吉原祥子「人口減少時代の土地問題」 | 世界文学登攀行

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世界文学の最高峰を登攀したいという気概でこんなブログのタイトルにしましたが、最近、本当の壁ものぼるようになりました。

人口減少時代の土地問題
――「所有者不明化」と相続、空き家、制度のゆくえ


日本では、不動産登記は義務ではない。
田舎の方にある先祖代々引き継がれてきた土地など、登記がなされないまま幾世代もの相続がなされるなどして、もはや誰のものかわからない土地が日本中のあちこちにあるらしい。


そして、現在の制度、あるいは、今後減少していく人口動態から言っても、特に所有者にとって資産価値の見いだせない土地について、所有者がわからなくなる事態は今後も増えていくであろうことに言及している。


土地の権利の主張というのは、個人の問題のように思えるが、空き家問題、用地の取得、固定資産税の課税など、行政レベルの様々な局面で問題が顕在化しているようである。
本書は、このように、行政でも認識されつつある問題について、一度整理してみましょうというスタンスの本だ。


そもそもの問題の所在、各市町村へのヒアリングによる実態調査、そこからの考察、解決のために必要な論点整理と、1冊の中にコンパクトにまとめられている。
普段あまり意識はしないけれど、このように提示されれば、確かに問題だよなあと、考えることがたくさんあった。
新書らしく、内容がスッキリしていて、それでいて読み応えのある良書であったと思う。

人口減少時代の土地問題 - 「所有者不明化」と相続、空き家、制度のゆくえ (中公新書)/中央公論新社
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