サービス残業強要の章 | パワハラ被害者が在職したまま激闘

パワハラ被害者が在職したまま激闘

退職・異動せず、パワハラと奮闘する兼業主婦の記録です。
夫婦で最高裁までやって棄却されたけど戦います(しつこい)。
退場するべきは加害者です。

パワハラが行われる職場で高確率で行われているのがサービス残業の強要である。

労働力をタダで提供させるのは社員の忠誠心を試すのにうってつけだからだ。

それはやはり私の職場でも当然のように行われていた。



私が入社して配属された部では、サービス残業の強要というよりは、洗脳が行われていた。
残業を申請すると、部長が残業を申請した社員の上司に文句を言い、申請しにくい雰囲気を作る。
いつしか残業を申請しないのが普通になるというシステムである。


洗脳はとても巧妙に行われていた。
部長は文句を言う活動のほかに、サービス残業をした者を高く評価し、残業を申請した者の評価を低くするという行為を行った。
『結果を出さなくてもサービス残業を行えば部長の覚えが良くなり、評価も高くなる=昇進がはやくなる』
このような支配体制が築かれていったのである。


また、若い者は苦労するべきとでもいうようなサービス残業を美徳とする思想の植え付けも行われた。
仕事の効率が悪いのは自分の責任だから、残業申請するなんて悪いことはできないのである。
残業申請っていうシステムはあるけど、まさかそんなおこがましいことはしないよね、という無言の圧力である。


部長の目的は支配と労務費の削減であったと思われる。
労務費の削減では上から高評価をもらい、支配では部下の忠誠心を試して忠実な部下を昇進させたのである。


さて、入社早々そんな部署に配属されて数カ月、私は残業の申請の仕方すら教えてもらえないまま仕事をしていた。
仕事はとても定時までで処理できる量ではなく、定時に帰ることはほとんどできない。


ある日、退勤時間を録時していると、ある社員にちゃんと残業をつけなければダメだと言われた。
私は混乱した。
残業を申請しないのが常態化している・・・というか、残業の申請の仕方がわからないのだ。
上司は残業の申請の仕方を指導しなかったのである。


その日から、36協定の範囲内でぎりぎりまで残業を付けた。
すると、出勤簿を上司に提出する際に驚きの指導を受けたのである。


上司「ギリギリだな・・・」


嫌な空気が流れる。


上司「自分の要領が悪くて残業になったときや、失敗で時間がかかったときは、残業じゃない。みんな、残業を付けないで頑張っているんだから、そのことをよく考えて」


全く持って意味不明な主張であるが、これがこの職場の正義であった。
もっと私よりも古くからいた社員は、出勤簿の録時時間と残業申請時間がずれていた場合、部活動や組合活動、文献調査と書いて仕事で会社にいたのではないということにしろと指導を受けていた。
仕事に必要な文献調査がなぜ残業にならないのか謎であるが、現在でも文献調査は仕事ではないと声高に主張する人間が会社にはいる。
嘆かわしいことである。


この状態は組合から訴えても効果がなく、むしろ組合で中心になって訴えた人間が異動になる例があったため、誰も何も言わなくなったと聞いた。


それでもこの状態を人事室、コンプライアンス委員会へ訴えたが、研究は裁量でやってるから難しいよね~というような言い訳、サービス残業を強要した部長には不適切な部分はあったが、これから直すからおとがめなしとの報告がなされた。

さらに、過去二年分の残業を『自分で出勤簿を見て、該当部分を申請する』という方法で申請するように通知を行った。
もちろん部長によって洗脳されている社員たちは、こんな作業をしない。
サービス残業は美徳なのだから。

実際、申請したのは数人。

多額の労務費の削減に成功したのである。

さすがにこれは納得いかないということで、裁判を起こすことにした。


・出勤簿
・人事室の聞き取り調査の録音
・測定機器の記録


これを証拠にサービス残業の強要があったことを主張したが、上記の残業申請通知があったためと、裁判開始早々に会社が残業代を原告に支払ったため、有耶無耶になってしまった。
被告の主張は、「強要なんかしてない」である。

会社側の提出資料であるコンプライアンス調査結果には、社員の「残業を付けにくい雰囲気がある」「人事がサービス残業をもみ消した」「上司にそのような指導をされた」などの記述があったにも関わらず、サービス残業に関する事実認定はされなかった。

第三者の証言があってこれである。

我々は数々の判例を調査して裁判に臨んだが、まだ甘かった。
大きな会社を相手に裁判をする場合は、もっと直接的な上司本人の残業を消せという指導の音声がない限り、認定はされないのではないだろうか。


もっと簡単で確実な方法として、多数の社員が声を上げるというのがあるが、パワハラが行われるような職場ではそのようなことは期待できまい。

また、そのような職場の社員たちはすぐに手のひら返しを行うので当てにしてもバカをみるだけである。


ただし、個人的に過去二年分の残業代を支払ってもらいたい場合は、録時時間と支払われた残業代にずれがある場合は、出勤簿があればその差額は支払われる模様である。