名古屋市美術館
『モネ「印象 日の出」展』(2008-09年)



クマ太郎でござんすくま

名古屋市美術館に『モネ「印象 日の出」展』を観に行ってきました。
「印象派」と呼ばれる発端となったモネの一枚の絵を中心に、印象派がどのようにして誕生したのか、どのように発展し、分岐していったのかを検証しようとする試みです。

今回の展覧会は決して展示数が多くはなく、ボリュームの点では不満がおありの方もいるかも知れませんが、展示の仕方に多くの工夫があり、全体として満足感のある展示となったと、オイラは感じました。
展示数が少ない分、詳細な時代背景や画家のプロフィールをパネルで展示する。
しかも色彩・文字の大きさに工夫を凝らして、入場者に優しいデザインを心がけたために、むしろ展覧会の空気に「余白」ができたように思います。
入場者が醸し出す空気も、いつもの展覧会よりも優しく感じたのは、オイラだけでしょうか……


クロード・モネ
《サン=タドレスの断崖》
キャンバスに油彩 1867年 54×79
松岡美術館

モネはこの一枚、《サン=タドレスの断崖》です。
ピサロの、RGBみたいな光彩と人間の遠近感も好きですが、モネのこの一枚は視覚という脳のひとつの出先器官をコントロールする術を身に付けたものではないでしょうか。
ほら、昔、流行った立体視点法だっけ? 絵本を眺める時に、ある決められた方法で視点を合わせると、ノイズのようなパターンから絵や文字が立体で浮き上がってくるという……覚えてますか?

そうした発想の転換というか、「視点の転換」を使い、モネは色彩や光を観察する時に新しい視点を見つけたのではないでしょうか。それまでにない方法論で……
その完成した形が、これら一連の作品に表れたのではないでしょうか。


ベルト・モリゾ
《テラスにて》
キャンバスに油彩 1874年 45×54
東京富士美術館

さて。今回の、オイラのイチ押しです。
ベルト・モリゾの《テラスにて》。
写真では判りづらいかも知れませんが、彼女の「印象」は他の誰とも違います。
なんとも表現しにくいのですが、これこそモネの方法を拡張した、オリジナルな「印象表現」だと思います。

彼女の死の翌年には、回顧展が開かれたとのこと。
うなずける話だと思います。
ファイニンガーのように、ベルト・モリゾの回顧展もまた、名古屋で観られる日がくるといいのに……


『モネ「印象 日の出」展』
◆2008年12月23日(火・祝)-2009年2月8日(日)
 名古屋市美術館
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(名古屋のみでの開催です)


名古屋市美術館 →
(名古屋市中区栄2-17-25 白川公園内)

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