『ウルトラセブン』第11話~第20話まで ざっくり感想
【第11話】
「魔の山へ飛べ」(宇宙野人ワイルド星人・宇宙竜ナース登場)
まさかのダンが敵にやられてしまうという、セブン最大のピンチ!? さすがのセブンも、今回はウルトラ警備隊、とりわけアマギ隊員の存在がなければ、かなりヤバかったんじゃなかろうか。肉体が老衰して滅びかかっているため、地球人の若い肉体を奪いにくるというワイルド星人の設定は、ウルトラQの傑作「2020年の挑戦」に近いものがあるけれど、「2020年」のケムール人が夜の闇のような底知れぬ存在だったのに対して、こっちのワイルド星人は最期までどこか哀れさが漂う。宇宙竜ナースはデザイン、造形的にはすごく面白い怪獣だったから、操演にもう少し工夫がなかったものか。めちゃめちゃ難しいとは思うけど。老衰が進んで滅びゆき、他所のところの資源を奪いに来るって……今後の地球全体が進んでいきそうな方向で、笑うに笑えない。
【第12話】
「遊星より愛をこめて」(吸血宇宙人スペル星人登場)
封印作品でDVDやBlu-rayにも収録はなし。以前、youtubeの雑な画質で観た覚えがある。セブン全49話の中で唯一、フジアキコ隊員(ではないけれど)が登場する回で、しかも実相寺昭雄監督作品。封印さえされなければシリーズの中でもある程度の位置づけを以て語られそうな回なだけに、封印されているのは勿体ない。実はストーリー的に「被爆」の要素はほとんどなく、焦点が当てられているのは宇宙人と地球人の信頼と友好への挑戦。スペル星人はある作戦のため、今までにないくらい一人の女性と関係を近しくしている。今回は裏切られたけれども、地球人と宇宙人の信頼・友好関係が構築されるのはそう遠くないはず――ということを唯一の証拠であるダン自身が一人胸に呟くラストも素晴らしい。実際、封印されているからと言って万金はたいて観るほどの傑作とは思わないが、初期の味わい深い一作ではある。
【第13話】
「V3から来た男」(宇宙鳥人アイロス星人登場)
セブンの必殺技、ワイドショット発お披露目の回。また、宇宙ステーションV3のクラタ隊員が初登場する回でもある。このクラタ隊員と、キリヤマ隊長の関係が物語を大筋を進めていく牽引力で、これが良い! 今までになく爽やかに男臭い(笑)。キリヤマとクラタ、クラタとソガ、ソガとダン、そしてクラタとマナベ参謀――それぞれの隊員たちのやり取りの中から、組織的な規律を超えた信頼があるのが分かる。アイロス星人はエメリウム光線を受け止め、アイスラッガーを跳ね返すなど、初期の強敵で、やはり鳥型の敵は強い。遂にワイドショットを撃たざるをえなくなるセブン。両者が対峙する構図は西部劇的な緊迫があって良かった。ラスト、V3に戻るクラタ隊員に対して無線で話しかけるシーンにはグッと来る。ウルトラセブンが子どもたちだけでなく、(というかむしろ)大人も引き込んでのドラマを展開しているというのは、こういうところからも分かる。
【第14話】
「ウルトラ警備隊西へ 前編」(宇宙ロボットキングジョー登場)
セブン初の前後編。舞台は関西神戸へ。各国から秘密裏に入国した地球防衛化学班の重鎮たちの暗殺。事件のカギを握る外人美女と、その後を付け回す怪しい外人の男。一気に世界色が強くなったというか、007ぽくなりました。今回は前編と言うことで、そこまで大きな盛り上がりは見せないけれど、特筆すべきはやはり原子力潜水艦アーサー号をキングジョーが分離状態で破壊するシーンか。初めは妙な機械の寄せ集めみたいな状態で見せて、終盤、防衛センターに出現した際に一つのロボットに合体する。この盛り上げ方が見事。今は先に「キングジョー」のビジュアルを知った上での本編視聴になるだろうけど、当時、何の予備知識もなく本編を観て、「合体」のシーンにいきあたった時の少年少女の驚きを思うと、うらやましくもある。
【第15話】
「ウルトラ警備隊西へ 後編」(宇宙ロボットキングジョー・策略宇宙人ペダン星人登場)
後編は豪華! 防衛センターでの戦闘の続きから、神戸港での宇宙人同士の約束、そして港を舞台にした死闘。神戸港のセットは奥行きがあり、船も浮かんでいて、凄まじい「現実感」。これはウルトラマン「怪獣殿下」の大阪城とはまた違った空間的な現実感で、色合いもすっごく奇麗。ペダン星人とダンが対峙する夕暮れのシーンも見事で、そこでのペダン星人の言い分も至極最も。しかし、その言い分を蔑ろにして侵略に舵取りしてしまうのが残念なところで、結局ダンの実直な心が踏みにじられた結果になってしまっている。キングジョーはとにかく強く、セブンのありとあらゆる攻撃が通用しない。切り札となる兵器の開発には、誘拐されていたドロシー・アンダーソンの記憶を戻さねばならない……と、セブンの戦いと並行して展開する時間的スリラーも見事。セブン屈指のバトルアクションに乾杯!
【第16話】
「闇に光る目」(岩石宇宙人アンノン登場)
目立たないけど面白い宇宙人、アンノンが登場する回。本体は青白く光る目の形の脳だけの生命体で、岩石に寄生することで怪獣化するって特性は、今までのセブンの宇宙人には中々なかった新しさ。今回はシリーズで初めて子どもが主役に置かれる話で、しかも主人公のヒロシ君を演じるのが、「怪獣殿下」のオサム君! これにはビックリ。最初はみんなから馬鹿にされ、その後で周りに溶け込んでいく役回りも大体同じ。強靭な身体と高度な知能を持つアンノンが、いじめられてばっかりの弱虫少年の手を借りざるを得ない展開も面白い。その子ども相手に、すーっごく下出かつ丁寧に脅しをかけるアンノンのキャラクターが好き。最後はセブンの説得によって地球を離れることになるけれど、これは前作「ウルトラ警備隊西へ 後編」でダンが望んだ展開でもあり、このラストによってアンノンも特別なキャラクター性を持つはずが、前作で同じような展開を持ってきているため、印象が薄れてしまっている。話の順番が残念。
【第17話】
「地底GO! GO! GO!」(地底ロボットユートム登場)
モロボシ・ダンのオリジンに迫る回。ハヤタのようにウルトラマンと一体化したわけではなく、ウルトラセブンが薩摩次郎をモデルにして人間体に変身している。つまり、これまでもこれからもモロボシ・ダン=ウルトラセブンという関係性にあることを改めて定義づけた、実はそれなりに重要な作品。モロボシ・ダンがお手本にした薩摩次郎も健在で、彼は彼で自分の人生を歩んでおり、ここでダンと次郎の人生が一度絡み合うことになる。といっても、次郎とダンが対峙するシーンはなく、次郎は誰に助けられたか知らぬ間に終わるので、ちょっと勿体ないところも。ユートムが警護する地底都市についての説明はなく、最後のナレーションでは、もしかしたら今の地球の先住の地底人かも知れない、なんて不穏なほのめかしまでしているが、「ノンマルトの使者」ほど、そこへの言及がなく、あっさりしている感は否めない。
【第18話】
「空間X脱出」(音波怪人ベル星人・宇宙蜘蛛グモンガ)
「怪しい隣人」のように日常にひそむ異空間を描いた作品の一つだけど、今回の場合その異空間が主要な舞台であり、そこからの脱出が主軸となっているところに独自性がある。パラシュート訓練の最中に不思議な森に迷い込んだアマギとソガ。二人それぞれの得意を活かしながら脱出の糸口を見つける――とかなら良かったけど、そういうわけでもなく、あっさりと救援が来てしまうので少々物足りない。それに四次元空間だったり異空間だったりは「無限へのパスポート」という最強の正解が出てしまっているので、こっちの異空間は鬱蒼とした森とグモンガくらいが見せ場という、ちょっと寂しい出来なのは否定できないところ。
【第19話】
「プロジェクト・ブルー」(宇宙帝王バド星人登場)
出た、「宇宙の帝王(笑)」。ケツ頭の不細工帝王バド星人。やることも狡くて、メリケンサックでセブンの頭をカチカチして(セブンの頭が金属質なのはよく分かった)、唯一アイスラッガーや光線技を撃たれることなくボッコボコにやられるという、口だけは達者だがとかく良いところのない宇宙人。やることも「消された時間」のビラ星人の方が、ずっとスマートだったな。ということで今回の敵役については魅力皆無だが、冒頭のフルハシ隊員をからかうキリヤマ隊長とか、この頃からウルトラ警備隊に急に親近感がわく描写が増えてきた。特に、これまでは軍人的な感じで厳しさを前面に押し出してきたキリヤマ隊長の軽口は、ウルトラ警備隊の風通しの良さがうかがえて素敵でした。
【第20話】
「地震源Xを倒せ」(暗黒宇宙人シャプレー星人・核怪獣ギラドラス登場)
これは個人的に好きな回! まずギラドラスのデザインと造形。セブンの中で数少ない怪獣で、セイウチのような体躯に赤い発光体がカッコいい。頭部も非常に独特で好印象。ストーリーも重くならない程度にシリアスで、偏屈な岩村博士のキャラクターが良い。地震源調査のため、マグマライザー再登場。「地底GO! GO! GO!」では最後まで大丈夫だったのに、今回は地底戦車の宿命、大破します。今回は作戦室=キリヤマ、アンヌとソガ=地上、ダン・フルハシ・アマギ=地底と、ウルトラ警備隊も広範囲にわたって活動。今回もキリヤマ隊長はちょっとコミカルなキャラを出してきて、より親近感の沸く人物に。その隊長に対して、岩村博士への訪問役を押し付けまくるソガ隊員も可愛い(笑)。怖いけど、なんだかんだで良い人だった岩村博士や、妙に親切に説明してくれるシャプレー星人など、色んなキャラ立ちがなされていて、最後まで楽しんでみられる快作に仕上がっている。