ざっくり感想「帰ってきたウルトラマン」第21話~第30話 | 怪獣玩具に魅せられて

怪獣玩具に魅せられて

ゴジラ・ガメラ・ウルトラマン、その他たくさんの特撮怪獣玩具を紹介します。

 

『帰ってきたウルトラマン』第21話~第30話 ざっくり感想 

 

【第21話】

「怪獣チャンネル」(電波怪獣ビーコン登場)

 加藤隊長最後の戦い回。事件の発端を一家庭のテレビから始め、それが東京中を巻き込む大パニックに発展するなど、導入からのスケール拡大が面白い回。電波を吸収し、自分の視覚を電波として発信するために、付近のテレビにビーコンの視覚が映るというのもすごく面白いアイデア。どうせだったら、戦っている時に、このビーコン目線の画を入れてくれれば、より必然性のある設定になったかも。テレビが急におかしくなり、旅客機が爆発、墜落する場面を"見せられる"展開は、何か良くないものを覗き見している感覚があって、ちょっと怖いものを感じされてくれる。ビーコンを誘き出すために東京中の電波を遮断したはずが……と言う展開から、東京の住宅街を舞台にした死闘が最高で、夕日に沈む街を上下に幅広く使っての格闘戦が見事。ビーコンのデザインも秀逸。可愛い顔してかなり強いし、電離層に生息していて電波が好きという以外、特に分からない、その不気味さが良い。ラスト、冒頭の家族をもう一度登場させることでのお口直し。ここでのナレーションがウィットに富んでいながらも爽やかな後味を残している。

 

 

 

【第22話】

「この怪獣は俺が殺る」(プラスチック怪獣ゴキネズラ登場)

 加藤隊長がとうとう退場ーー。なんだかんだ

問題の多かった初期MATを束ねる父として、隊員たちを導いてきた隊長の降板は寂しい限り。隊長の尽力の甲斐あって、今のMATは相当なプロフェッショナルになっていると思うであります。そして堂々登場の伊吹新隊長!! これを、引っ張る引っ張る(笑)。隊長がいない間、隊員たちで事態の収集にあたり、なぜだか独断で出動した豪がいらんことをして謹慎を喰らう。加藤隊長がいなくなって即これかよ……。新隊長は大丈夫なのか? と不安になってくるとこら、ウルトラマンと怪獣の最後の戦いで新隊長登場!! これが、初登場補正で強い強い。ウルトラマンはトドメを刺しただけで、怪獣を倒すまでのお膳立てはほとんどこの新隊長1人でやってしまったようなもの。相当な手練れ感をこの1話の、後半5分くらいで印象づけてしまった。この演出と話はこびの確かさが見事。新隊長と隊員たちとの無意味な衝突を描かず、終盤からの活躍と描写によって、その実力と人柄まで、全てを語り尽くしてしまう。20話以降、よりお話的に魅力のある回が増えてくるけど、その嚆矢のような快作。

 

 

【第23話】

「暗黒怪獣星を吐け!」(暗黒怪獣バキューモン・カニ座ザニカ登場)

 トンデモないスケールの話で、このバキューモンがラスボスでも何でもなく、中盤に登場した一怪獣であるってのが凄い。物語は途中までザニカの対処に追われるMATを描き、それと並行して次第に迫り来る地球規模の大ピンチを仄めかせる。これによって、無定型デザインのバキューモンと、実体ならザニカと、両方のタイプの怪獣と戦うシーンが見られるというお得な話。さすがにバキューモン相手には人間の手でできることなど何もなかろうから、MATを活躍させるためのザニカとの戦闘なのだろう。伊吹隊長の、MAT日本支部としての本格戦闘はこれが初めてだし。加藤隊長とはまた違った、自ら前線で活躍する感じの戦闘スタイルがカッコいい。ウルトラマンに変身してからは、事務的(笑)にザニカとの戦闘を処理した後、いよいよ暗黒怪獣との戦闘へ。ここまで巨大、かつ未定型の怪獣を、視覚的に出してしまう作り手の気概に感動。決着の付け方は呆気なかったけど、あのスケールレベルになると納得できる決着は中々難しいと思う。星がどんどんなくなっていき、暗黒怪獣が近づいている=地球の終わりが迫るというところになって、研究者の人が真実を語ることを拒むくだりは、『シン・ウルトラマン』を彷彿とさせた。いや、どっちかって言うと、シンウルの方がこれを意識していたのか。

 

 

【第24話】

「戦慄! マンション怪獣誕生」(宇宙小怪獣クプクプ・マンション怪獣キングストロン登場)

 ウルトラマン「恐怖の宇宙線」を思い出させる回。一方、少年の抑圧された思いが怪獣に仮託されている感じは、同じ新マンのエレドータス回を思い出させる。少年は怪獣に思い入れるんだけど、そんな少年の心など怪獣にはまるで通じない、と中々厳しく子供達を突き放す展開まで、よく似ていた。マンションの一室の壁から実体化=マンションをぶっ壊しての登場となり、瓦礫が降り注ぐ廊下のショットなど、特撮部分に光るところが多い。エレベーターを真上から撮ったショットも秀逸で、俳優のアクションと特撮とが切れ目を感じさせなく繋がっている。キングストロングは久しぶりの四つ足怪獣で、これがまたカッコいい。曲がった金色の角も含めて、この後に登場するブラックキングなどの凶暴怪獣に影響を与えているデザイン。冒頭、少年の寂しい境遇が描かれていたんだから、最後それが解消されるなり少年が成長するなりの展開があっても良さそうなものなのに、その辺はボヤッとしている。この点、エレドータス回の方が一枚上手だったかな。

 

 

 

【第25話】

「ふるさと、地球を去る」(隕石怪獣ザゴラス登場)

 ザゴラスのぬぼっとしたデザインに騙されちゃいけません。20番台ストーリーの中でも最も秀逸かつ考えさせられるのが、この25話。まず、設定がめちゃくちゃ面白い。有史以前に地球に激突した隕石の上に立った村、その隕石に付着していた微生物が、放射線の影響で怪獣化など、今までにないアイデアで楽しませてくれる。これぞ空想科学シリーズ。序盤のビルからコンクリートが空に浮かぶシーンは、たぶん上下反転して撮っているんだろうけど中々の迫力だし、終盤、ついに村を乗せた隕石が空に飛び上がるシーンの、「あーっ!!」感は見物。けど何てったって本作最大の注目ポイントは、南隊員と「じゃみっ子」少年の出会い、そして成長。これが単純に、怪獣を攻撃したことが自信に繋がるーーっていうだけだったらよくある、スポ根的な成長物語になるけど、この話がすごいのは、ラスト、成長したはずの少年の闇を逃げずに描いたところ。勇敢になるということは、どういうことなのか。彼は本当に強くなったのか。勇気を持って立ち向かうということの中に内在している危うさが最後に問われる。その瞬間の、「えっ……」と戸惑う気持ち。完全なハッピーエンドに終わらない一抹の渋みが、この第25話を特別な一話に押し上げている。

 

 

 

【第26話】

「怪奇! 殺人甲虫事件」(昆虫怪獣ノコギリン登場)

 豪の日常パートとして、坂田家は欠かせない要素の一つ。プライベートがほとんど描かれなかったハヤタやダンと違い(ダンはアンヌとのデートは結構してたけど)、レギュラーキャラクターとして豪の物語に関わる人たちがいるってのは、やっぱり良い。今回の物語も、坂田家という身近な市井から始まる。通り魔的宇宙昆虫。モーター音が敵の羽音に聞こえるなど、細かい設定が光る。坂田家→MATへの移行も自然で、伊吹隊長の指揮下に任務を遂行する隊員たちのキリッとした感も、防衛チームとして洗練されたものを感じた。ノコギリンとの戦いは嬉しや嬉しや東京のど真ん中。ウルトラマンが避けたことで東京タワーも真っ二つに裂ける(笑)。やっぱり市街地戦の戦いは楽しいし、家が立ち並ぶ地面から、のっそり顔を出すノコギリン、日常に潜む異物感があって大変よろしい。最後は坂田家に戻って、爽やかな後味。どんどんこの家族が好きになっていく。

 

 

 

【第27話】

「この一発で地獄へ行け!」(八つ切り怪獣グロンケン登場)

 キックの鬼沢村忠客演回にして、郷秀樹の爽やかなスポーツマン気質が分かる回。ひょんなことから知り合ったキックボクサーとの交流を通じて、彼の人柄がより近しく感じられるようになっている。もう一人の主人公、東三郎のドラマも中々秀逸で、まさかの想い人がアキだとは。でもそこで仲がこじれるわけじゃなく、互いの健闘を称え合う関係で最後までいくのが良い。一方、長野県の観音寺に登場する怪獣グロンケンは中々に怖くて、巨大仏像をぶった切るなど、これまでにない怪獣被害の描写が面白い。ここんところ市街地での戦闘が続いて楽しいし、MATによる怪獣攻撃のシーンも、ウルトラマンと怪獣との戦いも、相応のボリューム。特に、ボクシングの試合とウルトラマンと怪獣との戦闘をリンクさせる演出では、いつものBGMではなく試合中の声援をバックにウルトラマン=郷と東三郎が同じような攻撃スタイルで挑む展開があり、これが中々に白熱する。ウルトラマンは戦いに勝ち、東三郎は最後の戦いに敗れ――寂しげな余韻を残しての別れ。最後の最後まで、二人の友情が光る演出にグッと来てしまった。

 

 

 

【第28話】

「ウルトラ特攻大作戦」(台風怪獣バリケーン登場)

 実相寺昭雄監督作品は、どれも軽快なテンポとコミカルなキャラクターが本当に楽しい。今回登場するのは大自然の猛威を象徴するような怪獣バリケーン。怪獣の立ち位置や設定にも、一つ何かしらのテイストがあるのも実相寺監督らしいところ。今回は岸田隊員との関係が好感的に描かれていて、岸田隊員から嘗ての嫌な奴味が抜けている。深謀遠慮に長けた伊吹隊長のリーダーシップが光り、その中で割かしのびのびと、しかしプロフェッショナルな面も見せるMATチームの安定感。ここまで成長したかと感慨深い。バリケーンがものすっごくあからさまに姿を現しているのには笑ったけど、竜巻の描写は中々に凄まじいものがあって、今回はそこに猛雨が加わって、けっこうトンデモないことになる。シーゴラスの回と言い、本当に風の使い方が上手いな。自然の象徴ということで、下手に攻撃しただけでも大惨事につながりかねない危険性を帯びていて、その危うさが本作最大の味わい。いくつもの能力を使いこなすバリケーン、中々に強い。スペシウムエネルギーを吸収し、さらに巨大な竜巻を発生させる上、陸に空にとにかく縦横無尽。それだけに最後の呆気なさには笑えた。あと、ミサイル発射のシーン何かの流用シーンだけど、昼夜は合わせて欲しかったですね。バリケーンが退治されて、東京の空は結局また汚くなった――ってのも、皮肉が効いていて良いラストだった。

 

 

 

【第29話】

「次郎くん怪獣に乗る」(ヤドかり怪獣ヤドカリン登場)

 これは完全に次郎君と郷秀樹が悪い回。人のものを勝手に持ち帰っちゃいけません。特に郷さん、人の箱を宇宙空間にまで持って行ってどうする。いつになく緩い感じの郷に、伊吹隊長の叱責。何となく最初の方の、ちょっと調子に乗っていた郷が帰ってきた感じで、いまいち全体を通したキャラクターになっていない気が。前回から存在感を強くしてきた岸田森さん演じる坂田兄の熱演が光る。特に今回は、次郎や郷の様子を見て微笑んだり、次郎の帰りが遅いのを心配して方々を探したり、最後、郷と箱の取り合いっこをするなど、色んな坂田兄の姿が見られるお得回。ヤドカリン自体は、あんまりカッコいいと思えない怪獣で、宇宙ステーションを宿の代わりにした宇宙怪獣ってのが、けっこう面白い設定ではあったかな。けど、それが本編と上手く絡んでこないし、もっとSFに振り切った宇宙怪獣来襲モノでも良かった。しかしそうなると、坂田兄弟の出番が少なくなるし……難しいところですね。

 

 

 

【第30話】

「呪いの骨神オクスター」(水牛怪獣オクスター登場)

 アニミズム的っていうか、民俗学的というか、森羅万象の化身としての怪獣オクスター。神社裏手の水牛の墓場とか、禁忌を犯した者への容赦ない罰とか、全体的なじめっとした感じとか、和風怪奇テイストが見物。今回は久しぶりに山間の湖での戦いで、マットアローとオクスターの攻防は中々の迫力。オクスターの唾液(汚い)で溶けるマットアローやマットジャイロなど、「牛」の性質が怪獣の武器になるなど設定の面白さもあれば、オクスターそのもののデザインもユニークだし、角度や引き画によってはカッコよくも見えたりした。鳥山石燕が『画図百鬼夜行』に描いた牛鬼のようにも見える。やっぱり和風怪奇テイストが強い怪獣なんだなと。ウルトラマンとの戦いは湖上、水中と続いて、最後には一時的に湖の水を全て抜いて湖底での決闘となる。しかもそこでウルトラマン喋る。今回は、禁忌を犯した人間側にも非があり、かつては守り神として信仰されていたかもしれぬオクスターが孤独に湖底に沈んで終わるなど、じめっとした余韻を残して終わる。前回の、怪獣に次郎君が乗ってギェピーっていう子ども世界最前線の直後にこれってのが、新マンらしいところ。この後、「天使と悪魔の間に……」や「許されざるいのち」「怪獣使いと少年」が連なる、大人の味わい回として忘れがたい印象を残す。