5章 創設的効果説か、宣言的効果説か
5章では、台湾が国家であるかを判断するのにカギとなる国家承認の問題をもう少し考えてみよう。
先にも述べた通り、他国の国家承認を国家成立の要件にするかどうかで、2つの立場がある。1つめは国家承認を要件とする創設的効果説であり、2つめは要件としないとする宣言的効果説である。このどちらを採用するのがいいのだろうか。これを検討してみたい。
まず、最初に2つの説を対比する形でまとめてみた。この表を説明する形で、双方の説を概説した後、どう考えたらいいのかを考えてゆきたい。
創設的効果説 |
宣言的効果説 |
他国の承認は必要 |
他国の承認は不要 |
承認によって国家が創設される。承認がなければ国際法上の主体(=国家)になれない。 狭義で厳格。 |
承認は宣言にすぎない。承認がなくても国家として成立。 広義で寛大。 |
制度主義 形式主義 ルール重視 |
事実主義 実効支配重視 |
政治学的立場 |
法学的立場 |
承認前は国際法上の権利義務を有しない。 承認は法的な義務ではなく、政治的に任意である。 |
国家は事実上存在すれば国際法上の拘束を受ける。このことは他国の意思や行為とは無関係。 |
19世紀以前の欧米、帝国主義、権威主義的な考え方になじみやすい。 分離独立の場合、旧本国(法的親国)の考えになじみやすい。 |
民族自決、植民地独立といった考え方になじみやすい。 |
出所:小島憲正(1974)「国際法上の承認 その1」日本体育大学紀要4号、山本草二(1994)「国際法」などを参考にして筆者作成