! なのも爽快で良いし、パンチレーザーを牽制に使うなど、戦い方も上手い。少年の父、TACの父、ウルトラの父――この三人を通じて、父親とはどうあるべきかを問う話となっており、特に竜隊長と同じ気根が現代の我々にはあるのかと考えさせられる話でもあった。
【第28話】
「さようなら夕子よ、月の妹よ」(満月超獣ルナチクス登場)
ついにこの時が来てしまったか……。色々な新機軸を盛り込んだ結果、迷走がちだったウルトラマンエースにおいて、最大の失敗がこの回における南夕子途中降板問題。視聴率に苦戦、ごっこ遊びに不向き、主人公が二人いるとドラマが散漫的になるなどなど、色々な事情はあったろうけど、何の伏線もなしに「南夕子は月星人でした!」で退場させるのは、いくら何でも酷すぎる。演じていた星光子さんも、脚本を読んで初めて知ったってくらい唐突なことだったらしいし、当然ながらすごくわだかまりが残った様子。この回の夕子の演技もかなりエモーショナルなところがあり、星さんの無念さや気の高ぶりが感じられた。話自体は、本当に南夕子のお別れ会のために作られたような話で、ルナチクスとTACの前哨戦は驚くほどあっさり終わり、エースとの死闘にかなりの尺が取られる。薄野での最後のウルトラタッチには、不覚にも涙が……。超獣ルナチクスは、月の兎をイメージして作られたにしては中々カッコいい一体で、無駄に目がミサイルになっているところなども良い。地底と地上、二か所で交戦するが決着は思ったよりも呆気なく、そこから夕子の真相と別れまでが静々と語られることになる。これまで絶妙な間柄で数々の苦難を共にしてきた二人。時には、恋仲なのか? と思わせるような素振りとかもあり、一つのドラマとして発展しそうだった時もあったけれど、特に何もなく終わってしまったのは本当に残念。夕子が降板したことで、結果的に話は作りやすくなったようだけれど、最後の最後まで夕子と共に戦う、あるいは月星人でも良いから、そしてエースになるのは北斗一人でも良いから、最後までバディとして傍にいる世界線でのウルトラマンエースも見たいと、製作から50年が過ぎた今でも思ってしまう。
【第29話】
「ウルトラ6番目の弟」(地底超人アングラモン・地底超獣ギタギタンガ登場)
夕子が降板したことでテコ入れが入ったか? 新キャラ梅津ダン君の初登場回。これまではやんちゃ坊主のように描かれることの多かった北斗が、夕子との別れで一皮むけたのか、子どもを諭すお兄ちゃんのような顔を見せていて微笑ましい。このキャラが翌年、さらに理想化された形で東光太郎となるのかも。超獣ギタギタンガは、名前と肩の筍が変だけれど、それ以外は意外とカッコいいビジュアルで、隠れた(隠さんでも良いんだけど)お気に入り超獣の一体。一方、アングラモンはぺらっぺら。ギロン人に似てるのは、地底人に共通するビジュアルってことなのかしら。暴れまくるギタギタンガが、TACの迎撃を受けると、こりゃヤバいと自分も巨大化。ギタギタンガをかばう。これまでになく超獣に過保護(笑)。もんのすごく久しぶりに、巨大星人と巨大超獣を相手に2対1の戦い。ただ今回は何度も言う通り、アングラモンがぺっらぺらだから、そんなに危機感がない……。新しい登場人物である梅津ダンは、可もなく不可もなくといったところからスタートし、新マンの次郎君ほどの積み重ねを経る前に43話でしれっといなくなってしまう。この辺も路線変更が上手くいかなかった一例に数えられる。この話自体は、そこまで悪い話じゃないし、特撮は相変わらず気合入っているけど、やっぱり前回での夕子の降板が痛い……。しれっと美川隊員が、北斗の横ポジにいるけどさ、そこは夕子の席だから! と言いたくなる。あと、これはどうでもいいんだけど、エースに攻撃されて炎上するアングラモンが、すごく良い声で「プーさん!」と叫んでいるようにしか聞こえないんだが、あれ、本当は何て言いたかったんでしょうね。
【第30話】
「君にも見えるウルトラの星」(黒雲超獣レッドジャック登場)
超獣被害で封鎖されてしまった地区。そこに走る一台の救急車。咄嗟の判断が死線を分けることになる。難しいテーマを冒頭に扱っているが、二回目のあれはさすだにダメだろ……。自転車ならほとぼりが過ぎてから取りに戻れば良いし、そこに管理者がいないことで起こる惨事は、当然ながら想定すべきこと。山中隊員の叱責も今回ばかりは仕方ないけど、激しく糾弾するのではなく責任を諭す竜隊長は、TACの良心的存在だと改めて思わせられる。ヒッポリト星人以降、竜隊長の株がけっこう上がっております。一歩、ダン少年はダン少年で、慢心からウルトラの星が見えなくなる。偶然にも、前の新マンで郷秀樹が陥った慢心からのトラブルに、郷秀樹の俳優(団時朗)と同じダン少年が陥るというのは、面白い符号ですね。超獣レッドジャックは超カッコいい。ソフビが欲しいけど、本家のは高いし、改造しようにも中々に複雑な造形でできる気がしない。市街地のセットはかなり広範囲に渡っていて、黒雲に乗じて現れるレッドジャック、中々画になるし、忍者みたいでこれまたカッコいい。エースとの戦闘では、技としてはその渋さから人気のあるフラッシュハンドで牽制し、メタリウム光線で爆殺! ルナチクス以降、お気に入りの超獣が出てくるので嬉しい。ストーリー的には、北斗の失策とダン少年の慢心、そこからそれぞれの立ち直りが軸になっているけど、どちらか一つでも良かったかなと。特に北斗の失策は、彼がウルトラマンになる=本来の持ち場を離れることで起こり得るかも知れない悲劇、というところにまで昇華していたら、ウルトラマンの設定的構造をメタ的に読み直す、それはそれで面白い一本ができたかもしれない。