『新世紀エヴァンゲリオン』(『エヴァ』):心理学的分析 | 海外の日本アニメについて

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鬱状態の探求

私がアニメを見始めた頃、ある人から「考えさせられるものが欲しいなら『新世紀エヴァンゲリオン』を見てみると良い」と言われました。
『エヴァ』を見ていない人の多くは、大破局後の世界を描いた、ただのSFアニメで、中身は、メカに乗ったヒーローがモンスターと戦うだけだろうと思っているかもしれません。
『エヴァ』を見たことのある人なら、それが的外れもいいところであることを知っています。

『新世紀エヴァンゲリオン』は、鬱屈したティーンが世界を救う使命を担ったときに起こる物語です。
物語中、シンジは人類を脅かすさまざまな脅威と対峙しますが、結局、最大の敵は自分の弱さなのです。

これは『エヴァ』のほとんどの登場人物に見られることで、使徒との戦いにおいて、解決する以上の問題を引き起こしている可能性があるということです。
おそらく、クリエイターの庵野 秀明(あんの ひであき)氏は自身の心理的な問題を解決するために『エヴァ』のキャラクターを利用したと思われます。

各キャラクターは少なくとも1つの大きな精神的問題を抱えているように見えますが、ほとんどの場合、それより多いです。その結果、視聴者自身に自己の行動や精神状態を問いただすような作品になっているのです。
これらのキャラクターから学ぶことはかなり多いので、それに取りかかりましょう。
しかし、読み進める前に知ってほしい事は、私はこの記事をオリジナル版(1995年)と『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』(1997年)に限定することに決めたので、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』(2007年~)のコンテンツには期待しないで下さい。

 

碇 シンジ(いかり シンジ)



「悲しみ、涙もろさ、虚無感、絶望感、セックスや趣味、スポーツなど通常の活動のほとんど、またはすべての興味や楽しみがなくなる、不眠や寝すぎなどの睡眠障害、疲れやすくエネルギー不足で小さな作業にも余計な労力がかかる、不安、焦燥、落ち着かない、価値のなさや罪悪感、過去の失敗や自責に執着する。」
これが、メイヨークリニック(アメリカ合衆国ミネソタ州ロチェスター市に本部を置く総合病院)によれば、大鬱病性障害の症状です。この定義された症状は、碇 シンジの性格を説明するものにもなります。

エヴァのパイロットはきつくて酷い仕事だし、その仕事が嫌だったり、残念に思ったり、恐怖を感じたりすれば、鬱になるのは極めて簡単です。さらに、シンジは父親の過酷な仕打ちと母親が目の前で死んだというトラウマがあり、それが鬱病の原因になることもあります。
シンジは人と対立する事が極端に嫌いで、それを親しい上司である赤木リツコは「ハリネズミのジレンマ」と表現しています。人を傷つけたり、傷つけられたりすることを恐れて、あまり人に近づけないのです。愛を渇望しながらも、どうしても愛を拒んでしまうシンジのような人間には、特に厳しいものでしょう。

シンジの心の悩みをひとつに絞るとすれば、苦悩する事を極力避けている事になるでしょう。彼は、(人を傷つけたくないし、自分も傷つきたくないので)人付き合い自体しません。彼は、人にやれと言われたことだけをやります。時には、自分にとっての苦悩の種から逃げ出すことさえあります。
最期、シンジは人類を元に戻すか、完全な統合状態にとどまるかの選択を迫られます。彼は、物語を通して何度も学んだ教訓を思い出し、私たちが知っている世界に戻ることを選択します。生きることは苦悩を経験することです。苦悩なくして良き人生はありえない。それが、『新世紀エヴァンゲリオン』の最も重要な教訓だと、私は考えています。

 

綾波 レイ(あやなみ レイ)



シンジが恐怖心から人付き合いを避けるのに対して、レイは単にどう行動していいかわからないから人付き合いを避けます。レイは統合失調症の症状の多くを示しています。異常なまでの無口さ、希薄な幸福感(あるいは強い感情が乏しい)、そして最も顕著なのは、社会性の欠如です。それが私たちのレイです。

ファースト・チルドレンは、社会性の欠如などの外面的問題だけでなく、内面でも葛藤しています。作品を通して、彼女は自分が何者なのか、目的は何なのかを自問自答しています。このような実存性に関する問いはどこから来ているのでしょうか?
おそらくそれは、彼女が、初号機に取り込まれ肉体が消滅したシンジの母親から、生まれ変わった人類初のクローンではあるけど、それは完全ではなく失敗クローンであり、自分の代わりとなる同じクローンが培養タンクに無数用意されているという事実からでしょう。
これは、理解するには、あまりにも大変であり、レイが自分のアイデンティティについて多くの混乱を抱えているのも、無理が無いものと思われます。

また、レイの性格で特筆すべきは、その心です。シンジのハリネズミのジレンマと同様に、レイの統合失調症的人格障害は、彼女が人類に対して非常に大きな愛を持っているため(おそらく彼女が人類を創造したため)、彼女に特に辛い思いをさせます。
レイと碇 ゲンドウとの関係は重要です。彼は作品を通して彼女を利用しますが、彼女は完全に彼の意のままに従います。なぜならレイが切望する愛をゲンドウが見せるからです。最終的にレイはゲンドウを捨て、自分を破滅させても、シンジが人類を救うのを助けることを決意します。
レイは、都合がいいからと言う理由で誰かを愛するのではなく、自分が愛したいと思う人を愛するべきだということを教えてくれます。

 

惣流・アスカ・ラングレー(そうりゅう アスカ ラングレー)



シンジが受けた父親からの精神的虐待やレイの文字通りの死にもかかわらず、アスカは主要トリオの中で最もキツイ人生を送ってきたかもしれません。母親は仕事中毒で精神がおかしくなり、父親は詐欺師でした。そして何より衝撃的だったのは、アスカの母親が1体の人形をアスカだと思って扱っていたことです。
アスカの母親は、自殺する直前までアスカのことを認識できませんでした。幼いころの自己に対する絶対的な無価値感が、我々の知っている今のアスカを作り上げました。

アスカはよくシンジと比較されます。どちらも親の環境が悪く、どちらもそれが要因で自己に無価値感を抱くようになったからです。シンジは自分が無価値であることを受け入れています。一方、アスカは、「自分はダメな人間じゃないんだ」という確信を必要としています。
アスカは、自分が一番でなければならないし、褒められなければならないと考えます。この事が災いしたのか、アスカは、シンジに訓練で抜かれた途端、おかしくなってしまいます。また、本人は決して認めませんが、アスカは愛という安心感も求めています。
アスカが、イジメにも見えるほどシンジに突っかかるのは、実はかまって欲しいからなのです。そしてアスカはレイが嫌いです。なぜなら、レイがまるで「お人形さん」のように振舞うからです。

アスカをナルシストと決めつける人が多いですが、そうとは言い切れません。自己愛性パーソナリティ障害の人は、純粋に自分が凄いと思っていて、他人のことなど気にしていません。
演技性パーソナリティ障害(HPD:他者の気を引くために演技のような言動を過剰にとること)の人は、自分が思っている低い自己価値を高めるために、他人から「凄い」と思われる必要があるのです。
アスカの場合は、このHPDの方がより正確に彼女を表現していると思います。付け加えると、HPDの人は、注目を集めるために不適切な性行為をすることも知られており、まさに皆様の好きなツンデレといったところでしょうか。
他人の意見で自分の価値を決めるのは不健康な生き方であり、惣流・アスカ・ラングレーが作品内で見せる栄枯盛衰が、その事を見事に証明しています。

 

 

鈴原 トウジ(すずはら トウジ)



機能不全の家庭環境とは、その家庭の子供たちに生涯にわたって悪影響を及ぼすような家庭環境のことです。子供の家庭環境は、後の様々な経験に対する見方や反応に大きく影響し、親が不在であったり親に虐待を受けたりすると、子供は精神的あるいは感情的に大きな影響を受けることがあります。
それはシンジやアスカに顕著に見られますが、おそらくフォースチルドレンにとってはそれ以上でしょう。鈴原 トウジは、他のエヴァパイロットと同様、科学的実験で失われた母を持つ息子です。父親は仕事中毒人間で、妹はシンジとサキエルの戦いで負った傷のせいで入院しています。
妹の面倒を見ることができるのはトウジだけで、その為いつも一人で、孤独と苛立ちを感じています。

家庭環境が機能不全に陥ると、子供が怒りっぽくなったり、暴力的になったりするケースは少なくありません。トウジは、シンジがエヴァのパイロットで、意図的では無いにしても、妹の怪我の原因かもしれないと知ったときに腹を立て、彼を殴りました。
これは理不尽で良くないことのように思えますが、実際には、欲求不満が溜まっているティーンエイジャーにとっては、まったく当然のことなのです。他人がそれまでどんな人生を歩んできたかは、人には決してわからないという事を知っておくことが重要です。やがて、トウジとシンジは友達になり、トウジの気分も改善されていきます。

もうひとつの興味深い精神的葛藤は、物語の後半で、トウジがシンジと同じエヴァのパイロットになることを初めて知ったときに起こります。前のエピソードでは、トウジはシンジの人生に光を与えてくれる良い友人でした。しかし突然、トウジは無口で暗くなります。
それは、かつて嫌いだったエヴァのパイロットに自分がなることへの罪悪感と徴用され戦闘に向かう事になる恐怖に打ちひしがれたからです。
その後、彼のエヴァは使徒に乗っ取られ、トウジは戦場で体の一部を失う不具者になってしまいます。このようにトウジの人生は、子供にとって決して経験してはいけないトラウマ的な状況を繰り返し経験してしまい、彼に永久に影響を受け続けています。

 

 

渚 カヲル(なぎさ カヲル)



元第1使徒アダムであるカヲルは、研究所で作られた高等生物という点ではレイと似ています。彼のキャラクターには、普通の人間のような葛藤がまだたくさんあって分析する価値があります。実は、カヲルの持つ最も大きな普通の人間としての葛藤は、カヲルが普通の人間でないことに根ざしています。

アイデンティティ・クライシスとは、個人の人生において、自己意識や目的意識に疑問を抱く時期のことです。カヲルは、謎の多い組織ゼーレからフィフスチルドレンに選ばれ、アダムの遺体と接触して使徒を誕生させるためのスパイとして送り込まれます。
カヲルは、自分が裏切られていること、任務を完了すれば使徒を救うことにはなるが、代わりに人類が犠牲になることを知り、長い時間をかけて醸成されてきたアイデンティティの危機に陥ります。本当の所、自分は人間なのか、それとも使徒なのか?
普通の人が経験するようなアイデンティティの危機ではありませんが、特務機関ネルフへの加入という劇的な環境の変化が引き金となり、カヲルは自分の存在意義と同じくらい深く、自分の目的を自問することになるという点では、現実的です。

結局、カヲルは人類を選び、シンジに自分を殺してくれと頼みます。『エヴァ』は精神衛生をテーマにした作品であるため、これは常に存在する自殺というトピックへの言及なのかもしれません。カヲルは、自分の死がようやくコントロールできるものになったから、シンジに自分を殺してほしいと言ったのです。
コントロールできない感覚を常に感じている状態、つまり脱人格化は、しばしば鬱病やその後の自殺につながることがあります。カヲルは1話しか登場しないにもかかわらず、メンタルヘルスのいくつかの重要なトピックを反映しています。

 

 

葛城 ミサト(かつらぎ ミサト)



ミサトは、楽しくて気立てのいい、クールなおばさんタイプです。他の人と同じような、精神的な問題を長い間抱えているわけがないでしょう、と誰もが思います。そうではありません。精神的な問題を抱える人の多くは、外見的に楽観的で楽しいことを見せることでそれを隠しているのです。
ミサトは本当におっちょこちょいで楽しいですが、自分を恥ずかしい存在としか見ていません。彼女は作品全体を通して、自分自身を幼稚で無責任な存在だと非難しています。特に、彼女の保護下にあるシンジとアスカを危険にさらすことを余儀なくされたときに、それが顕著に表れます。
彼女は自分の問題に対処するために、ドラッグ(酒)とセックスに目を向けてるように見えます。

ミサトは愛着障害、俗に言う「daddy issues(父親の愛情を十分に受けずに大人になったため、男性に父親像を求める女性に対して使われる)」を持っています。愛着障害は、親と健全な関係を築けなかった男女が、一般的に健全な人間関係を築くのに苦労することで発症します。
ミサトの愛着障害は、最愛の父を、まずは仕事が奪い、そして次に使徒が彼の命を奪ったことが引き金となりました。

ミサトは、シンジ、アスカ、リツコ、その他の人々に対して、しばしば間違ったことを言い、そのせいで彼らが困っているときに慰めることができないでいます。特に、恋人であった加持 リョウジとの関係は、彼女の障害を最も顕著に表しています。
ミサトは事あるごとに加持を自分の父親と比較し、結局それが原因で別れることになります。ミサトは、ある時は、加持のことをひどい奴で一緒にいたくないと罵り、またある時は、加持のことを誰よりも愛し、他の女に奪われてしまうことを恐れています。
この二極化の心理状態は、愛着障害によく見られる兆候です。

 

 

赤木 リツコ(あかぎ リツコ)



リツコはミサトのおっちょこちょいな性格とは真逆の、賢くて真面目な性格で、外向的な面と内向的な面の両方の心の中を見ることができます。物静かで勉強熱心なタイプによくある悩みに「hyperfixation(行き過ぎた執着心)」があります。これは、あるテーマに対する興味が強すぎるあまりに、有害な強迫観念になってしまうことです。
リツコは、仕事への過度な執着が原因で社会生活に支障をきたしていますが、これは修正可能であり、それほど不健全というほどではありません。

より不健全なのは、人への執着です。リツコがゲンドウに抱くのが、まさにこれに当たります。リツコは強く、責任感のある女性であり、それだけに、ゲンドウへの執着により、彼女が次々と誤った決断を下すのを見るのは苦痛でしかありません。
リツコは、ゲンドウと一緒にいる時間が長いというだけで、子供のレイに嫉妬するようになります。物語の終盤、リツコはゲンドウに銃を突きつける状況になりますが、(彼への執着が原因で)ゲンドウに不意をつかれ、そのまま殺されてしまいます(ああ、そうなるよね)。

hyperfixationは、薬物使用と似たような症状が多く、自分が中毒になっていることが嫌になる時もある事も同じです。リツコは、ゲンドウに頼まれたことを、ずっと自分を憎みながら、やり続けています。リツコは母親を軽蔑していました。母親もまた、ゲンドウに執着する仕事人間だったからで、それが自己嫌悪に拍車をかけています。
リツコは明るい少女でしたが、hyperfixationの危険性のおかげで、最期はどうしようもない混乱状態に陥ってしまいました。

 

 

加持 リョウジ(かじ リョウジ)



現実逃避は、『エヴァ』で繰り返し登場するテーマであり、このリストに登場するほぼすべてのキャラクターが何らかの形で現実逃避を行っています。国際的な謎の男、加持 リョウジは、他の人物よりも少し逃避的です。現実逃避とは、現実を直視するよりも、何か別の楽しいことに心を奪われることです。
加持は仕事よりも、よく女性といちゃつく姿を見かけます。セックスはよくある逃避の形です。もっとユニークなのは、加持はガーデニングが好きで、ストレスの多い場面においてすら、庭いじりに美とシンプルさを見出しています。

加持は、自分のアイデンティティに悩むという点で、カヲルと共通するところがあります。この問題は、思春期に限ったものではありません。加持は政府に雇われており、ネルフとゼーレ両方のスパイをする任務を負っているため、三重スパイになっています。
これがアイデンティティを混乱させないのであれば、一体何が混乱させるのか、教えて欲しいものです。物語が進むにつれて、加持はどちらの側に付けば、より悪が少ないかを判断するために身を張っているのがわかります。

加持は、基本、良い人でいつもニコニコしているにもかかわらず、当初は作品内で悲しく孤独な役割を演じています。三重スパイとして、加持は事実上すべての登場人物の秘密を知っており、確かに『エヴァ』は暗い秘密でいっぱいです。残念なことに、加持には、これらの暗い面について相談する相手がいないのです。
ネルフやゼーレでは誰も加持を信用せず、逆に彼もまた誰も信用できず、彼は、身動き取れず、ストレスを溜め込み、逃げ出したくなるのも頷けます。幸いなことに、彼とミサトは最終的に、それぞれの問題を解決するため、お互い支え合うようになります。
現実逃避よりも、誰かと一緒に現実を直視する方がずっと健全なのです。

 

 

碇 ゲンドウ(いかり ゲンドウ)



「他人の権利を無視したり侵害したりする、善悪の区別がつかない、反省や共感を表さない、よく嘘をつく、他人を操作して傷つける、法律に関する問題を何度も起こす、安全や責任に対する一般的な無視、定期的に怒りや傲慢さを表現する。」
これらはHealthline(アメリカ合衆国サンフランシスコに本拠地がある健康情報に関するプロバイダー)によれば、サイコパスの症状です。シンジが典型的な鬱病であるように、彼の父親も典型的なサイコパスです。

多くのサイコパスがそうであるように、ゲンドウは天才です。残念なことに、彼の知性は、攻撃的で人を信用しない性格のおかげで、しばしば問題を解決するよりも多くの問題を引き起こしてしまいます。ゲンドウにとって、自身は世界の救世主であり、他の人間は救済のための道具に過ぎません。
そして、彼はこれらの道具に多くを期待し、道具がその役割を果たせなかった時には大いに失望します。このことが、彼がシンジに大きな失望感を抱いている事に繋がります。

『エヴァ』では、すべての登場人物の心理に愛と孤独が入り込んでいるように見えます。ネルフの冷酷な司令官も例外ではありませんでした。
自分の妻がエヴァ初号機に取り込まれ肉体が消滅した後、彼は再び彼女と一緒になりたいという強迫観念に駆られます。皮肉なことに、ゲンドウの孤独は、それを失くそうとした事が、かえってそれを悪化させてしまいました。
もし彼がユイと再び一緒になるために、あのような極端な手段をとらなかったら、もしかしたら息子や同僚たちとまだ仲良くやっていられたかもしれません。

 

 

キール・ローレンツ



ローレンツは、このリストの他のキャラクターほどアニメに登場しませんし、注目を集めるキャラクターではありませんが、ゼーレという組織を代表する存在であるため、非常に重要なキャラクターです。
ゼーレはネルフを監督する謎の組織で、彼らの計画「人類補完計画」を完成させるためには、いかなる手段も選びません。人類補完計画はサードインパクトを引き起こし、地球を破壊して全人類を抹消した後に、一つの完全な存在として統合するものです。
ローレンツは、人類補完計画に参加するために、自分自身を機械化し強化することで生き延びてきました。彼は、一つの完璧な世界という概念に取り憑かれ、そのビジョンを全世界に押し付けようとする傲慢な性格の持ち主です。

ローレンツはキャラクターというよりも理念であり、シンジの成長と対立する信念、つまり痛みのない人生だけが生きる価値があるという信念を表しています。彼の性格については、推定できることがあります。おそらく過去に苦痛に苦しんだ経験があり、それが引き金となって完璧な世界を求めるようになったと思われます。
あるいは、疎外感の問題も考えられます。人類補完計画は、社会から疎外されたり、断絶されたりしていると感じている人たちを救う計画でもあるので、ローレンツの過去にもそういった問題があったのかもしれません。

アスカはナルシストではないと既に判断しました。彼女は自信があるわけではなく、単にそのように振る舞っているだけだからです。むしろローレンツこそ、自己愛性パーソナリティ障害(NPD)の例として、より適切でしょう。
彼はNPDによくある神コンプレックスを持っていて、自分は何が正しいかについて知っていると常に信じているのです。ナルシストには社会的スキルが欠けており、ローレンツが人類補完計画に執着するのを助長してる可能性があります。
ローレンツはナルシストであり、これはフィクションでは珍しいことではありません。ナルシシズムの持つ圧倒的な自信は、メディアにおける敵役によく見られる特徴です。

 

 

『新世紀エヴァンゲリオン』から得るもの



架空の人物たちの気の毒な苦しみを通して、庵野氏は、私たちは皆、痛みや不安を経験しているのだと気づかせてくれます。だからこそ、安全で愛されていると感じられる人生の瞬間に感謝するのです。もし、人生が完璧だったとしたら、美しい瞬間や喜びが、どんな意味を持つというのでしょう?
また、もし、愛がいつも簡単に手に入るものだったとしたら、犠牲も献身も無くなり、私たちの関係には何の意味も無くなるでしょう。

上記の各キャラクターには、愛や人との繋がりというテーマが存在します。物語において、人類補完計画の戦いが始まると、各キャラクターの人間関係に対する独自の哲学が見えてきます。
完璧な繋がりというものは、本当に超自然的な手段でしか作れないのでしょうか? 人間関係には、お互いある程度の距離があった方がいいのでしょうか? 愛というものに価値を与えるものは何なのでしょうか?

シンジの主な結論は、常に一体であるという事は、一体である事からすべての意味を取り除くので、人類補完計画は間違っているということでした。普通の現実世界では、私たちは一体化しています。私たちは皆、必死に生きているという事実で一体化されているのです。

ここまでスクロールしてくださった方、読んでくださってありがとうございます。これらの心理的に複雑なキャラクターについて、私と同じように興味深く学んでいただけたなら幸いです。
もし、あなたが自分の精神的な健康について悩んでいると感じたら、それは恥ずべきことではありません。それはよくあることです。もし、誰かに助けを求めたり、慰めを求めたりすれば、きっとそうして良かったと後で思えるはずなので、是非そうして下さい。
ゲンドウにならないように。

 

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引用元:『新世紀エヴァンゲリオン』(『エヴァ』):心理学的分析