ざっくり感想「ウルトラセブン」第1話~第10話 | 怪獣玩具に魅せられて

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さてさて、次はウルトラセブンについてのざっくり感想です。

ウルトラマンとは違った世界観が魅力のセブン。今は、ウルトラマンに勝るとも劣らぬ人気を誇り、「大人の鑑賞・考察にも耐えうる」作品として知られていますが、当時はだいぶ苦戦したようですね。「ウルトラセブン」をめぐる葛藤については、『ウルトラセブンの帰還』に詳しいです。

 

 

今回は第1話~第10話。全ての始まりから、初期の傑作まで、ざっくり感想を書いていきます。

 

 



  『ウルトラセブン』第1話~第10話まで ざっくり感想

【第1話】

「姿なき挑戦者」(宇宙狩人クール星人・カプセル怪獣ウインダム登場)

 シリーズの開始にして、新たなる世界観の提示ともなる1作目。製作は5番目らしいけど、役者やスタッフがある程度慣れたところで1話目という「すべての始まり」となるべき重要作を製作するのは、よくある手法のようだ。「ウルトラマン」との差別化ということで、セブンでは主人公モロボシ・ダンがウルトラ警備隊に入隊するドラマを1作目に持ってきている。このスタンスは今後、「帰マン」「エース」「タロウ」「レオ」など、ほとんどの昭和トラマンと平成トラマンに受け継がれていく。より本格的かつ規模の大きくなった極東基地。働いている人数も多い。様々な装置を搭載した専用車両ポインターや、ウルトラホークの描写。ホーク1号に至っては、早くも分離シーンを披露している。円盤とカプセル怪獣ウインダムの戦い。クール星人の操演、セブンの特殊能力や人間大での戦闘など、いろいろな「新しさ」に満ちた作品。京浜工業地帯の破壊シーンなど、大規模な爆発も多く、1作目としてファンを釘付けにするに十分な力作。

 

 

【第2話】

「緑の恐怖」(生物Xワイアール星人登場)

 1作目が大規模な破壊攻撃ならば、今回は人間社会に潜り込もうとする話。人を襲って次々と植物姿に変えていくところなど、『ウルトラQ』のような怪奇テイストが色濃く、第2話にしてホラーテイストが強い話になっている。ワイアール星人はまさに植物宇宙人という感じで、グリーンモンスやケロニアとは違った、より直接的な「植物」感。アイスラッガーでぶっつり真っ二つにされるところとかの「重み」が良い。第1話に比べても展開的に地味で、そもそも宇宙ステーションV3から帰還した石黒隊員にわざわざ擬態する意味がよく呑み込めない。展開には難が多いが俳優の演技が好印象で、特に茶目っ気たっぷりな奥さんは、イラっと来ないあざとさが良かった。

 

 

【第3話】

「湖のひみつ」(宇宙怪獣エレキング・変身宇宙人ピット星人・カプセル怪獣ミクラス)

 初期の傑作その1! とにかくエレキングのデザインと造形が完璧。地球産の怪獣とは明らかに異なることを示す頭部の回転する角や、すらっとした長身痩躯など、セブンの怪獣の中でもトップクラスに個性的かつ魅力的な怪獣に仕上がっている。撮影の順番としては、この作品が最初で、特撮パートの熱量が凄い。特にウルトラホークとエレキングの戦いは、ややカメラを引き気味に、両者たっぷりと間合いを置いた戦闘が繰り広げられ見ごたえばっちり。さらにカプセル怪獣ミクラスを登場させての、怪獣バトルも展開される。ウルトラアイを奪われる、基地内部への潜入工作など、その後何度もなぞられる展開も、製作最初のこの第3話に端を発するものが多い。この時期はまだ勢いがあったのか、エレキングの登場シーンが意外と長く、VSウルトラ警備隊、VSミクラス、VSセブンと、次々戦いの相手が変わるのも、豪華かつ非常に楽しい。セブンを代表するエピソードとして、今後も長く観返されるであろう作品の一つ。

 

 

【第4話】

「マックス号応答せよ」(反重力宇宙人ゴドラ星人登場)

 人間大のセブンの活躍が目立つ回。ウルトラマンはダダ戦以外は人間大で戦うことはなかったけれど、セブンは積極的に人間大での戦闘を展開する。特に今回は、原子炉での戦闘→巨大化して対決→マックス号からの脱出と、舞台や体の大きさがダイナミックに変わる戦いを楽しむことができる。中盤まではゆったりと緊張感を高めていき、セブンが登場してからは一気に畳みかける。巨大宇宙人との戦闘をクライマックスとはせず、もはやゴドラ星人の手に落ちてしまったマックス号からの脱出をクライマックスに持ってくるなど、物語の展開にも工夫が見られる上、ゴドラ星人という魅力的な宇宙人が、7人も登場してくれる(着ぐるみは1体だけ)のが嬉しいのだけれど、ウルトラアイを奪われる展開は「湖のひみつ」と同じだし、関係者に姿を変えるのは「緑の恐怖」で、基地に潜入するのは「湖のひみつ」と同じ。何となく既視感が強くて、新鮮味に欠けるのが勿体ないところ。

 

 

【第5話】

「消された時間」(宇宙蝦人間ビラ星人登場)

 クール星人に続く操演宇宙人のビラ星人。虫みたいな姿でありながら、非常に知力が高い。こういうところがセブンのSFっぽくて好きなところ。終盤、どこかのお寺? 神社? を舞台にしたセブンとの戦闘は、まず舞台の景観が素晴らしく、いかにもな「和」を感じさせる場所で、明らかな異形の宇宙人とセブンとがぶつかり合う、このアンビバレント感が凄い味わいを出している。ただ、話の展開がまさかの一つ前の第4話と同じ……。敢えてフォローするなら、ダンに疑いを向ける展開にスポットを当てることで、実はウルトラセブンが立たされている危うい立場を浮き彫りにしているわけで、それが後々、人間の所業に疑問を持つ「超兵器R1号」や「ノンマルトの使者」、「ウルトラ警備隊西へ」でのペダン星人との対峙に繋がっていくわけで、そういう意味ではこの「ビラ星人による擬態」の意義は大きかった。

 

 

【第6話】

「ダーク・ゾーン」(放浪宇宙人ペガッサ星人登場)

 初期の傑作その2! ウルトラセブンの世界観を一段と広げた力作。セブンにおいて、侵略目的でなく訪れる宇宙人の始まりであり、「地球」と「宇宙」の関係について今一度深く考えさせられる内容。ペガッサはペガッサで、止むにやまれぬ事情により地球を破壊せざるを得ず、また地球も、最後までペガッサに退避&移住を呼びかけつつも、自らの生存のためにペガッサシティを爆破せざるを得なくなる。双方にそれをしなければならない義があり、どちらが正しかったのか、最後まで答えを見つけることができないストーリー。だからこそ素晴らしい。セブンとは戦闘らしい戦闘もせず、セブンは爆弾処理のためだけに登場するようなものだが、「敵との戦い」をドラマのウリに持ってこない辺りも、大人な雰囲気を感じる理由の一つになっている。

 

 

【第7話】

「宇宙囚人303」(火炎宇宙人キュラソ星人)

 こちらも一風変わった形で、セブンの「宇宙世界」を広げた作品。まず、遠く宇宙の果てからやって来ておきながら、極めて個人的な物語展開になっていて、これまでは惑星の代表的な感じでやって来た宇宙人が、今回は約一名の逃亡者に過ぎず、キュラソ星から全宇宙に対して殺害依頼が送られているなど、どこか『スター・ウォーズ』的な宇宙の広がりを感じさせる。これまでの知略を駆使した潜入活動ではなく、通り魔的にその場その場で殺害を繰り返すキュラソ星人はけっこう怖く、特にある家族の家に籠城するシーンはハラハラした。今回もセブンはまったく戦わず、別の目的のために登場する。ラストはキュラソ星との間に友好関係が結ばれたらしく、こういうところにもセブンの宇宙的な広がりを感じる。

 

 

【第8話】

「狙われた街」(幻覚宇宙人メトロン星人登場)

 出ました大傑作!! 初期どころかセブン全話を通じて、圧倒的な傑作。ウルトラマンで手掛けた好編とはまた違ったテイストの実相寺作品で冒頭の容赦ない「暴力」に度肝を抜かれる。アンヌのおじさんが犠牲になったり、通り魔的な事件が次々と勃発したりと、メトロン星人の企みは、本人の穏やかな物腰とは裏腹に危険で恐ろしい。中盤までは北川町ばかりに犯罪が集中する理由をめぐるミステリー仕立てで、メトロン星人が登場するのは、あまりにも有名なちゃぶ台のシーンから。セブンも登場してこないので、序盤~中盤にかけては子どもたちにはきつい時間かも知れない。が、メトロン星人が登場してからは特撮的にも一気に盛り上がる。夕日下の工業地帯を舞台とした戦闘はウルトラシリーズ屈指の美しさ。人間の美点である「信頼関係」を狙うメロトン星人の狡猾さを印象付けつつ、さらにその「信頼関係」は現時点では理想に過ぎないという、もう一段階のツイスト。このラストの切れ味がこの作品を永遠の名作に位置付けている。

 

 

【第9話】

「アンドロイド0指令」(頭脳宇宙人チブル星人登場)

 これも結構好きな回。大規模なセットが無理なら、「おもちゃ」ってことにして、模型による弾幕攻撃をやらせようというアイデアがユニーク。前回の8話が人間の美点に目を付けた戦略なら、今回は人間のウィークポイントである「子ども」を利用した、これまた狡猾な作戦。さすがチブル、陰湿で頭がいい。後半になるにつれて闇が濃い雰囲気に変わっていき、「午前0時の時報とともにアンドロイド0指令が発令されます」という無機質なアナウンスがすっごい怖い。チブル星人のデザインもアーティスティックで良い。セブンが最後まで人間サイズという珍しい回でもある。

 

 

【第10話】

「怪しい隣人」(異次元宇宙人イカルス星人登場)

 これはビデオを昔持っていて、何度か繰り返し観た。そしえ子供の頃は、あんまり意味が分からなんだなあ。全体的な雰囲気が不気味で、底抜けに明るいテイストのウルトラマンの方が、やっぱ面白いよなあと思った記憶がある。が、改めて見直すと、まずイカルス星人のデザインがユニーク。異次元という圧倒的に有利な場所からの侵攻。第1話につぐスケールの侵略作戦になるか!? と思いきや、最後は1対1の戦闘で終わってしまったのが勿体ない。ラストのナレーションは、身近に宇宙人が潜んでいるかもしれない警鐘? をうたっており、『ウルトラQ』の「宇宙指令M774」に通じるものがある。