ざっくり感想「昭和ゴジラシリーズ」 | 怪獣玩具に魅せられて

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ゴジラ・ガメラ・ウルトラマン、その他たくさんの特撮怪獣玩具を紹介します。

去年末あたりから勝手に始めた、ざっくり感想。今回は、日本怪獣映画の原点にして頂点に輝く1954年『ゴジラ』から、いわゆる「昭和シリーズ」と呼ばれる作品たちのざっくり感想を書いていきたいと思います。

 

 



「ゴジラ」シリーズ 1954年~1975年まで ざっくり感想 

『ゴジラ』(1954年)

 言わずと知れた、日本特撮怪獣映画の原点にして永遠の頂点。普通、どんなジャンルでも出発点からどんどんブラッシュアップしていくものだと思うけれど、こと「ゴジラ」シリーズに関して言えば、最初も最初にマスターピース的な1作が誕生している。核の脅威、戦争の記憶、それらと硬く結びついた「恐怖」を、ここまで克明に描き出した映画が他にあろうか。東京に上陸したゴジラの破壊に次ぐ破壊や、その足元で逃げ惑い、傷ついていく人々を徹底して生々しく映し出す。戦争の傷跡を目の当たりにした人々にしか想像することができない、まさに時代の寵児。ゴジラそのもののデザインも、最初から究極に完成されていて、動と静の緩急が絶妙な動きも注目したいところ。巨大感をあおるミニチュアとの絡ませ方など、どのシーン1つとっても丁寧かつ確かな戦略のもとに設定されていることが分かる。これは凄い。『初代ゴジラ研究読本』を読むと、監督・プロデューサー・特撮・俳優・音楽・美術その他、多種多様な要素の中で新しいアイデアや工夫、作りこみや情熱が絶妙に織り成された、極めてクリエイティブな作品であることも分かるし、作り手たちの底知れない「本気度」がうかがえる作品となっている。僕の中で、これを超える日本映画は、後にも先にも永遠に存在しない。

 

 

『ゴジラの逆襲』(1955年)

 前作のヒットを受けて急遽制作された1作で、どれくらい急ごしらえかと言うと、予告編が存在しないくらい(笑)。前作にあった核への継承や戦争の記憶など、骨組みとなるテーマを再度語ることなく、ゴジラを「荒神」的な扱いとして、その最後に「封じ込める」という顛末を持ってきたのは、前作でゴジラを死なせたままでいることに耐えられなかった原作者、香山滋の気持ちのあらわれだろう。前作とは違った点で色々と魅力の多い作品で、まず日本特撮映画における「怪獣バトル」の基本をこの1作で作り上げてしまったこと。暴竜アンギラスとの大阪城を舞台にした死闘は、スタッフのミスであるというカクカクした動きが逆に荒々しい感じがして見ごたえがある。ランドマークを破壊しながら戦うというお約束も、この映画から始まった。一方、怪獣バトルをクライマックスの見せ場とせずに、ラストはあくまでゴジラをどうするかという命題に答えを出すところに戻っていくなど、作品のテーマとしっかり向き合っているところも良いし、俳優陣の好演にも注目したいところ。ゴジラ大阪上陸の緊張感など、前作から引きついた要素も多い。アンギラスは東洋の龍の面影を多分に残し、ゴジラも荒神として封じられるなど、日本風土に息づく設定やストーリーも個人的には大好物。

 

 

『怪獣王ゴジラ GODZILLA KING OF THE MONSTERS!』(1956年)

 アメリカで再編集された珍作。オリジナル版が持っていた重厚さが、ここまで薄められるとは……。それに憤る気持ちもある一方、「ここまでやれば立派」。一つの珍味として、げらげら笑いながら見たくなる一本ではある。アメリカ版は徹底して「分かりやすさ」を追求していて、極東のモンスター映画を、同時代のハリウッド的モンパニ映画に置き替えた作品。ナレーションの多様や、レイモンド・バーの「顔力」で物語を牽引していく。全てを語らないからこそ、内包しているメッセージやテーマがシビアに伝わるものなのに、それを一から十まで説明してどうするのかと。あと、やっぱり最大の見どころは、モブのセリフなど「日本語」が分かる音声部分で、そのたびに腹を抱えて笑う。

 

 

『キングコング対ゴジラ』(1962年)

 東西代表怪獣の対決モノーーと言っても、実際はお互いバタバタギャーギャーしながら城をぶっ壊してた印象が強い。特撮についてはこれより6年も前に作られた『空の大怪獣 ラドン』の方が凄かったぞとか色々と言いたいことはあるが、娯楽作品として手放しに楽しめる1作。格闘シーンは1955年の『逆襲』から格段に進歩している上、登場するゴジラ、キングコングそれぞれに対策や作戦が描かれているのが好ましい。怪獣映画の中では置いてきぼりになりそうな主人公サイドのドラマも伏線が上手く機能していて、きちんと本筋に絡んでくる。双方のうちどちらかを極端に人間サイドに寄せるということもせず、激闘の末に両者リングアウトとしたのも好ましい選択や距離の置き方だと思う。

 

 

『モスラ対ゴジラ』(1964年)

 昭和ゴジラにおける「対決モノ」の中でも特に完成度が高い1作。ゴジラを難攻不落の脅威として改めて定着させた。以降の昭和ゴジラのデザイン全ての原型となった「モスゴジ」の造形も見事で、ここからどんどん劣化していくのが勿体ない。地中から出現し、城をぶっ壊し、モスラをいじめるなど、徹底した「悪役」として描かれているゴジラも珍しいし、その「悪辣さ」がよく分かる造形かつデザイン。少し前に銀幕デビューを飾ったモスラ(新人)にとっては、東宝怪獣の親玉とぶつかり合うのは必然で、余命いくばくもないモスラが意外と善戦する。本作はゴジラ=悪=大人という分かりやすい図式が成り立っており、これまでのゴジラとは少し異なる明確な勧善懲悪カタルシスが存在していて、それがラストのメッセージに繋がるのも良い。

 

 

『三大怪獣 史上最大の決戦』(1964年)

 東宝怪獣の中でもゴジラと並ぶ人気怪獣キングギドラの初登場怪獣。これまでは敵対関係でしかなかった怪獣たちが共闘して外敵に立ち向かう初の試みであり、ウルトラマンに先駆けて怪獣たちに人間的なキャラクターを付与している。以降のシリーズへの影響は非常に大きい。ただ、こっからゴジラの凋落? が始まると考えると……手放しでの絶賛ってテンションにはならないかなあ。もちろん面白い作品ではある。キングギドラによる地球蹂躙シーンが素晴らしく、東宝特撮のクオリティの高さをまざまざと見せつけられる。名優たちによる人間ドラマにも見ごたえがあり、特に星由里子さんが本当にお美しい。色んな魅力と親しみやすさがあって、ハリウッド版の『キングオブモンスター』よりもずっと好きな一本です。

 

 

『怪獣大戦争』(1965年)

 日米合作という形で作られたゴジラ映画は、これが初。前作がハリウッド版『KOM』の元ネタなら、こっちは『ゴジラ FW』の元ネタ。前作で宇宙怪獣を出した以上、話が宇宙規模になるのは仕方ないところ。最初で最後の宇宙回となったが、まさか宇宙にまで行って「シェー」をしくさるとは……。三大怪獣大暴れのシーンには『ラドン』『モスラ』『地球防衛軍』からの流用シーンなどがあるなど、こっからお金のやりくり難しくなっていく感があるが、その一方で何とか楽しませようという工夫が見られるのは良い。人間ドラマの出来が中々良くて、特に今回はX星人統制官の土屋嘉男さんの名演が光る。あのクセだらけの役をまじめにやりきる、その役者魂が好き。

 

 

 

『ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘』(1966年)

 ゴジラが変な方向にイって来たな……ということがよく分かる1作。宇宙から南海へ、一気にスケールダウン。ギドラのあとって、どの怪獣を持ってきても上手くいかなかろうと思ったが、本当に上手く行ってない(笑)。ストーリーは絵に描いたような海洋冒険譚で、元々はキングコングに主役やらせるつもりだったのを、ゴジラに変えたって話を聞いて納得の部分も多い。島を舞台にしたことで市街地での戦闘は殆どなくなり、『怪獣総進撃』までこの傾向は続き、それ以降も僻地っぽいところでのアクションが主となっていく。これは寂しいところ。味わいはいよいよ子供向けになって、やけにクッキーモンスター似のゴジラになってしまったなあと言う印象。鼻を掻くとかね、良くないよ、あれ。

 

 

 

『怪獣島の決戦 ゴジラの息子』(1967年)

 ゴジラ映画史上最大のずっこけ回……というイメージが強かったけれど、意外としっかり作ってある。特に俳優の力に頼るところは大きい。一人一人、別の映画で主役を張れる名優たちが一挙に集い、この豪華なメンツだけでも一見の価値あり。特撮パートでは、カマキラスとクモンガの操演が見事で、エビラとは違って着ぐるみでなく操演というところで独自のリアリティがあって好ましい。最大の不満は主役? であるゴジラとミニラがいくらなんでも不細工すぎる。特にゴジラ! 怪獣王が、そんな豚みたいな体になってどうする!

 

 

 

『怪獣総進撃』(1968年)

『ゴジラFW』のもう一つの元ネタ。ゴジラ他、多数の怪獣を集めた超大作! と言えば聞こえは良いが、世界の都市を破壊するシーンがあまりに少なくて物足りなさが凄い。基本、ムーンライトSR3が月に行ったり、キラアク星人が何かやらかしたりが主で、怪獣バトルは終盤、しかも富士の裾野という超だだっ広いところでの戦闘。10対1はいくらなんでも無理があるし、バラゴン・バランにいたっては存在しているだけ。高架をくぐるマンダ、パリのゴロザウルス、新造形のアンギラスなど見どころもあるが、これを集大成とするには少々しょっぱい。これを超大作規模で映像化できる環境があれば、真の意味での大傑作になったかも。え? それが『ゴジラ FW』じゃないの? と言われそうだが、あれはあれで、問題が多いんですよ……。

 

 

『ゴジラ・ミニラ・がバラ オール怪獣大進撃』(1969年)

 看板に偽りあり過ぎて、ここまでくると清々しい。ガバラ戦以外の戦闘シーンが、全て過去作からの流用。ただ、今回は基本、子どもの妄想がベースにあるので、こいつが過去に見ていた怪獣映画の一部シーンのフラッシュバックあるいはトレースと考えると、一応の納得はできる。かといって、この解釈があろうとなかろうと、怪獣パートが面白くないのは変わらないのだが。一方の人間ドラマパートも子ども向けだが、ラストだけにはちょっと好感を持った。俳優陣は相変わらず豪華で、それによって良く見える部分もあるにはあるが……やっぱり新しい怪獣世界を見せてナンボのシリーズ、これはさすがに受け入れられない。

 

 

『ゴジラ対ヘドラ』(1971年)

 ついつい見返してしまうゴジラ作品の一つ。60年代後半のズッコケ感から一転&原点回帰。非常に面白いゴジラ映画の誕生。まず、相当怖い上にえげつない。これは1954年版と同様に、怪獣被害の悲惨さを容赦なく描き出す。しかも今回は相手が相手だから、被害の様子が相当に嫌な感じのするシーンになっている。雀荘がヘドロに埋め尽くされるところとか、少年が必死に逃げた先で白骨に遭遇する所とか、トラウマ級に怖い。途中に出てくる「ヘドラマスク」のアニメーションなども良くできていて、非常に怖い。ゴジラ映画本来の、それでいて新しいショッキングな映像体験をさせてくれる意欲作。ただワクワクできるのは序盤~中盤にかけて怪獣被害がどんどん拡大してくところで、後半は一気にダレル。これは予算の関係らしいが、予算関係なくゴジラを飛ばすのは駄目だろう(笑)。けど、最後の一瞥を残して帰っていくゴジラなど、「ちゃんとした」メッセージが託されている作品であって、子どもの味方に成り下がっていた中で、見た人の心に何らかの傷を残す作品にしっかりなっているところは、この時期のゴジラ映画の中では非常に素晴らしいことだと思う。

 

 

『地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン』(1972年)

 良かったところ、ガイガンのデザイン。以上! このゴジラ映画最低迷期において、こんなに面白いデザインの怪獣が登場してくるとは。次作のメガロも良かったけどね。後年のメカニカルすぎる造詣よりも、怪獣らしさ全開な中で部分部分がSFチックな初代ガイガンがカッコいいし、好きだ。ただ、それ以外の部分が残念過ぎる。まずMハンター星人、本物のアレを使うんじゃねえ。せっかく登場したアンギラスもすっごく弱いし、ゴジラと吹き出しで会話するし。ガイガンとキングギドラの湾岸攻撃シーンで本当にわずかばかり市街地が映るだけで、基本は荒野の戦い。映画でこれは寂しい上、流用が多すぎる。昼のシーンを中途半端に薄暗くしても、夜にはならないって! エド・ウッドかお前らは。菱見百合子さんには悪いが、低迷期のどうしようもないゴジラ映画。

 

 

 

『ゴジラ対メガロ』(1973年)

 これを見た後では『ゴジラの息子』が名作に思えてくる。メガロのデザイン、良かった。以上! 今回はアクションさえも馬鹿っぽくて本当に見ごたえがない。ダム破壊シーンは頑張ったのかも知れないが、メガロがその激流に飲み込まれちゃったりして、怪獣としてのカッコよさがない。ゴジラも人間ぽくなりすぎて、見栄を切ってばかり。そしてジェットジャガー……。特撮も流用ばっかりで、あろうことか前年の『地球攻撃命令』の流用さえあったのにはさすがに怒った。これだったら、同時代のウルトラシリーズの方が遥かに見ごたえがある。

 

 

 

『ゴジラ対メカゴジラ』(1974年)

 ギドラと双璧をなす悪役、メカゴジラのデビュー作。おちゃらけ具合はだいぶ抑えられて、全体的にシリアス色が強い。これは原点回帰的に再登場してくれた平田明彦や小泉博の存在が大きい。佐原健二、岸田森など嬉しくなるキャスティングで、特に岸田森さんのインターポールは不思議な説得力があって良かった。メカゴジラのデザインの完成度は、「至高」の一言。全身武器も素晴らしい。一方、ゴジラのデザインは前作までのをひきずってかなりヌルたいので、こちらも一新して欲しかったところ。舞台は相変わらず荒野が多いが、初戦、大炎上するコンビナートでの戦いが非常に黒々として良かった。あと、キングシーサーの歌はいくら何でも長すぎると思う。

 

 

『メカゴジラの逆襲』(1975年)

 本田監督久々のゴジラ映画であり、ちゃんと「原点回帰」しているというのに動員数ワーストとはどういうことか。本当に、作られた時代が悪かったとしか言いようがない。特撮パートはちゃんとしているし、本田監督ならではの怪獣――科学者――人類の関係がしっかりクローズアップされている。話はウルトラマンの「謎の恐竜基地」を大規模にしたもので、チタノザウルスのストーリーがメイン。ゴジラとメカゴジラの戦いは添え物に過ぎないが、人間ドラマがしっかりしているので、ちゃんと本筋に絡んでドラマが展開する。やっぱり本田監督、上手いなと。不満を言えば、やはりゴジラのデザインが最後まで気に食わないままだった。ゴジラの原点回帰を目指す以上、ゴジラ自身のデザインもしっかり見直すべきだったのではと思う。この後、9年間の休止期間を作ることになる「不名誉」な作品ではあるが、いやいや、この時期のゴジラ映画の中ではちゃんとしている方ですよ。