とうとう大晦日になってしまいました。師走とは上手く言ったもので、クリスマス以降の5日間くらいは過ぎ去るのが本当に早かったですね。
こちとら大晦日まで家の片づけが終わらず、特に今日は本格的に――! ということで朝から夕方まで休みなく片付けていたんですが、その際にBlu-rayで「ウルトラマン」を流しっぱにしておりまして、今日は10話くらいまで一気見することになりました。
これが、いやぁ本当に面白いんですよ。
『シン・ウルトラマン』の感想の時にも言いましたが、やっぱり『ウルトラマン』にはウルトラシリーズのストーリーの全てがあると言っても、まったく過言じゃない。
ということでテーマを新設し、本日から映像作品にも少々手を伸ばしていきたいと思います。まずは、『ウルトラマン』全39話について、ざっくり感想を記録していきます。もちろん1話1話、語るべきことは多いのですが、あんまり長くなりすぎると今後の人生フル装填しても、ウルトラシリーズを網羅することは無理そうなので。
あと、年始になってからやればいいんじゃね? というツッコミもなしの方向で。こういうのは、思い立ったが吉日――ですよね。
ではでは、さっそく参りましょう。
『ウルトラマン』第1話~第10話まで ざっくり感想
【第1話】
「ウルトラ作戦第一号」(宇宙怪獣ベムラー登場)
子どもの頃、ビデオで一番見返した話がこれ。舞台が龍ヶ森という非常に限られた空間であり、ウルトラシリーズの大きな飛躍は第2話以降に託されている。『ウルトラQ』に似つつも全く新しい世界観で出発するに相応しい、堅実な話運びに感心させられます。30分にも満たない尺の中で、世界観・登場人物・怪獣・主役ヒーローを紹介するスマートさだけでなく、最大の目玉となる怪獣VSウルトラマンの前に、S16号とジェットビートルによる「ウルトラ作戦第一号」を持ってくるなど、とにかく見どころが多く、一瞬たりとも間延びさせない勢いが素晴らしい。
【第2話】
「侵略者を撃て」(宇宙忍者バルタン星人登場)
初期の大傑作。第1話が全体的な設定の説明なら、第2話は「今後ウルトラマンはこんな感じでやっていきます」という意思表示のようなもの。夜の市街地戦、空中バトル、バルタン星人が分身するシーンの合成の巧などなど、とんでもないのが次から次へとやってくる。特にバルタン星人が分身したり合体したりするシーンは、もうこの時点で唯一無二の正解を叩き出してしまった感じ。後半、市街地戦で一気にスケールアップし、空中戦では「ウルトラマンでしかできない」画をこれでもかと見せてくれる。中盤ややホラー味が強いが、物語の頭尾にイデ隊員を持ってきていることで、誰もが楽しめる作品に仕上がっている。文句つけるところが一つもない!
【第3話】
「科特隊出動せよ」(透明怪獣ネロンガ登場)
第2話が「ウルトラマンって何ぞや」なら、この第3話は「科特隊って何ぞや」という話。怪異の確認⇒対処法の検討⇒実行という科特隊の作戦の流れが丁寧に描写されている。ただ今回はそこにホシノ君が入ってきたことで、作戦実行のところがぼやけてしまったのは残念で、科特隊の作戦の成果が分からない。特撮は見ごたえのある画が多く、舞台はやや狭めに設定し、その代わり奥行き豊かな発電所のセットの中で大暴れするネロンガが楽しい。体色を透明にするシーンの合成や、電気を放出・吸収する際に角が光るなど細部への作りこみも光る。イデ隊員はこの時点ですでにハヤタを疑っていたんだな。
【第4話】
「大爆発五秒前」(海底原人ラゴン登場)
第4話で早くも休暇を取るフジ隊員。科特隊って牧歌的な組織なのかなと思いきや、就任以来初の休暇らしい。中々のブラックだな(笑)。休暇中とはいえ有事の際には即座に任務に当たるなど、科特隊のプロフェッショナルなところがうかがえる展開にもなっていて、科特隊員の中で最初にフィーチャーされるのがフジ隊員だというのも確かなチョイス。ラゴンがぶら提げているのは木星開発用の原子爆弾で、これが爆発してしまうことが今回の最悪の結末。故に満足に攻撃もできない。全39話の中では地味な印象を受ける話だけれど、何気に『ウルトラマン』始まって以来のガチヤバな事態になっていて、個々の隊員の葛藤も丁寧に描かれている。
【第5話】
「ミロガンダの秘密」(怪奇植物グリーンモンス登場)
植物系の怪獣はホラーテイストを帯びやすいもの。しかしこの第5話はイデ隊員がここぞというところで恐怖を和らげてくれるので、前半確かに怖いシーンはあるものの全体的には非常に明るく、子どもから大人まで楽しめる快作になっている。ミステリー色も強く、ミロガンダの出生を科特隊が探っていく過程は謎解き要素もあって楽しい。最後、巨大化したグリーンモンスとウルトラマンとが丸ノ内で対峙するシーンは、二度目の夜の市街地戦にしてバルタン戦とは違った地上での取っ組み合いが見事。隠れた名作――ってわけじゃないけれど、トップクラスに好きな作品です。
【第6話】
「沿岸警備命令」(海獣ゲスラ登場)
『ウルトラマン』初の海上戦は物凄い苦労したそうな……。ウルトラマン役の古谷さんによると一番怖かったんだとか。今回は子どもたちが主役の回で、ホシノ君大活躍の回。子どもたちが宝石密輸団からの脱走する展開と、科特隊がゲスラへの対応に難航する展開とが並行し、最後に一つに繋がる。王道的な話運びではあるが、楽しく見られる作品。ダイヤモンド・キックは『ウルトラマン』初の人間側の悪役。特にゲスラ関係ではなく、運悪く居合わせた宝石密輸団(しかも二人組)という子悪党っぽさ。このどこか牧歌的な雰囲気が『ウルトラマン』の心地よさでもある。
【第7話】
「バラージの青い石」(磁力怪獣アントラー登場)
異国情緒あふれる一作で、全39話の中でも舞台の雰囲気が他と全然違う。東宝映画『奇厳城の冒険』のオープン・セットの借用らしいけど、その効果は絶大で、テレビシリーズとは思えない豪華さとスケールの大きさ。雰囲気は百点満点。それに加えて、「ノアの神」という、人類とウルトラマンとの古からの繋がりをにおわせる設定もあって、物語・映像共に「奥行きの広い」一作となっている。アントラーはかなり強く、科特隊もウルトラマンも大苦戦。倒した後も全てが好転せず、「滅びゆく都」としてのバラージの運命は変わらないなど、ビターな後味が大人な感じ。
【第8話】
「怪獣無法地帯」(どくろ怪獣レッドキング・有翼怪獣チャンドラー・地底怪獣マグラー・怪奇植物スフラン・友好珍獣ピグモン登場)
冒頭3分ほどで即レッドキングとチャンドラーの死闘が拝める。とにかくサービス精神旺盛な一作。これまでありそうでなかった、恐るべき怪獣島での危険な冒険譚。二組に分かれて、それぞれに見せ場を作る確かな話運びが巧い。科特隊の中でも今回はアラシとキャップが活躍。イデ・フジの「……行こうか」というセリフも良く、一人一人のキャラクターが際立つような描写に富んでいる。個性の発揮は怪獣たちにも言えて、スフラン含めて5種の怪獣それぞれが、本当に個性豊か。冒頭5分くらいで早々退場したチャンドラーでさえ、忘れがたい印象を残す。第7話・第8話と、見慣れた市街地から遠ざかった舞台設定となったが、このように舞台をあちこち変えられたところにも、「ウルトラマン」に託された潤沢な予算とアイデアの力をうかがわせるものがある。
【第9話】
「電光石火作戦」(ウラン怪獣ガボラ登場)
今回も子どもたちが主役の回。と言ってもホシノ君ではなく、ボーイスカウトの少年2人。ウルトラマンの世界の子供たちは、揃いも揃って大人顔負けの勇気を見せて非常に逞しい。ガボラはウランを常食とし、放射能を放出する性質があるので迂闊には攻撃できず、科特隊の作戦も迎撃ではなく被害の及ばないところへの誘導が第一となる。この辺の状況に応じて対応を変え、関係各所と連携して対応に当たる描写に、単なるフィクションでは片づけられないリアルさがあって良い。子どもたち2人の苦難に満ちた道中や、科特隊に同行するホシノ君など、子どもたちの存在が強く印象付けられる一作で、「ウルトラマン」が放送開始から大切にしていたスタンスの一端がうかがえる。
【第10話】
「謎の恐竜基地」(エリ巻き怪獣ジラース登場)
ウルトラマンとジラースの戦いは、いつエリマキを捥ぎ取られるか気が気でない一戦に(笑)。後、本作でウルトラマン笑いますよね。Aタイプさんの顔で笑われるとけっこう怖い。終盤の戦いはけっこうコミカルなところが多いのに、ストーリー自体は研究に狂執して道を踏み外した科学者の末路を描いていて、中々に重い話。話とアクションのギャップが凄い作品。最後、中村博士がジラースの名を叫びながらにじり寄っていくシーンでかかっている音楽は、東宝の変身人間シリーズの傑作『ガス人間第一号』のラストと同じで、壮絶な悲壮感を掻き立てる。第6話のダイヤモンド・キックとは違って、堕ちた人間の「哀れ」を感じさせる結末になっていて、これが中々味わい深い。