●N88-BASICの数奇な運命 | サンロフトの本とテレビの部屋
2022年04月02日(土) 08時13分53秒

●N88-BASICの数奇な運命

テーマ:雑感

●N88-BASICの数奇な運命
前半は以前書いたことの繰り返しなので、普段読んでいる方は飛ばしてください。


NECはPC-8001用のBASICを自社開発し、動作が速かったにも関わらず、世界標準ということでMicrosoft BASICが採用された。その影響で、後発のパソコンメーカーもこぞってMicrosoft BASICを採用した。

もし、NECがMicrosoft BASICを採用しなかったら、その後多数発売した8ビットパソコンに載せるBASICに苦労しただろう。

特に、FM-8に対抗して急遽出すことになったPC-8801に搭載する高機能BASICを、短期間で開発するのは難しかった。西和彦が理想を求めて60Kバイトに及ぶ巨大BASICを作っていたからこそ、40KバイトのN88-BASICも実現できた。


NECが、PC-9801を、なぜPC-8801と同じようにBASIC ROM+DISK BASICにしたのか、疑問ではある。オプションのカセットインターフェースボードを使えばFDD無しでも動作したが、常識的に考えてPC-9801はFDDの使用が前提だろう。

FM-8が発売された1981年5月時点でPC-9801は既に開発スタートしており、PC-8001の上位モデルの8ビット機を出す予定が無かったとすれば、PC-9801をカセットテープで使うユーザーもいると想定したのかもしれない。

1983年秋以降のPC-9801E/F/M時代になってみると市販のビジネスソフトは当たり前だが、1981年の時点でビジネスソフトをすべてソフトハウス任せにしようという発想は、社内で笑いものになったのもうなずける。

「これからのビジネスマンは、BASICを学んでプログラミングが出来るようにならなければ」と言われた1981年のマイコンブームの世の中では、PC-9801にもBASIC搭載は必須だったろう。

16ビット機はMS-DOS上のGW-BASICにするという理由で、PC-9801用のBASIC開発をマイクロソフトに断られ、NECが自社開発することになるが、NECがパワーオンBASIC(FDD無しでの使用)にこだわったからか? DOSが時期尚早と考えたからか? GW-BASICを待っていてはPC-9801の発売が遅れてしまうからか? 真相はよく分からない。




1984年11月、PC-9801M2と同時期に登場したのが、「N88-日本語BASIC(86)MS-DOS版」(1万7000円)と「N88-日本語BASIC(86)コンパイラ」(4万7000円)だ。5インチ2DD版/2HD版、8インチ2D版の3種類あり、5インチ2DD版はそれぞれ1000円安い。要日本語MS-DOS Ver2.0、要256K RAM。

尚、5インチ2D版は無い。この時期から5インチ2D版の無いNEC純正ソフトが増えていく。初代PC-9801時代は5インチ2Dと8インチ2Dしかなかったし、PC-9801EでもPC-8001やPC-8801からの流用で5インチ2D FDDを使っていた人は少なくないはず。現行モデルなのに早々にサポートを打ち切ったのは、NECにしてはひどい仕打ちだ。

閑話休題。MS-DOSマシンのPC-100は、当然ながらMS-DOS上で動くN100-BASICが付属していた。しかし、PC-9801のMS-DOS上では、これまではBASICが使えなかった。MS-DOSもBASICも別売りとあって高くつくが、登場はありがたかった。

しかも、N88-日本語BASIC(86)コンパイラには大いに驚いた。それ以前から、純正でCOBOLコンパイラは出ていたが、BASICコンパイラは想像もしなかった。コンパイラは、インタプリタ版の2~4倍の速度で、倍精度演算ではさらに高速化されるという。

Cコンパイラのような開発用には向かないが、手持ちのBASICプログラムが高速に動くメリットは大きいと思った。後の、私はX68000で同様の体験をすることになる。


2年後の1986年11月、PC-9801用の日本語MS-WINDOWSが登場するが、同時に「N88-日本語BASIC(WN)」(1万5000円)も発売。5インチ2DD版は1000円安で、5インチ2D版は無い。

Windowsで動く純正BASICは、珍しいのではなかろうか? 細かい仕様は分からないが、DISK BASICやMS-DOS版BASICのプログラムを、容易にWindowsで動かせたと思われる。もう、BASICの時代ではないと思うのだが、個人的にはありがたい。640K RAM標準装備の時代になったとはいえ、要512K RAMなので初代やPC-9801E/F/Mでは厳しい。

さらに、Windows用の開発環境まで初めから用意されていた。「日本語MS-WINDOWSツールキット(Cコンパイラ付き)」(18万8000円)と「日本語MS-WINDOWSツールキット(Cコンパイラなし)」(9万円)だ。いずれも要512K RAM。5インチ2DD版は各1000円安で、5インチ2D版は無い。


これらは1988年5月版カタログまでは載っている。その後はハード一覧、ソフト一覧カタログが廃止されたのか、手元には無い。少なくとも、PC-9801版Windows 2.0が出る1989年6月までは、N88-日本語BASIC(WN)は現役だったろう。

Windows 3.1時代にはもうN88-日本語BASICは無くなっていたと思うが、N88-日本語BASIC(WN)がどのバージョンのWindowsまで動いたのか、興味は尽きない。