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 ワダさんは「思いつくまま」とあらかじめ断っていたように、分類のない議題を

 次々口にした。

 だがそれらは、おそらくはワダさんの腹の中で精査を重ねたであろう内容であり、

 安易に「反対!」と手を挙げにくい圧力が感じられるものだった。


 「会合のたびにお茶が出るよね。まずはあれをやめたいんだ」


 手始めに口にしただけあって、軽い内容からである。


 「自治会費は住民のみなさんからいただいた大切なお金だから、そんな事に

  使いたくないんだよね。自分の飲み物くらい、自分で用意できると思うんだ」


 まぁ…それは確かにそうだろう。

 まだ会合に出席したわけではないボクは、お茶が出席した役員全員に振る舞われることも、

 そのお茶代が自治会費から出る事も知らなかった。

 だから、言われるがままに頷いた。




 「次に、連合。町会連合からは脱退したいんだよね。寄合みたいなものに

  参加費を払うのはばかばかしい。商売なら持ちつ持たれつだろうけど、

  自治会ではそれは関係ないから」



 町会連合。

 自治会の組合みたいなもので、同じ地域の自治会・町会が集まっている。

 参加料…というか組合費みたいなものが存在する…らしい。

 といってもこの時点では、そんな事も知らないので、言われるがままに頷くしかない。




 「あとね、青年部を立ち上げたいんだ。これからは若い人の力が必要になってくるから、

  もっと盛り上げていきたいんだよね」



 …ゾクリ、と寒気がした。

 「若い人」という言葉に、悪意なきパシリ感を感じたのだ。


 マンションの築数も高く、住民の平均年齢も高いであろうこのマンションに「若い人」が

 どれだけ居るのか知らないが、意思決定を許されない下部組織を「若い人」という都合の

 良い言葉のもとに作り上げ、使役しようとする意図が見え隠れした。




 …この人、ヤバいぞ…。



 ボクは頭の中でワダさんの構想に対する反論を練り始めていた。

 ただでさえ忙しい毎日を過ごしているのに、妙な事に巻き込まれてそれに時間を

 費やしたくない。


 何か仕事を振られたら、即座に逃げ出さなければならない。

 そう身構えていた。


 青年部構想を口にするうちにボルテージが上がってきたのか、ワダさんは鼻息荒く、

 今度はこんな言葉を口にした。




 「それと…うちのマンションに災害協力隊を作る。これは絶対にやりたいんだよね」



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 …災害協力隊


 初めて聞く名称だったが、これまでの流れのせいか、あるいは第六感が働いたのか、

 ボクはこの時本気でヤバいと思った。

 

 それは、この一年間の中でもっとも厄介な「怪物」が、初めてその真の姿を現した瞬間だった。






 <続く>  






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