中国ナショナリズム
――民族と愛国の近現代史
最近、中国を語る本にぶつかることが多い。
隣の超大国である。それが時代の要請であり、趨勢なのであろう。
この本では、清末から現代までの中国ナショナリズムの変遷について語られる。
清末の中国というのは、まさに列強の蹂躙と戦った時代であり、近代化を大きく推進しようとした季節である。
そのどちらの観点でも、日本がその視界にずっと入っていたということを、改めて考えさせられた。
抗日という言葉は、日本人が過去のものと切り捨てて思う響きよりも、ずっと中国人の奥深くに根強く生きている思想なのかもしれない。
戦後、文化大革命の混乱を経て、経済大国へと成長した中国の大きな流れの中に、国家による政治的思惑があり、民衆からの突き上げがある。
中国におけるナショナリズムの変遷を追うことで、一つの切り口から見た、わかりやすい中国の近現代史となっている。
そのことは、現在のトピックスにもなっている、少数民族の問題、日本との歴史認識問題、東南アジアへの武力での威嚇など、そこだけ切り取るとかえってよくわからなくなる中国という国を、納得のいくよう理解することができる一冊となっている。
一言では簡単に片付けられない一国の歴史を、世界史に絡めてつぶさに眺めることで、僕の世界地図は時間という縦軸も、空間という横軸も含めて、豊かに彩られていくことを実感する。
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