ざっくり感想「ウルトラマン」第31話~第39話 | 怪獣玩具に魅せられて

怪獣玩具に魅せられて

ゴジラ・ガメラ・ウルトラマン、その他たくさんの特撮怪獣玩具を紹介します。

 

『ウルトラマン』第31話~第39話まで ざっくり感想 

【第31話】

「来たのは誰だ」(吸血植物ケロニア)

 はじめっから怪しすぎるゴトウ隊員。スーツ姿に頭だけケロニアなのが、怖いようでコミカル。科特隊本部に侵入してきた宇宙人としては、ザラブの方が一枚上手だったかな。そもそもケロニアが科特隊に侵入して何がしたかったかもよく分からん。この話の主役は、科特隊が分析を依頼した二宮博士で、まさかのキリヤマ隊長じゃないですか!! シリーズも終盤に差し掛かると敵も強くなり、特に理由なくスペシウム光線が通用しないケロニア。なぜだかビルをぶっ壊して登場したウルトラマンとの戦闘は見ごたえがあり、「ウルトラアタック光線」は本編では最初で最後の登場。後半になればなるほど面白く見れた。特に二宮博士のセリフで締めくくる切れ味が、不穏さを残していて良い。

 

 

【第32話】

「果てしなき逆襲」(灼熱怪獣ザンボラー)

 科特隊の隊員の休暇中に怪獣が――という展開は第4話と同じ。今回はそれがインド支部から来日したパティだというだけで、しかもフジ隊員とは違ってあまり役に立たない(笑)。タイトルの「果てしなき逆襲」も、自然を破壊する人間への逆襲であるとセリフの上では説明されているけれど、それが展開に活きることはなかった。ストーリーにはやや難が残るものの、ザンボラーの造形と火災シーンが素晴らしい。頭部の赤い発光体の明滅から周囲の大爆発。燃え広がる山間の中でのウルトラマンとザンボラーの激闘が見物。序盤、誰がパティのエスコートをするかを決めるシーンなど、科特隊ならではの牧歌的な雰囲気の描写など捨てがたい魅力も多い。

 

 

【第33話】

「禁じられた言葉」(悪質宇宙人メフィラス星人)

 視聴率初の40%超え! 実はハヤタ隊員があまり登場しない珍しい回。地球を征服するのに「暴力は必要ない」ではなく、「暴力は振るいたくない」(=「まあいざとなれば容赦しないけどね☆」)」という、あくまで紳士的なスタンスを貫くメフィラス星人が憎たらしくも、底知れぬ不気味さを醸す。自分の力を見せつけるために、巨大フジアキコ隊員⇒配下の宇宙人3体をビル街に出現させるシーンでは、非常に限定された「破壊」だけを見せるなど、全体的に上手く抑制された展開になっている。ウルトラマンとの戦いも、これまでのような泥臭いものではなく、たっぷりと間合いを取った西部劇的な緊張感に満ちている。最後まで決着がつかず、地球を去る潔さも含めて己の矜持に忠実であろうとするメフィラスが、もはやヒーロー的にカッコいい。

 

 

【第34話】

「空の贈り物」(メガトン怪獣スカイドン登場)

 実相寺監督のコメディタッチが全開な傑作で、うちの息子もこれが大好き。ケツにロケットをブチ込まれて、おっとっとってなっているスカイドンから必死で逃げる科特隊のシーンで、いつも爆笑している。あと、ウルトラマンがスカイドンを背負い投げしようとして力尽きるシーン(ここでは音楽も一緒に力尽きる)、スプーンで変身しようとするシーンなどなど、子どもたちが大好きな笑いに満ちた、本当に楽しい回。「重いのよ、奴はあきれ返るほど重いのよ!」とか「え? なぜって? だって春だもの」とか、セリフが一々小気味よくて、何回でも見返してしまう。特撮パートでは、スカイドンの重さを表現するために地面がめり込むシーンやビートルの見事な操演などが特筆されるべき回。

 

 

【第35話】

「怪獣墓場」(亡霊怪獣シーボーズ登場)

 イデ隊員の「ウルトラゾーン」という言葉が数10年後にすごく効いてくることになる。冒頭の怪獣墓場⇒ウルトラマンの苦悩⇒怪獣供養の流れは、怪獣を哀れな存在として捉える実相寺監督の心が表れているようで、シリーズのどっかでやらないといけない回だったろうし、このタイミングで実相寺監督にやられたのが最大の成功の秘訣だったのだろう。中盤から後半のシーボーズの間抜け可愛さやウルトラマンとのどたばたやりとりがフィーチャーされがちだけれど、個人的には市街地を歩くシーボーズを線路越しに捉えたショットにこそ随一のセンスオブワンダーがあったと思う。

 

 

【第36話】

「射つな! アラシ」(再生怪獣ザラガス登場)

 全39話の中ではほとんど唯一? アラシ隊員が主役となる回。一応、第5話や8話でも人柄は描かれていたけれど、彼の「葛藤」を掘り下げた回はこれが唯一じゃないかな。イデ隊員に感情移入していると、日ごろから彼に辛く当たっているアラシ隊員のことが好きじゃなく感じたりするもんだが、今回その彼の「使命感」や「責任感」そして「慢心」を描くことで、熱血漢は熱血漢だけれど、ちょっと取っつきやすくなった印象があるし、何よりグッとくるのは、アラシのビートル出撃に対して、ムラマツ・イデ・フジはそれを非難し、止めさせようとする一方で、ハヤタだけはアラシを助けるために動くなど、科特隊の中でのそれぞれの互いの理解を描いていること。イデ隊員の失態挽回作とはまた違った味わいがある。ムラマツとアラシの最後のやり取り含めて、けっこう好きな作品です。

 

 

 

【第37話】

「小さな英雄」(怪獣酋長ジェロニモン・友好珍獣再生ピグモン・彗星怪獣再生ドラコ・地底怪獣再生テレスドン登場)

 出たよ最高視聴率のバケモンみたいな回! そしてここでフィーチャーされるのがイデ隊員。視聴者の疑問や悩みを一手に引き受ける、非常に重要なキャラクターであることが改めて示される。「ウルトラマンがいるなら、科特隊は必要ないのでは?」という疑問に対する、全うかつ真摯な答えが明示されていて、改めてウルトラマンと人類との関係の在り方を考えてみたくなる一作。『大怪獣のあとしまつ』とかいう、怪獣映画の面を被ったゴミは、この回のピグモンの尻尾の先でも煎じて飲めと言いたい。これまで多くの新兵器を開発し、怪獣たちを相手取って来たイデ隊員と科特隊だからこそぶち当たる葛藤で、これまでの前36話でのウルトラマンとの共闘があったからこそ描ける感動だった。

 

 

 

【第38話】

「宇宙船救助命令」(光熱怪獣キーラ・砂地獄怪獣サイゴ登場)

 宇宙空間のみが舞台となる最後の異色作か。これまでとは違った世界観や空気を出すために、お馴染みのビートルは登場せず、新しいメカニックがこれでもかと登場してくる。最後から2話目にして、中々に豪華。宇宙空間を表現するために全体的に暗いフィルターがかけられていて、その中で眩しく輝くキーラの目。酸素ボンベをジェット噴射にして飛ぶというアイデアは、マット・デイモン主演の『オデッセイ』でも最後の重要な展開になっていたが、実はこっちの方が早かった。空想科学の発想力は、時代を超えて何度でも復活を遂げるようだ。

 

 

 

 

【第39話】

「さらばウルトラマン」(宇宙恐竜ゼットン・変身怪人ゼットン星人登場)

 全39話の締めくくりに、史上最大の侵略が展開する。40年間をかけた周到な侵略作戦に対して、科特隊もビートル3機での防衛戦。音楽をほとんど使わずに緊迫感をあおる。空中戦と科特隊内部への侵入を同時並行で行うなど、確かに手が込んでいて、これまでの科特隊にあった牧歌的な雰囲気はもはやない。これまで最大の協力者であった岩本博士が利用され、本部が徹底的に破壊されるなど不可逆的な展開に、当時の子どもらは本当にハラハラしただろう。そして、ウルトラマンとゼットンの対決――。まさかここでウルトラマンが負けるとは。しかもゼットンに殆どダメージを与えられぬままに。ここまで容赦なくウルトラマンの「敗北」をシリーズの最後に持ってきたのは後にも先にも「ウルトラマン」だけ。この最終回を以て、「ウルトラマン」全39話は日本特撮史はもちろん、世界的空想科学傑作として永遠に輝き続けることになった。

 

 

 

以上、ウルトラマンのざっくり感想でした。

やっぱり「ウルトラマン」全39話は面白いですね。個人的思い入れの程度の差はあれども、1つとして「面白くない」回がないというのが凄い。全ての話に必ず特筆すべき魅力がある。ウルトラシリーズの本当の始まりは「ウルトラQ」からだけど、やはり「全ての始まり」を冠すべきはこの『ウルトラマン』全39話なのかなと改めて思いました。