高校生の日常系アニメといえば部活動が欠かせませんが、その描写はどこまで現実を反映しているのでしょうか?
日本の中学・高校を舞台にしたアニメは枚挙にいとまがないほどたくさんあります。この舞台でよく使われるのが、学校の部活動です。
『フルーツバスケット』『Free!』『かぐや様は告らせたい』などの人気作品は、学校の部活が中心となっているか、部活に関わる何らかの重要なプロットを持っています。
アニメでは、文学、超常現象、ボードゲーム、サイクリング、ゾンビ黙示録を生き抜くなど、あらゆるジャンルの部活動が存在するようです。
日本の中学・高校生活で欠かせないのが「bukatsu」部活です。部活では、友達を作り、大人になってからも使えるスキルを身につけることができます。
新入生は学年の始めにどこかの部に入ることを勧められ、学校によっては入部が義務付けられているところもあります。
日本社会では忠誠心と一つの事を長く続ける事が重要であるため、学生は何かの部を選び、学業期間中ずっと選んだ部に所属することが強く推奨されているのです。
運動部と文化部の違い
日本の学校の部活動は、大きく運動部と文化部の2つに分けられます。運動部には、卓球や野球から、剣道や相撲などの武道まで、全てがそろっています。
『ハイキュー!!』の烏野高校バレーボール部や『ツルネ -風舞高校弓道部-』の風舞高校弓道部など、スポーツ系の部活動は練習時間が長く、地域大会や全国大会に出場することが多いです。
また、『黒子のバスケ』に登場するような超絶技巧は、さすがに現実には存在しないかもしれませんが、運動部員の中には、プロへのステップとして地域や全国の舞台で活躍することを目指している場合も、しばしば見受けられます。
文化部は、運動部以外の全てを網羅しており、演劇、日本の伝統的な文化活動の茶道、華道や、舞踊などがあります。
文化部は運動部よりもゆるい事が多いですが、中には運動部と同じように大会に向けて厳しいスケジュールをこなす文化部もあります。
『響け! ユーフォニアム』での北宇治高校吹奏楽部のメンバーは、学校での練習、地域のお祭りでの演奏、演奏力向上のための合宿キャンプを通して、全国大会の出場権を獲得し、他校と競争します。
現実に近いアニメの部活動としては、『CLANNAD』の演劇部、『TARI TARI』の合唱部、『けいおん!』の軽音部などが良く知られています。一方、『メガネブ!』のメガネ部のような珍しい部活動はあまり見かけませんし、『桜蘭高校ホスト部』のホスト部のような部活も現実には見かけません。
しかし、十分な機知があり、生徒会の承認さえ得られれば、ほとんどどんなクラブでも作ることができるようです。
全権を握る生徒会
学園モノのアニメに詳しい人なら、全知全能の如き生徒会とそのメンバーの存在を知っているはずです。アニメの生徒会組織は、『賭ケグルイ』の私立百花王学園(しりつひゃっかおうがくえん)の生徒会のように、学校と生徒全体に対して神のような権限を持っています。
しかし現実の日本の生徒会は、そこまで重要な役割を担ってはいません。
日本の多くの学校では、生徒会役員は朝の放送、文化祭や運動会などの行事の運営、修学旅行の企画などを担当します。また、生徒会はクラブ活動の申請に対して承認の是非を決めたり、それぞれの部活動費を決定したりすることができますが、アニメで描かれるような何百万円ものお金を配ることはできません。
また、生徒会の重要度は、それぞれの学校の文化によってかなり異なります。
先輩に認められることが大事
学校の部活動は、生徒達が互いに共通の関心事を持つ場であり、生徒が将来、生産的社会人として育つために極めて重要であると考えられています。学校の部活動における構造は、日本の社会、ビジネス、政治における基本的な階層構造、すなわち「senpai」先輩と「kouhai」後輩の関係を反映しています。
先輩(上級生)は後輩(下級生)に物事を教え、また面倒を見なければならないし、後輩は先輩を尊敬し、言われた事に従わなければなりません。新入生が部活を始めたときから、先輩と後輩は強い絆で結ばれているため、受験や卒業で先輩が部活から離れるときは、しばしば感傷的なイベントになります。
『フルーツバスケット』(2019)や『ハイキュー!!』などのアニメで、先輩と後輩の涙のお別れシーンは、ファンにとってはおなじみです。
アニメファンにとって好きな作品に登場するような部活は、現実にはないかも知れませんが、日本の学生にとって学校の部活動はまさに現実的なものです。彼らにとって部活動は、社会性を身につけ、技を磨き、社会で活躍できる人材になるための訓練の場なのです。
全国大会を目指して練習に明け暮れる厳しい部活もあれば、のんびりした部活もあるでしょう。いずれにせよ、学校の部活動は生徒の生活にとって重要な役割を果たします。アニメで描写される学校の部活動は、ドラマ的な効果や娯楽のために誇張されている面も多いですが、正しく伝えていることもたくさんあります。
現実の日本の学校生活は、変な部がなくても、強すぎる生徒会がなくても、十分にドラマチックになりえるものなのです。