※ 思いつくままに綴っていくので、時系列はバラバラです。
母は保険の外交員をしていた。
本人いわく、成績は優秀だったらしい。
そんな母には絶えず愛人がいた。
誤解がないように言うと、枕営業をして契約を取っていた訳ではないと思う。仕事でいくうち親密になり、そのまま愛人に発展したんではないかと思う。だって母は、愛人と会う時とても楽しそうだったから。そこに利害関係は存在していなかったと思う。
中学生になったある日、夕方部活が終わって帰ると、家の前に大きな黒塗りの車が停まっていた。
「またか」とウンザリした気分でそっと玄関に入る。ただいまは言わない。なぜなら客と母に水をさすといけないから。
居間からは母の媚びた甲高い声と男の声。
夕飯が食べたかった私は台所へ。
すると母が何か男に話ながら居間の戸を閉め、こちらにやって来た。私を見るなりその媚びた笑みをフッと消し、「早く2階に行きなさい」と言った。
「ご飯食べたいんだけど」と言うと、「お客さんに出したものの残り持っていっていいから。あと、お客さん帰るまで降りて来ないで」とピシリと言って、冷蔵庫から冷えたフルーツを出し、また居間に消えて行った。
その日、客は帰らなかった。
トイレは1階にしかなく、夜中どうしても我慢出来なくなった私は、細心の注意を払いながら1階に降りた。
居間の扉からは、オレンジ球の薄い光が漏れていて、カサカサと衣摺れの音、何やらチュッチュと口を鳴らすような音も聞こえた。
私の思考は完全に停止していた。
もう何年も、いつものこと過ぎてなんにも感じない。唯一思ったのは、明日の朝ごはんあるのかな?って事だけだった。