沈黙と言うのはやっかいである。
エンドウさんやシバタさんが攻撃的な発言を繰り返す中、事態もわからず茫然としているだけのボクや他の理事たちは、彼らに反論しない(つまり何も発言しない)事で、彼らに同調しているかのような雰囲気となっていた。
前期のメンバーにしてもそうであろう。
激高しているミハラさん、その傍らで事態を見守るカワハラさん。この二人以外は何も発言していないのだが、逆にそれゆえミハラさんたちと同じ考えであるかのように見えた。
つまり、実際には一部のメンバー同士のいさかいであるのに、
図式としては「前期VS今期」となっていた。
「…もう結構です。みなさん、我々の事は我々で決めましょう」
これ以上話しても無駄とばかり、エンドウさんがミハラさんから顔をそむけた。
そして机を持ち上げて、配列を変え始めたではないか!
雰囲気といか、同調圧力というか、皆しぶしぶながらに立ち上がって机を移動し始めた。かくして集会室には「前期メンバーのグループ」と「今期(正確には来期)メンバーのグループ」二つのエリアが出来上がった。
ボクは温厚で責任感の強いミハラさんや、人のいいお隣さんであるカワハラさんに好意を持っていたのだが、彼らへの同情は顔に出さず、「今期メンバー」の方に自席を置いた。
ミハラさんの肩をもったところで、結局一年間付き合っていくのは「今期メンバー」の方なわけで…「前期派」なんて妙なレッテルを貼られて険悪なまま一年間を過ごすのはきびしいと考えたのだ。
それは、40代の男らしい、なんとも政治的な判断だった。
<続く>
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