「村上海賊の娘」第二巻
本願寺に集まった門徒たち。
彼らは極楽往生のために戦うのではない。
極楽に行くのはすでに念仏を唱えたことで確定している。
ただただ、その恩に報じるために集まってきたのだ。
その彼らの前に
「進者往生極楽(すすまばおうじょうごくらく)」
「退者無間地獄(ひかばむけんじごく)」
の旗が上がる。
極楽往生は確定しているはずなのに、条件が人の手によって追加される。
戦の素人であった門徒たちが、目の色を変えて死兵になる。
戦争はきれいごとではない。2巻での、戦をする人々の感慨である。
あらゆる手段を使って勝たねばならぬがこのやり口には、憤慨せざるを得なかった。
しかし、宗教って、人々を利用しようとその信仰心をつけ狙う部分はある。確かにある。
そういうことを暗澹たる気持ちで思った。
さて。
フィクション色の強い歴史小説である。
主人公だって、存在はしたかもしれないけれど、こんな人がいたとは思えないねえと思うような人物だ。
では、歴史の流れを無視した荒唐無稽な小説かと言われたらそうでもない。
歴史の進行に関わる部分は、確かにこんな感じだったのかもなと思う部分がたくさんあった。
歴史小説を否定的にとらえていたが、こういうところは歴史を小説で表現する醍醐味なのかもしれない。
それから、ついつい歴史小説というものに久しぶりに触れたことから総論みたいになってしまうけれど、歴史小説って題を過去にとり、一般に知られている常識をそのベースにしていて、そこに縛られる分、逆に現代を色濃く映すような小説になるのかもしれないと思った。
さて。楽しく読んでいるのだが、一つだけ苦情を言わせてもらうならば。
戦国時代をベースにした読み物であるから、戦争の場面は一つの見せ場に違いないだろう。
その演出を求めるあまりに、これは物理的には無理だろうなあと思う部分が多々あった。そこが中だるみになってしまったかなあというのは残念な点。
ただ、小説が物理を無視するのは、よくあることなので、仕方のないことなのかなと思うけれど。
とまあ文句も言ってみたけれど、先の展開がよくわからないので、続きが楽しみである。
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