秋吉貴雄「入門 公共政策学」 | 世界文学登攀行

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世界文学の最高峰を登攀したいという気概でこんなブログのタイトルにしましたが、最近、本当の壁ものぼるようになりました。

入門 公共政策学
――社会問題を解決する「新しい知」


「ところで、公共政策学って何ですか?」(Pi)
と、100回以上は聞かれたかもしれないと、著者がぼやくように、公共政策学とは聞きなれない単語である。


教科書的には「公共的問題を解決するための、解決の方向性と具体的手段」(P4)と定義されるようである。


内容を目次に沿って説明すると、第1章の総論にはじまり、第2章「問題」(いかに発見され、定義されるのか)、第3章「設計」(解決案を考える)、第4章「決定」(官僚と政治家の動き)、第5章「実施」(霞ヶ関の意図と現場の動き)、第6章「評価」(効果の測定と活用)と具体的な各論が展開され、最後に第7章はまとめとなっている。


自分なりにまとめ直すと、社会の事象の中からどのようにして問題を抽出し、解決策を検討し、複雑に錯綜する利害関係者間を調整し、法に基づいた実行が行われ、また、その行われたことの効果を評価する、そういう一連の流れで本書は構成されている。


各章ごとに、はじめに理論的な考察、記述が行われる。
そして、実際に起きている問題や、制定された法律などに基づいた、具体的な説明がある。
少々聞きなれない理論的な考察も、具体的な事象と結びつけて説明されることで、イメージがしやすく、とても読みやすく、わかりやすかった。
また、ニュースで聞いたことのあるような話しの、報道ではわからない現実の動きなど、興味深く読むこともできた。


僕は一民間人であるので、政治の世界の話しは、マスコミが喧伝するような単純な話しではないんだろうとは思っているが、実際のところ、よくわからんというのが正直な気持ちだった。
この本を読んで、政治家、官僚、専門家、第一線で政策を実行する人、市民、など、それぞれが果たしている、あるいは求められている役割がとてもよくわかった。社会の問題は、広範かつ複雑に入り組んでいるからこそ、誰かが手を抜かなければ当然に改善されるような安易なものではなく、それぞれの場面のアクター(主体)の英知を結集し、問題に立ち向かうような仕組みが必要だということを感じた。


既存の学問の行き詰まりもあれば、それを再び有機的につなげて、活性化させて新しい学問が構築されていく試みがなされる。
生きた学問の脈動を感じる、心楽しい読書であった。



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