4-4 まとめ | 中国について調べたことを書いています

中国について調べたことを書いています

1.中国広東省の深セン経済特区の成立過程
2.香港・六七暴動
3.農業生産責任制と一人っ子政策
4.浦東新区から雄安新区へ
5.尖閣問題の解決策を探る
6,台湾は国家か

(4)まとめ

ハーゼルの主張は「台湾はアメリカ軍事占領下にあるから国家として成立しない」「亡命政府だから国家として成立しない」の2点に集約される。そして、これらはやはり説得力に欠けると言わざるを得ない。

 

アメリカの言いなりになっている現在の政府を揶揄して「傀儡政権だ」と言うのなら、それは文章表現としては有効だと思う。また、できもしない「大陸反攻」を唱え続け、外モンゴルも含めた中国大陸を自らの領土だと主張し続ける政権を「亡命政権だ」と嘲るのも、レトリックとしては可能だと思う。しかし、それを現実のものとごっちゃにしてはいけない。

 

そもそも現実の国際政治の状況を考えると、彼の考え方によれば、1945年から1970年代までの多くの国が台湾の中華民国を国家として承認していた時代も、台湾(つまり中華民国)は国家ではなかったということになる。国家として成立していなかった政治実体を世界各国が承認し、国際連合にも加盟させていたという矛盾した状況が続いていたことになる。これもおかしな話である。

 

ハーゼルは1951年にアメリカで生まれた。1975年から台湾で中国語を学び、日本留学を経て台湾人と結婚している。このころの台湾は蒋介石がなくなり、蒋経国が総統を務めた国民党政権の時代であり、戒厳令下にあった。まだ外省人と本省人の対立が激しかった時期である。彼が「アメリカの軍事占領下にあるから国家は成立しない」「亡命政府だから国家として成立しない」という主張をするようになったのは2000年ごろのようである。しかし、こうした主張の基礎になっているのは、彼が台湾に来た当時の本省人と外省人の対立という認識なのではないか。

 

確かに、外省人と本省人の間に様々な矛盾があった。また、台湾の政権はアメリカの傀儡政権だとか、亡命政権であり台湾を統治する権利がないといった主張は、現状に不満を持っている人々には、現在でも心情的には受け入れやすいものなのかもしれない。

 

ただ、第二次大戦が終わり、中華民国が台湾に移ってからすでに70年以上が経過している。国民党から民進党への政権交代が実現し、「天然独」(生まれた時から台湾はすでに独立している状態で育った人々)と言われる人々が存在する現在、台湾の政治や社会の問題を単純な二項対立でとらえる時代は既に過去のものになりつつあるのではないだろうか。