「もっといい子にならなきゃ」
お友達とうまくやれないむーちゃんに、何度もそう言った。
「だって」
と反論するのは、自分がいい子ではないと自覚があるのだろう。
少なくともボクやマヨのいう「いい子」ではないと…。
「相手に譲る」
「我慢する」
これらを自然にできるようになるのはいつからだろう。
譲り過ぎるのも、我慢し過ぎるのももちろんよくないが、バランスでいうならむーちゃんは明らかに「わがまま」に傾いていた。
「お友達と仲良くやって欲しいな。…その為にはむーちゃんがもっといい子にならなきゃ」
忍耐強くそう諭すと、むーちゃんは言った。
「お父さんは、いい子が大好き?」
「…お父さんは、むーちゃんが大好きだよ」
と、ボクは応えた。
「むーちゃんがいい子じゃなくたって、悪い子だったって、お父さんは大好きだよ」
むーちゃんは怪訝な顔をした。
『もちろんいい子が大好きだよ』
『お父さんが大好きなら、いい子になれるよう頑張るよ』
…そんな会話になると思っていたからだろう。
予想しなかった回答に、不思議そうに尋ねた。
「どうして?」
「理由なんかないよ。大好きだから大好きなんだ。…お父さんがいい子になってほしいと思うのは、いい子が大好きだからじゃなくて、むーちゃんにお友達ができてほしいからだよ」
まだ不思議そうな顔をしたままのむーちゃんを一度抱きしめて、
「明日はうまくやれますように」
とつぶやいた。
皆よりヘタでもいいから、昨日よりは今日、今日よりは明日、少しずつでもうまくやれるようになる事を祈った。
<続く>
人気ブログランキングに参加中!
1クリックお願いします。