新刊『カフカはなぜ自殺しなかったのか?』発売になりました! | 「絶望名人カフカ」頭木ブログ

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『絶望名人カフカの人生論』『絶望読書』『絶望図書館』、NHK『絶望名言』などの頭木弘樹(かしらぎ・ひろき)です。
文学紹介者です(文学を論じるのではなく、ただご紹介していきたいと思っています)。
本、映画、音楽、落語、昔話などについて書いていきます。

新刊『カフカはなぜ自殺しなかったのか?』(春秋社)が発売になりました!

 

 

 

 

本書について、少しだけご説明させてください。

 

私がこれまで編訳してきた『絶望名人カフカの人生論』『希望名人ゲーテと絶望名人カフカの対話』や、

『絶望読書』の読者から、

「カフカはなぜ自殺しなかったのでしょうか?」

という質問をいただくことがしばしばありました。

自殺を考えておられる方からのメールもありました。

 

私は、カフカが自殺しなかったことについて、

じつはそれほど意識していませんでした。

私自身も、身近に自殺した人や自殺未遂をした人はいました。

しかし、自殺した人の「自殺の理由」は考えても、

自殺しなかった人の「自殺しなかった理由」については、

なかなか考えないものではないでしょうか。

 

でも、そういう質問を何度も受けるうちに、

生きていくためには、

「自殺しなかった理由」について考えることも、

大切なのではないかと思うようになっていきました。

 

カフカは、いつも死にたがっていましたし、いつも絶望していました。

「われわれの救いは死だ」

とさえ言っていました。

「ぼくが全面的に信頼できるのは、死だけだ。

 死になら、自分を差し出せる。

 たしかなのは、このことだけだ」

とも言っています。

 

しかし、自殺はしていません。

危ないときはありましたが、未遂事件さえ起こしていません。

 

それはいったいなぜなのかという視点から、

カフカの人生をじっくり追ってみました。

「なぜ自殺しなかったのか?」を考えるとき、

カフカほどふさわしい人はいないと思います。

 

……

 

なお、カフカの日記や手紙の面白さを伝えたいというのが、

私の一貫した思いでして、

今回もたくさんの言葉を引用しています。すべて新訳しました。

 

本書は、カフカ自身の言葉によるカフカ伝でもあります。

 

カフカの名言集でもあります。

 

……

 

これまでのカフカ全集では、日記と手紙は別々の巻になっていますし、

手紙も相手先によって分けられています。

すべてを年代順に並べるというのも、この本でやりたかったことのひとつです。

同じ出来事を、

日記にはどう書き、

手紙にはどう書き、

また別の人への手紙にはどを書いていたのか。

同時期の日記や手紙を並べてみることで、初めてわかったことも多々ありました。

 

……

 

カフカをまったく読んだことのない人に、ぜひ読んでいたたきたいと思っています。文学に興味のない人にも、ぜひ読んでいただきたいと思っています。

そのつもりで、予備知識が必要ないように、

中学生が読んでもわかりやすいように、

気をつけて書いたつもりです。

カフカや文学への入りやすい入り口のひとつになれればと願っています。

 

どうぞよろしくお願いいたします!