カフカのいない日の始まり…… | 「絶望名人カフカ」頭木ブログ

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『絶望名人カフカの人生論』『絶望読書』『絶望図書館』、NHK『絶望名言』などの頭木弘樹(かしらぎ・ひろき)です。
文学紹介者です(文学を論じるのではなく、ただご紹介していきたいと思っています)。
本、映画、音楽、落語、昔話などについて書いていきます。

昨日、6月3日は、カフカの命日でした。

1924年の今日、6月4日から、
カフカのいない日々が始まりました。

カフカの最後の日々の話にも、
いろいろと興味深いエピソードがあるのですが、
このあたりのことは、
悲しすぎて……。

病気になってかえって喜んだあたりくらいまではいいのですが、
それ以降は、
つらくて、なかなか読めません。

食事がとれなくなって、
喉の渇きに苦しんだカフカは、
病室の花瓶の花がちゃんと水を吸っているかを、
とても気にしています。

「芍薬の世話をしたい。芍薬はとてもひ弱だから」

「芍薬が花瓶の底にふれていないか、見てくださいませんか」

「花瓶に押し込められている、そのいちばん下の花が苦しまないよう、
 気をつけなくては。
 どうすればいいだろう」

いずれも、
しゃべれなくなっていたカフカが、
メモ帳に書いた言葉です。

「ちょっと手を額においてください。ぼくに勇気が出るように」

(T.T)