拙訳のカフカの言葉を引用していただいきました。
それがきっかけで、拝読しているのですが、
とてもいいです。
惑亂 (新鋭短歌シリーズ)/書肆侃侃房

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いくつか引用してみます。
「絶望はゆつくり来るの。神様が少しよそ見をしてゐるすきに」
「直線を描かむとすれば曲線にかならずやなる故郷うつくし」
「本物の季何に贋者と見破られ家を追はれぬいづくへ行かむ」
これはとてもわかる気がします。
小さい頃、誰もいない留守に、
ひとりで押し入りに入っていると、
いつの間にかうとうとして、
その間に家族が帰ってきて、
自分までも帰ってきて、家族としゃべっていて、
その家族の声を聞きながら、
押し入れの中の自分は、だんだん意識が遠のくような、
どこか深淵に消えていくような、
そんな気がしたものです。
もちろん、これは勝手な読みで、作者の意図とはちがうかもしれません。
しかし、すぐれた歌というのは、読み手の個人的な忘れていたような幻想までも呼び起こすものでしょう。
まだ本の最初のほうです。
ひとつひとつ、
ゆっくりと読むつもりです。