一人でぼーとしているのが好きだったボクの子供時代と違って、むーちゃんはむしろ「お友達と遊びたい」子だ。
そういう意味では、一人でいる事が間違いなく不幸なはずである。
ボクの頭は、幼稚園でのむーちゃんでいっぱいだった。
わがまま。
仕切り屋。
それ以外のむーちゃんの特質としては、「人の話を聞いていない」「もたもたしてる」という点がある。
「人の話を聞いていない」のは、まぁボクと同じというか(笑)、ぼーっとしてたり、目の前の遊びに夢中になっていたりする時だ。
…これって、お友達と遊ぶ時はちょっとまずいよねぇ。
せっかく話しかけてもしらんぷりされちゃ、話しかけてもらえなくなっても無理はない。
「もたもたしてる」のは、他の子に比べて明らかに動作が遅いのだそうだ。
靴を脱いだり、服を着たりといった動きが、いつまで経っても早くならない。
そういう言葉が、しばらくの間はボク達の間で言い訳となっていた。
この年齢の頃の「一年」の差は大きい。
4歳になったばかりのむーちゃんと、四月生まれでもうすぐに5歳になる子では、差があって当たり前だ、という言い訳だ。
しかし…。
むーちゃん以外にも3月生まれの子はいるし、その子たちが動作が遅いかといえばそういうわけでもないらしい。
背も体重も人一倍大きなむーちゃんは、6歳の子と並んでも見劣りしないくらいだ。
そんなむーちゃんが、他の子より明らかに動作が遅いのは、目立って仕方がないようだ。
--他の子はもっとしっかりしてる。
幼稚園でうまくやれないなら、せめて家では甘やかしてやりたい、という気持ちがある。
しかし他の子より劣っている点があるなら、これ以上遅れないようにしてやる事こそ親の役目ではないだろうか?
「幼稚園児でしょ? そんなに気にしなくてもすぐ皆と同じになるよ」
そういう人もいる。
ボクも他人事ならそういうかもしれない。
だけど…。
出かける前に靴下をはく。
アトくんはボクがはかせてやり、むーちゃんには「自分ではけるよね?」と手渡す。
アトくんがはかせてもらっているのがうらやましくて、自分もはかせてほしいと甘えるむーちゃんに、ボクはもう一度言う。
「自分ではけるよね?」
甘やかしてやりたい気持ちを懸命に抑えているから、気が付けば口調はきつくなる。
そんな状態がしばらく続いた。
<続く>
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