スラップスティック幼稚園-6 | 日陰で絵日記

日陰で絵日記

イラスト描きとその家族の日記

 「もっといい子にならなきゃ」


 お友達とうまくやれないむーちゃんに、何度もそう言った。


 「だって」


 と反論するのは、自分がいい子ではないと自覚があるのだろう。

 少なくともボクやマヨのいう「いい子」ではないと…。



 「相手に譲る」

 「我慢する」


 これらを自然にできるようになるのはいつからだろう。

 譲り過ぎるのも、我慢し過ぎるのももちろんよくないが、バランスでいうならむーちゃんは明らかに「わがまま」に傾いていた。



 「お友達と仲良くやって欲しいな。…その為にはむーちゃんがもっといい子にならなきゃ」


 忍耐強くそう諭すと、むーちゃんは言った。



 「お父さんは、いい子が大好き?」





    日陰で絵日記-20110906_daisukidayo


 「…お父さんは、むーちゃんが大好きだよ」


 と、ボクは応えた。


 「むーちゃんがいい子じゃなくたって、悪い子だったって、お父さんは大好きだよ」



 むーちゃんは怪訝な顔をした。


 『もちろんいい子が大好きだよ』

 『お父さんが大好きなら、いい子になれるよう頑張るよ』


 …そんな会話になると思っていたからだろう。

 予想しなかった回答に、不思議そうに尋ねた。


 「どうして?」


 「理由なんかないよ。大好きだから大好きなんだ。…お父さんがいい子になってほしいと思うのは、いい子が大好きだからじゃなくて、むーちゃんにお友達ができてほしいからだよ」



 まだ不思議そうな顔をしたままのむーちゃんを一度抱きしめて、


 「明日はうまくやれますように」


 とつぶやいた。

 

 皆よりヘタでもいいから、昨日よりは今日、今日よりは明日、少しずつでもうまくやれるようになる事を祈った。




 



                                         <続く>


 

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