四月のとある日。
帰宅したところを隣に住むカワハラさんに声をかけられた。
「カゲオさんね、来期は管理組合の理事の番だから…」
「あ、はい…」
いよいよまわってきたか。
来期が自分の番だという事を、実は前もって知っていた。
いや、正確には、本来もう一年早く順番が回ってきているはずだった。
しかし「子供がまだ幼いから生活自体も大変だろう」と、カワハラさんはボクら家族の事を気遣ってくれ、二年連続で理事を引き受けてくれていたのだ。
ボク自身はその事をお義母さんやマヨから伝え聞いていた。
現在、むーちゃん四歳、アトくん二歳。
昨年だったらもっと大変だったであろう事を考えると、カワハラさんには感謝しなければならない。
「ありがとうございました」
そう言ってボクは次の理事を引き受けた。
共稼ぎで幼い子供二人…。正直、時間はない。
カワハラさんへの義理がなければ、丁重にお断りしたいのが本音だったが…。
さて、この時点でボクはこのマンションに「管理組合」と「自治会」という二つの組織がある事をまだよくわかっていない。何しろその手の活動には無関心極まりない性格なので、様々な連絡事項も義務だけ果たしてほとんど内容を把握していなかったのだ。
「面倒くさいなぁ…」
それが、偽らないボクの本音だった。
だが…。
その時のボクはまだ知らなかった。
実際の理事としての活動は、その時想定した「面倒くささ」などはるかに上回るものである事を。
<続く>
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