初めて書かせていただきました。
まさか、自分が帯文を書かせていただけるとは、
思ってもみませんでした。
しかも、出版社は、
あのロシア文学で有名な群像社さん!
しかも、訳者は、
かねて尊敬していた秋草俊一郎さん!

『出身国』というタイトルで、
著者はドミトリイ・バーキンです。
「ドミトリイ・バーキンなんて作家は知らないなあ?」
と思われるでしょうが、
それもそのはずで、
本書が日本での初めての単行本です。
ロシアの作家ですが、
じつは本国でも「謎の作家」とされています。
若くして天才と絶賛されながら、
正体を隠したまま、姿を消してしまったのです。
その生涯で唯一の本が、この『出身国』です。
まだ生きている現代の作家なので、
もしかすると、さらに作品が発表されるかもしれませんが、
今のところは、本はこれだけなのです。
それを日本で読むことができるのですから、
翻訳というのは、本当にありがたいものです。
帯にも書いたのですが、
こういう未知の素晴らしい作家との出会いこそ、
読書の醍醐味ではないでしょうか。
その作品を読まなければ、決して出会えなかった世界、
そういう出会いこそ、かけがいのないものだと思います。
安部公房のこんな言葉を思い出します。
「人間は自己拡張する存在なんだ。
この話を知っている人間と、知らない人間では、すでに拡張度が違う。
それが芸術なんで、お説教はどうでもいい。
べつにイデオロギーの上で何かを教わったとか、
人間の幸福について学んだなんて言えないけど、
自分の存在はたしかに拡張するね」
ドミトリイ・バーキンについては、
この本の訳者あとがきに詳しく書いてあって、
それがとても面白いので、
まずあとがきからご覧になるのもいいかと思います。
作品の内容については、
あえてふれません。
未知の作家の未知の作品を、まったく予備知識なしに読むということは、
現代ではけっこう難しいことですから、
その貴重な体験を、ぜひ味わっていただきたいと思います!
こちらで購入することができます。
群像社ネットショップ『出身国』
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訳者の秋草俊一郎さんは、
こういう本を出しておられる方です。
ナボコフ 訳すのは「私」―自己翻訳がひらくテクスト/東京大学出版会

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この本がびっくりするほど面白くて、
それ以来、ファンです。
その方の訳書の帯文を書かせてもらえようとは、望外の喜びでした。
他にも、クルジジャノフスキイを日本に紹介されています。
瞳孔の中 クルジジャノフスキイ作品集/松籟社

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未来の回想/松籟社

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『ナボコフ全短編』にも参加しておられます。
ナボコフ全短篇/作品社

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『世界文学とは何か?』にも。
世界文学とは何か?/国書刊行会

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