ゴールデンウィークは遠くには出かけず、普段は忙しくてなかなか観れない映画をたくさん観ました。
その中でも、今回は大好きな是枝裕和監督の映画を2本観ました。
是枝監督の映画は家族をテーマにしていることが多いのですが、「家族とはこうあらねばならない」という押しつけがましいものではなく、家族にも様々な形があり、それぞれの形の中に学びや愛があることを考えさせられます。
決してヒーローが世界を救うなどの壮大なストーリーではなく、何気ない日常の暮らしを深堀りするような話なのですが、始まりから最後まで見逃すことができない魅力的な作品が多いです。
映画だけでなく是枝監督の考えを知りたくなり、YouTubeでいろんな動画を検索していく中で、是枝監督が厳しい映画業界の中で後進を育てる活動をしていることを知りました。
これは鍼灸業界でも同じで、個人的にとても危惧しています。
先日も20代の若い鍼灸師数名と話をする機会があったのですが、若い人たちは治療に興味をもつ子が少なく、かなり美容業界に流れているのだそうです。
理由はとしては、「治療系の鍼灸は稼げない」「美容鍼灸は稼げる」というのが大きいようです。
これはとても嘆かわしい状況です。
なんのために鍼をもつのか?
稼ぐため?
若い人たちが悪いといっているわけではなく、社会全体の「稼げたものが勝ち」「稼げなければ負け」「稼げなくて困るのは自己責任」、こういった風潮に危惧を覚えます。
私が師匠から伝えられたのは、「金はあとからついてくる。まずは信念を貫け。」という教えでした。
当時は私のまわりにも、新聞配達や深夜のファミレスで皿洗いのバイトをしながら鍼灸院を経営している先輩方がいました。
たとえお金が稼げなくても、自分のほんとうにやりたい鍼を追求する気概を感じたものです。
15年前、縁もゆかりもない神戸で妻と二人で始めた小さな鍼灸院。
知識も技術も覚束ないままでの船出でしたが、信念だけはありました。
美容やサプリメントの販売などに手を出さずとも経営は成り立っており、少ないながらもスタッフを雇い、技術や理論を伝えることもできています。
ほんとうに美容がやりたいのなら、やればいいと思いますし、否定はしません。
けれども、ただお金を稼ぎたいという欲のために鍼を持つのは違うと思うし、そんなことをしなくても鍼には価値があり、ほんとうに治せる技術があれば患者さんは来てくれます。
おそらく若い鍼灸師の方たちは、そういった事実を知らないのでしょう。
私自身も師匠や先輩方の後ろ姿を見て、これまで歩んできました。
伝統的な鍼灸には素晴らしい価値があり、求めている患者さんも多い。
信念を貫き、本物を追求し、よい治療を提供し続ければ患者さんはついてきてくれます。
そういった事実を、若い鍼灸師の方々にも伝えていく必要性を強く感じています。