シン・ウルトラマン 感想②(ネタバレなし 非常にざっくり) | 怪獣玩具に魅せられて

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5月13日公開の『シン・ウルトラマン』。鑑賞直後のレビュー2回目です。

引き続き、ネタバレどころか話の内容にはほとんど踏み込まず、鑑賞前の期待と、その結果についてのみ言及したいと思います。

 

 

  2.『シン・ウルトラマン』にあった期待と不安――ウルトラマンや怪獣のデザイン

僕が『シンウル』のビジュアルを初めて見たのは、ポスター。海に面した街の中央に佇むウルトラマンの姿。その後、公式サイトで庵野秀明氏の、ウルトラマンのデザインに関する私見を拝見しました。『シンウル』のウルトラマンのデザインをどうするか、その完全な決め手となったのは、成田亨氏の意向。つまり、カラータイマーを持たず、覗き穴を持たず、背中のファスナー隠しを持たず、服なのか皮膚なのか分からないシルエットにする――と。

 


『シン・ゴジラ』もそうでしたが、『シン・ウルトラマン』は、日本で最もよく知られている巨大ヒーロー・ウルトラマンを、クリエイターである庵野秀明氏のフィルターを通して、設定、ヴィジュアル共に解釈し直して映像化したものであると思います。そのフィルター、つまり、ウルトラマンをどのように「見直すか」については、やはり庵野氏の意向が非常に重要なウェイトを占めているのでしょう。そして、その意向は、ウルトラマンの「本編」だけでなく、それこそ成田氏によるウルトラマンデザインの過程であるとか、当時少年誌の情報であるとか、そういった部分も含めての「原点」を探っていたことが分かります。今回の『シン・ウルトラマン』における「ゾーフィ」の扱いを見ると、ウルトラマンが放映されていた当時のノスタルジアな情報や要素も含めての「描き直し」であろうということが言えると思う。

 


一方で、怪獣ビジュアルの、特にガボラの顔とかは、完全にエヴァの使途なわけですね。つまり、庵野秀明氏の表現世界の賜物なわけです。言い換えれば、今回の『シン・ウルトラマン』の怪獣やウルトラマンの設定変更(禍特隊などの名称変更も含めて)は須らく、庵野秀明氏の「好きなもの」フィルターを通した描きなおしなんだということが分かってくる。

 

それを作家性と呼ぶならば、非常に強い作家性のある作品となるのかもしれません。が、少なくとも最初に『シンウル』のビジュアルを見た時、僕は「うわぁぁぁぁぁ……」っと思ってしまったんです。

 


単純に、カッコよく見えなかったんですよ。

で、そのウルトラマンを忠実に再現したであろう、ムビモンシリーズのウルトラマンも、カッコよくはないんですよ。

 

僕にとってウルトラマンって、カッコいい存在なんですよ。


だいぶ顔がヤヴァいAタイプさんですら、カッコいいんですよ。

 



なのに、ポスターで見るウルトラマンは、インチキくさいSF雑誌に載っている宇宙人と大差ない雰囲気でした。特に、際立つあばら骨の不健康的痩せ方が気に要らなかった。服を着ているのか裸なのか分からない状態を示そうとしたのかも知れませんが、成田氏の絵画作品『正義と真実の美の化身』のウルトラマンは、確かに服を着ているようなシルエットではないけれど、あそこまで痩せていないし、不健康そうでもない、理想のプロポーションだった。


しかもCG感丸出しでね。CGでしか描けないウルトラマンを――って時に、CGらしいウルトラマンにするの?? って疑問があり、正直、次の特報――煙の中立ち上がるウルトラマンを見るまでは、非常に心配しておりました。

 

怪獣のデザインについては、先に言ったガボラの顔がまんま使途やんけってところが、実はけっこう心配要素でした。ネロンガは、それなりにカッコよくデザインされ直してたと思うんですけどね。ただ、あれが行けるってことは、より強敵レベルになると、もはや「怪獣」という概念すら失くされて、本当に使途的なビジュアルになるんじゃないかと思われたわけです。

 


僕にとっては、「ゴジラ」のアレンジデザインと「ウルトラ怪獣」のアレンジデザインは、根本的に質が違うと思っています。こっちの場合は、実は『ゴジラ』の方が多彩なんです。1954年の『ゴジラ』は純然たる恐怖怪獣映画として作られていましたが、55年『ゴジラの逆襲』で怪獣バトルを取り入れたことで、いきなり造形が変わった。その後、キンゴジやモスゴジなどという、それぞれ際立ったタイプが登場し、ゴジラ映画が子供だましに成り下がるに及んで、どんどんキャラクター化していくことになった。つまりゴジラのデザイン変更は、作品の内容の傾向や予算などに大きく左右されている。

 


一方でウルトラ怪獣については、物語上の立場などは変わったりするものの、基本的にデザインに大きな変更はなされない。デザインは変えずに、その時々の表現技術で、素晴らしく作り変えられている。だから、『ウルトラマン』に登場したネロンガと、『ウルトラマンZ』に登場したネロンガは、着ぐるみの完成度こそ桁違いだが、ビジュアルには、「アレンジ」さえほとんどなされていない。僕にとって、ウルトラ怪獣はそうしたものなんです。大胆なアレンジがなされたのは、それこそ『ウルトラマンパワード』で、初代ウルトラマンの怪獣を、全て「パワード」化した時くらいじゃないかと思う。

 

だから、『シン・ウルトラマン』において、登場する怪獣や宇宙人が、元から大胆アレンジするらしいと分かって、楽しみな反面、心配でもありました。予告編で見たネロンガは、以前の面影を多分に残していてすぐに好きになれたけど、ガボラはあの通り完全に使途顔だった。僕、ガボラの顔大好きだったんですよ。てか、ウルトラマンのデザインは成田氏の意向を踏襲してるのに、怪獣については踏襲せずに、「自分解釈」でやるんかい! しかもエヴァに寄せていくの――?? って、そんな不満があったわけです。その後、ザラブ星人の使途とは違う、それでいて「えっ? カッコよくね??」ってビジュアルで安堵したり、公開直前の、建物の中から登場するウルトラマンのヤバカッコよさに惚れ惚れしたりして、不安よりも期待に天秤が傾いていった。そんな中での公開および、当日鑑賞だったわけですね。

 

 

で、観た感想なんですが――

これがね、やっぱり序盤なんです。

ネタバレにならないよう気を付けますが、序盤の序盤で、本編に全く絡んでくることがない、ある怪獣たちが登場します。


30秒ほどしか登場しない、その怪獣のアレンジバランスが絶妙でね。ソフビとか出たら、絶対に買うと思います。

これが出てきた時に、叫びそうになりましたね。

やればできんじゃーん!! って。

 

その後、予告編でも見た怪獣や宇宙人が、けっこうなボリュームかつ、軽快なテンポの中で登場してきます。そして当然、主役のウルトラマンも出てきますよね。それらについて持っていた期待や不安が、どうなったかというと――。

 

たぶん、1回観ただけじゃ分からないくらいの情報量が、それぞれのキャラクターに含まれているのだと思います。

本編では簡単に取り上げられるだけの設定にも、恐らく背景があるでしょうから。

そういう意味では、アメコミの『ザ・リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン』に似ているかもしれない。

だから何回も何回も見直して、それぞれのキャラクターの肌理のようなものを、じっくりと眺めてみたいと思うのですが、怪獣アレンジそのものについては、一番素晴らしいものを序盤中の序盤に出して、テンション爆上げされて以降は、どうしても甘くなっちゃうというか――少なくとも、当初から期待していたネロンガについては文句なかったです。ガボラも、やっぱり使途っぽさが若干嫌ではありましたが、ウルトラマンとのバトルシーンは、中々見ごたえがありましたね。

 

一方の宇宙人――ザラブ星人などについては、まだ公開直前も情報が伏せられていたので、あまり言わないようにします。個人的には、怪獣ほどは上手くアレンジできているとは思えませんでした。ザラブのアッと驚く秘密とか、面白かったですけどね。

 

そして肝心のウルトラマンですが――そもそものウルトラマンのデザインそれ自体の普遍性がえげつないので、見慣れてくれば、大好きなカッコいいウルトラマンとして応援したくなる。ただ、やっぱりCG臭すぎるのがけっこうつらい。『シン・ゴジラ』の終盤、在来線爆弾のシーンでもそうでしたが、CGっぽさが出てきた時点で、一気に萎えてしまう。特に、ある宇宙人との戦いのシーンは、その相手の宇宙人のデザインのせいもあって、日本映画のへたくそなCGの使い方にしか見えなかった。今回のウルトラマン、とにかくよく動くし、洗練された動きがとにかく美しいんですけど、やっぱりCGで作ってる分、重量感はないよね。『シン・ゴジラ』はモーションアクターが野村萬斎さんで、その起用が本当に上手くいっていた分、何で今回は……ってのは、ちょっと思いましたね。

 

総合すると、僕の期待と不安のうち、不安が完全に杞憂だったってことはないですね。CGについては、シンゴジラよりもCGっぽかったです。それがほかならぬ、肝心のウルトラマンに言えてしまったってのが、ちょっと残念だったかもしれませんね。ただ、今回は『ウルトラマン』の醍醐味を素晴らしい形で昇華させていて、とにかくウルトラマンと怪獣や宇宙人のバトルが盛り上がる。僕は少なくとも、中盤の『遊星から来た兄弟』をやっているところまでは、完全に没入して楽しめました。

 

以上、ストーリーやデザインについての話をしてきましたが、最後に、この『シン・ウルトラマン』をどう思っているのかを記して終わりたいと思います。『シン・ゴジラ』については、僕はかなり肯定的な意見を持っているのですが、『シン・ウルトラマン』についてはどうなのか。それを最後に、ばっちり明らかにしていきたいと思います。

 

 

ということで、③に続くー。