名古屋市美術館へ行ってきました。
お題は、テート・ギャラリー(現在はテート美術館)所蔵『ターナー展』(1997年)。
名古屋はあんまり入りが良くないと言われてる割に、結構な人でした。

さて、そのターナーですが、以前、近代美術展かなんかを観に行ったときに、嵐に翻弄される船を描いた絵が印象に残ってたのと、例のここまでやるか、みたいな水彩画の大家という月並みなイメージしか持っていなかったのですが、こうして年代を追って観てみると意外に面白かったです。


ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー
《吹雪―港の沖合の浅瀬で信号を発しながら、測鉛で水深を測りつつ進む蒸気船。作者はエアリアル号がハリッジを出港した夜、この嵐のただ中にあった》(参考作品)
1842年発表 91.4×121.9
テート美術館
風景写真 レンズ10


ターナーって人は才気煥発な人で、自分のアイディアに入れこんじゃう人だったのか、ちょっと子どもっぽいところがあった人なのは確かなんだけれど、長い画家人生の中で何度も新しい試みをしてるんですよね。それも結構すごい時間をかけて。
で、「うおーっ! これはいいぜ。どうだ! わはは」と発表するんだけれど、誰もいいって言わないの。パトロンさえも言わなくて、しぶしぶ絵を買ってくれるありさまで、「あれ、やめたほうがいいんじゃない?」なんて言われてね。
それでちょっとがっかりして、またいつもの絵を描くと、みんなが「うおーっ! これはいいぜ。さすがターナーさんだよなー」なんて言って……また売れるわけ。
で、これで懲りたかなーと思ってると、またなんか始めてさ、「うおーっ! 今度はいいぜ。どうだ! わはは」と発表するんだけれど、また誰もいいって言わないの。
そんなことを何回も繰り返してる人だったようです。


ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー
《ルツェルン湖ーブルンネンから見たウーリの港》
紙に水彩、鉛筆、ペン、インク
1843年(?) 24.8×34.6
テート美術館


ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー
《ルツェルン湖から見たブルンネン》
紙に水彩、グワッシュ、鉛筆
1843-45年頃 24.2×29.6
テート美術館


ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー
《ピラトゥス山の見えるルツェルン》
紙に水彩、グワッシュ、ペン、インク
1844年頃 24.1×29.8
テート美術館


その当時ターナーが「うおーっ! これはいいぜ。どうだ! わはは」と思った絵は、今のぼくらが観ると納得するし、すごいなーと思うわけ。
水彩画の技法をここまで高めたのはもちろん、この人の一番すごいのは、現代で言うところのテクニカル・イラストレーションの手法をすでに完成させているところだと思います。
そこから発展して、色の三原色から現代の印刷では当たり前のCMYKという色の要素を、あの当時すでに実践していた節が見受けられます。

この人は早くから世に認められてパトロンも多かったので、他の画家に比べたらまったく日の当たる場所を歩いているんですね。
でも、この人はそれ自体無頓着だったのではないのかな? 完全プラス思考というか、前向きな人だったのだと思います。


『ターナー展』
◆1997年10月18日(土)-12月14日(日)
 名古屋市美術館
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名古屋市美術館 →
(名古屋市中区栄2-17-25 白川公園内)

テート美術館 →

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【テート美術館 : ウィリアム・ターナーの展示室】


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