シン・ウルトラマン 感想③(ネタバレなし 非常にざっくり) | 怪獣玩具に魅せられて

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  3.総括『シン・ウルトラマン』を観て。

最後に総括的なものを。最後まで、極力ネタバレを避けます。

 

公開まで、とにかく待ちに待たされた『シン・ウルトラマン』。コロナが間に挟まったこともあるにはありますが、そもそも具体的な公開日が決定するまでにも凄く待ったし、ようやっと5月13日に決まった後も、「また延びるんじゃないだろうなあ」と気が気でなかった。コロナで様々な映画が延期になったけれど、その中でも一番首を長くして待っていた作品だったかもしれません。

 

それだけ待った甲斐があったか。要は、『シン・ウルトラマン』の満足度はどうだったか、ということなんですが、

 


個人的には、

 

個人的にはですよ。

 

すごく楽しめました。

 


ただ、『シン・ゴジラ』の時のような、「スゴいものを観た」って感じではなかったです。

 

やっぱり、『ウルトラマン』って、スケールが凄いんだなと。

もちろん、『ゴジラ』にも非常に深い奥行きがあるんですが、①の記事でも書いたように、『シンゴジ』の場合は、1954年版の『ゴジラ』それ一つの再解釈として描き直すことができた。1954年『ゴジラ』は90分程度の作品であり、制作側が作品に含めるメッセージやリアリティのバランスもはっきりしている。

 

それに比べて、やっぱり『ウルトラマン』は多彩でした。今、改めてBlu-rayで観返してるんですけどね。

同じ世界観やキャラクターでドラマを描いていても、やっぱりバリエーションが豊かすぎる。

『ウルトラマン』全39話の中に、全てがある。

 

それを2時間の映画に纏め上げるのは、やっぱり相当な無理があるんだなと。

ストーリーは停滞せず、テンポよく進みますが、『禁じられた言葉』をやり始めたくらいから、次第に「雑味」というか、散漫な感じになってしまう。それぞれの話の「良さ」の質のものが違う一方で、ハイコンセプト部分は共通していて、『禁じられた言葉』までに事件→ウルトラマン→解決を複数回繰り返しているから、段々展開が分かってくる。

 


これが難しいところですよね。ウルトラマンのシリーズの劇場版は基本的に、そのシリーズの世界観の延長線にあり、劇場版ならではの「新しい話」をやってくれる。たとえ、TVシリーズのオマケ程度だとしても。ただ、今回は『ウルトラマン』の複数話の結合だから、映画全体の作劇の構造がどうしても、短編の詰め合わせのようになってしまう。一応、全部の話は繋がってはいるけれども、それぞれの話が本来独立性を持っているもんだから、盛り上がりとかのバランスがイマイチつかめないように感じてしまいました。『シン・ウルトラマン』における、最大の不満点はそこですね。元の全39話にあったそれぞれに質が違う「面白さ」が、あまり現れていませんでした。

 


元にある「オリジナル」要素への手の加え方も、良いところと悪いところと、半々でした。やっぱり、一部の敵が「使途」っぽくなるのは、ちょっと……。成田亨氏のデザインに敬意を払うってんなら、彼がデザインした怪獣や宇宙人たちのデザインの「良いところ」も、しっかり踏襲して欲しかったと思います。パゴスーーネロンガーーガボラっていう、繋がりは持ってきたし、『ウルトラマン』放映時の周縁文化は取り入れているのに、着ぐるみの造形踏襲はしないんだな、とか、その手の加え方に、イマイチ一貫性を感じることができなくて、ちょっとモヤモヤさせられました。自分が好きなものを選択的に取り入れ、あくまで個人的な回顧で再解釈するって……それを「作家性」と呼んで良いのやら、ってのは正直な感想でした。

 

 

 

ただ、そういう不満があるからって、「面白くない」映画ってわけではないです。

確かにやだみや歪みはありますが、『大怪獣のあとしまつ』なんかと――比べるのがそもそも失礼かもしれませんが、それに比べれば、遥かに面白い作品でした。

 

あと、『シン・ウルトラマン』独自? の魅力ってのも確かにあって、

 

これを見返した後、オリジナルの『ウルトラマン』全39話が見返したくなるということです。

 


別に回顧主義でもなんでもなくて、『ウルトラマン』あっての『シン・ウルトラマン』。

これまでのウルトラシリーズとはまた違った方向性の、「亜流」として、本道の『ウルトラマン』と並行して楽しむのが良いと思います。

 

たぶん、作り手もそういう考えで作っていると思いますよ。

だって、本編でも言ってましたから。「マルチバース」ってね。

 

結論として、『シン・ウルトラマン』は、『シン・ゴジラ』ほど熱狂しなかったし、個人的に期待していたものとは少し毛色が違ったけれど、それでも面白い作品でした。

 

「そういうのもありだよね」っていう気持ちで見ると、良いかもしれません。

 

そして、「そういうのもありだよね」っていう気持ちは、

 

庵野秀明氏の『帰ってきたウルトラマン マットアロー1号発進命令』から、変わっていないのかもしれません。

 

 

ということで、ネタバレなしで3回にわたってお送りしました。

ネタバレありの詳細な感想については、書くかどうか迷っております。書こうと思ったら、もう何回か、繰り返し見ないと駄目そうだし。

 

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。