<卒業検定⑫>
「お時間をください」
肉厚の男性がボクの前に立ちふさがった。
年齢は五十代だろうか?
貫禄があり、言葉にも逆らえない重い響きがある。
目に笑みはない。
その言葉を耳にして、他の生徒もボク同様立ち止まった。
「いえ、カゲオさんだけです」
他の生徒には笑みを浮かべてそう言い、「卒業おめでとうございます」と言い足している。
ボクは教官の方を見た。
ボクに卒業を言い渡してくれた教官は、何の説明もなく、曖昧な顔で教室から出て行った。
後には、ボクと、その男性だけが残った。
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