当院には、いろんな症状でお困りの方が来院されます。
これまで多くの病を診てきました。
病の原因は様々です。
ストレス、飲食の不摂生、風邪、外傷、睡眠不足etc。
しかし、その中でも最も多いのが「疲れ」です。
もう、みんな頑張りすぎて疲れ切ってしまってるんです。
「がんばって社会に貢献しなければ生きている価値がない」
「社会的弱者になったのは、本人の努力が足りないからだ」
このような自己責任論が蔓延している社会で、みんな生きることに疲れてしまっている。
こういった空気が蔓延している社会においては、自分が頑張りすぎていると自覚することさえできません。
ですから、初診の時に私が「あなたの病気は疲れすぎていることが原因ですよ。」と伝えても、「いやいや、私は疲れてなんかいません。もっともっと努力しなければならないのです。」と、否定する方さえおられます。
そのような方に鍼をすると、「鍼を受けるようになって、眠くて眠くてたまりません。なんとかして下さい。」と訴える方がおられます。
この、「眠くて眠くてたまらない」という現象を、悪いことだと受け止めているのです。
このような訴えをされる方の多くは、元々寝つきが悪い・眠りが浅い・中途覚醒・早朝覚醒などの症状を持ち合わせておられます。
つまり、ほんとうは心も身体も疲れ切ってしまい、眠りを欲しているはずなのに、無理やり頑張ることが癖づいてしまっているために、眠ろうにも眠れない状態になっているわけです。
そこへ鍼をして、「これ以上頑張らなくていいんだよ」というサインを送ることにより、ようやく眠れるようになったにも関わらず、その眠気を受け入れることができなくなってしまっているのです。
「がんばらなくていいんだよ」という鍼の力と、「もっともっと頑張らなくては!」というこれまでの心の癖がせめぎあっているわけです。
疲れを取る最大の養生は、良質の睡眠をとることです。
ですから、鍼を始めて眠気が強く出始めた時こそ、疲れを取る絶好のチャンスなのです。
はじめのうちは昼夜かまわず眠気がやってくるでしょう。
夜眠れなくなるので、昼寝はしないように我慢していると仰る方もおられます。
しかし、眠気が来た時は、昼夜かまわず身体が眠りを欲している時に、眠気に従って眠って下さい。
昼夜逆転でもかまいません。
身体の欲するままに、しっかりと良い睡眠をとっていれば、自然と昼夜のバランスは整ってきます。
はじめのうちは10時間以上眠っていたような方も、徐々に疲れが取れてくると、7時間程度におさまってくるので、「眠りすぎかな?」などと思わず、身体の欲するままにたっぷり眠って下さい。
「眠りすぎることは、だらしないのでは?」と思うのは悪い癖です。
まずは、ご自身がこれまで頑張りすぎたがために生じた病であることを明確に自覚し、これまでの生き方を反省し、しっかり心と身体を休めて下さい。
がんばり過ぎるということは、ご自身のお身体を大事にしていないということです。
「お大事に」という言葉の意味をかみしめ、しっかりと身体を労わってあげて下さい。