ざっくり感想「平成ゴジラシリーズ」 | 怪獣玩具に魅せられて

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「ゴジラ」シリーズ 1984年~1995年まで ざっくり感想 

 

『ゴジラ』(1984年)

 充電期間を経て仕切り直されたゴジラ。「巨大生物が現実社会に現れたらどうなるか」というシュミレートを改めて行っており、途中の核をめぐる問題は、意外や意外『シン・ゴジラ』に近いものがある。最初は田中健・沢口靖子のカップルが主人公なのかと思いきや、真の主役は小林桂樹演じる総理だったのね。この総理が渋い! 特に核の使用を米ソに思いとどまらせようとするシーンは、淡々とした中に強い芯があって好き。前半のホラー、後半の市街地戦など、原点にもどった「恐怖」演出や怪獣としてのゴジラの描き方にも好感が持てる。ただ、ゴジラのデザインは角度によってはすっごく変な顔に見えたり、肝心の特撮パートがイマイチだったりと、傑作! と手放しで喜べない1作。あと、金八先生の登場は、どんな理由があれどもノイズだった。

 

 

『ゴジラVSビオランテ』(1989年)

 原案が新マンの「許されざるいのち」の作者と同じ人だということで、植物と怪獣の合成が芦ノ湖に出現するなど、共通点も多い。平成シリーズの中でも突出して「変」な作品である一方、ゴジラのデザインの完成や「ゴジラと心を通わせる少女」の登場など、以降の平成シリーズで踏襲される要素も多い。バイオ怪獣ビオランテはすさまじいデザインと完成度で、地響きを立てながら進軍してくるシーンは鳥肌が立つくらいにカッコよかった。ストーリーは、せっかくの「許されざるいのち」というテーマを十分に活かしているとは言い難い。企業スパイ? など、ノイズになる要素も複数ある。

 

 

『ゴジラVSキングギドラ』(1991年)

 平成シリーズの中では一番好きかな。序盤、ゴジラによって壊滅させられる未来を変えるために、ゴジラという事実そのものをなかったことにするという、「ターミネーター」的展開。一人の人間にすぎないジョン・コナーに執着するターミネーターよりも、ゴジラという一個の脅威に対する未来改変は納得のいくアイデアで、これは考えたなと。ただ、そこにターミネーターもどきを加えたことで、どんどん興が冷めていくのが勿体ない。けっこう出入りが簡単なタイムマシンとかも含めて、人間ドラマパートに詰めが甘いところが多いですね。特撮は怪獣造形のクオリティも勿論のこと、巨大なキングギドラにも劣らぬ規模の市街地での戦闘という、平成になってからならではの非常にスケールの大きいミニチュア特撮を見せてくれて、刮目せよ! という感じ。アクション自体はまだ発展途上というところだが。何より特筆すべきは土屋嘉男の好演で、彼こそ「時代を超えてゴジラと心を通わせた男」。その最期が泣ける。

 

 

『ゴジラVSモスラ』(1992年)

 1961年の大傑作『モスラ』を下敷きにしたと思しき展開のてんこ盛りでニヤッとしてしまうけど、『モスラ』にあったストーリーの起伏とスペクタクルには程遠い。合成技術は進化しているはずが、妙なカキワリ感があって、ミニチュアの中で思うがままに暴れてくれていた方がずっとリアルに見える。良かったところは、バトラのデザインと市街地蹂躙シーン! ただし、形がどうしても虫なので光線技に頼らざるを得ず、平成ゴジラシリーズの個人的不満点である光線のぶつけ合いばっかりになってしまっている。ラストバトルは、東京夜の光にあふれた中での戦いですごく良いのに、肝心の戦い方のバリエーションがなくて勿体ない。人間ドラマも退屈で、子役のとってつけた演技が観ていて辛い。

 

 

『ゴジラVSメカゴジラ』(1993年)

 『ジュラシック・パーク』公開の年に、こっちではベビーゴジラ。ただ改めて観ると、ベビーの造形は着ぐるみ怪獣の中でも相当リアルで素晴らしいものがある。人間サイズでカメラが寄る画面も多いから、細部に拘って作られているのだろう。他にもゴジラの近畿横断や破壊シーンが素晴らしい。清水寺や表参道に現れるゴジラの「異物感」が良い。一方、メカゴジラ含めたGフォース周りの描写に不満多し。とにかく怪獣バトルが不満。ほとんどホバリング移動のメカゴジラ。基本は光線の打ち合い。画面は派手になったけど怪獣バトルに見ごたえがない上、Gフォースが何をしたいのかイマイチ分からない。余談だけど、ゴジラによる大阪蹂躙のシーンで、親父が勤務していた会社のビルが見事にぶっ壊されていたそうです。

 

 



『ゴジラVSスペースゴジラ』(1995年)

 エメゴジの公開が延びたことが理由で急遽作られた作品。特撮パートにかける時間がなかったのか、多くは実景を手前に、怪獣を奥に置いて、ガレキを噴き上げさせながら移動させている。窮余の一策といった感じ。全体的には平成シリーズ唯一のゴジラと人間共闘の物語だし、ゴジラを利用とする悪役的人間の登場、モゲラの登場など、ゴジラの空想科学的世界に新要素を入れようと、あれこれ頑張ってはいる――が、色んなところが足りていない印象。全体的に不完全燃焼感が否めない。特に人間ドラマが上手くかみ合ってなくて、下手な昼ドラを見ているよう。ゴジラと共闘したことで、Gフォースの立ち位置もだいぶ揺らいできた。今や『ウルトラマンZ』のバコさん役で大人気の橋爪淳さんが主人公位置で、熱演が光る。ここぐらいかな。人間パートで良かったところは。

 

 

 

『ゴジラVSデストロイア』(1995年)

 映画館で観て、マヂで終わらせるんだ……って気概を感じた作品。何せ河内桃子さんが1954年と同じ役で登場してるわけですから。殆ど40年ぶりに登場した「オキシジェン・デストロイア―」が、平成ゴジラを締めくくる最大の脅威であり、しかも今回はそれが人類側にとっても脅威となる。一方でゴジラもメルトダウン寸前という、「どうあがいても絶望」ていな状況で、前回までにあった「ゴジラの立ち位置がよく分からない」問題とか、そういうことを言っている場合ではなくなっていた。篠田三郎さんや辰巳琢郎さん、髙嶋政宏の熱演も見どころの一つで、ドラマに重厚さを加えている。極限の危機に対して、どう対応するかが話の中心で、そこからぶれずにゴジラの最期を描き切ったのは立派。デストロイアも複数の形態を持ち、集合体や完全体の悪魔的な造形は平成ゴジラ最後の敵として君臨するに相応しい。さすがに今回のバーニングゴジラでは派手な怪獣アクションは望めなかったが、それでも夜に赤く発光したゴジラの佇まいには、グッとくるものがあった。ゴジラの最期には大泣きしたが、翌年から『モスラ』が始まるので、怪獣映画がこれで終わり、とかいう心配は皆無でした。