以下は、2021年に当ブログで書いた「尖閣問題の解決策を探る」で扱った「国益」についての追加の議論である。
「尖閣問題の解決策を探る」は、文字通り尖閣問題をどのように解決したらよいのかを考えるものであった。ビジネスなどの領域で使われている問題解決の手法にしたがって尖閣問題解決の目的、目標を整理し、論理的に導き出される可能な解決策の選択肢の中で最適な選択を行うことを目指した。その際に尖閣問題解決の目標として「国益の最大化」を挙げた。国益を最大化させうるような解決策が最も好ましいという考えであった。その際に2013年に発表された「国家安全保障戦略」に記された国益の定義を使用した。
しかし、この「国家安全保障戦略」は2022年12月16日に改定された。そして国益の定義も改定された。これにより、この「尖閣問題の解決策」も改定しなければならなくなった。が、その前に、そもそも国益の定義はどのように変更されたのか、それはどういう意味があるのかと言ったことを考えておきたい。
まず2013年版と2022年版の国益定義を見ておこう。
2013年版では国益が以下のように定義されていた。
「我が国の国益とは、まず、我が国自身の主権・独立を維持し、領域を保全し、我が国国民の生命・身体・財産の安全を確保することであり、豊かな文化と伝統を継承しつつ、自由と民主主義を基調とする我が国の平和と安全を維持し、その存立を全うすることである。また、経済発展を通じて我が国と我が国国民の更なる繁栄を実現し、我が国の平和と安全をより強固なものとすることである。そのためには、海洋国家として、特にアジア太平洋地域において、自由な交易と競争を通じて経済発展を実現する自由貿易体制を強化し、安定性及び透明性が高く、見通しがつきやすい国際環境を実現していくことが不可欠である。さらに、自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配といった普遍的価値やルールに基づく国際秩序を維持・擁護することも、同様に我が国にとっての国益である。」
2013年12月17日閣議決定「国家安全保障戦略について」
これが2022年版では以下のように変わった。
「我が国が守り、発展させるべき国益を以下に示す。
1 我が国の主権と独立を維持し、領域を保全し、国民の生命・身体・財産の安全を確保する。そして、我が国の豊かな文化と伝統を継承しつつ、自由と民主主義を基調とする我が国の平和と安全を維持し、その存立を全うする。また、我が国と国民は、世界で尊敬され、好意的に受け入れられる国家・国民であり続ける。
2 経済成長を通じて我が国と国民の更なる繁栄を実現する。そのことにより、我が国の平和と安全をより強固なものとする。そして、我が国の経済的な繁栄を主体的に達成しつつ、開かれ安定した国際経済秩序を維持・強化し、我が国と他国が共存共栄できる国際的な環境を実現する。
3 自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配といった普遍的価値や国際法に基づく国際秩序を維持・擁護する。特に、我が国が位置するインド太平洋地域において、自由で開かれた国際秩序を維持・発展させる。」
2022年12月16日閣議決定「国家安全保障戦略について」