「世界の森林がどんどん減っている」
というような話を聞いても、
「それはいかんなー」とは思うものの、
実際の身の回りはすでに開発されつくしていて、
壊されるものがあったとしても、それはビルや家で、
自然が減っていくのは、
遠いどこかでの話でした。
しかし、宮古島に来てから、
自然がまさに目の前で壊されていきます。
ドアを開けたすぐ前とか、
窓を開けたすぐ前とか、
目の前すぎるほど目の前です。
先日、ドアを開けたすぐ前のところの空き地の自然が、
ショベルカーによってすべて除去されてしまったことを
このブログに書きましたが、
今度は、窓を開けたところの自然が、
ショベルカーによって、破壊されました。
窓からヒドイ音がし始めたので、
驚いてのぞいてみたら、
またしてもショベルカーで、
雑木や雑草が、これも以前と同じように、なぎ倒されていました。

ここまで育つには、
雑草はともかく、
雑木はずいぶん年数がかかったことと思います。
しかし、破壊するのは、本当に簡単です。

「自然が減っていく」という話だけだと、
理性的に、「それはいけない」と思うだけですが、
こんなに目の前でやられると、
木がめきめきと音を立てて折れる音がイヤでも聞こえてきますし、
草が血を流す臭いがどうしたって部屋の中に流れ込んできます。

たった1日で、もうこの状態です。
ここの木々の間を抜けてくる風、
鳥の声、虫の音に、
ずいぶんなぐさめられてきたのですが……。
谷川健一全集〈第6巻〉沖縄2―沖縄・辺境の時間と空間 他/冨山房インターナショナル

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この本の中に、
「宮古島の神と森を考える」
という文章も収められていて、
そこに、こうあります。
「宮古群島の森林面積は、
沖縄県が本土復帰した昭和四十七年(一九七二)には
七千八百ヘクタールであったものが、
ざっと二十年後の一九九三年には三千六百ヘクタールに減少している。
つまり半分以下に減っている」
その後も、こうしてどんどん減ってきていて、
今や宮古島では、植林が始められている状態です……。
もちろん、私に文句を言う資格はありません。
私のいるアパートにしても、
こうして自然をはぎとった後に建てられたものにちがいありません。
私のような移住者がいるから、
ますますこういうことになるわけです。
その私が文句を言うなどは、
まったく本末転倒です。
しかし、肉が好きで食べる人でも、
目の前で動物が殺されれるところを見れば、
やはり心が騒ぐでしょう。
日々、愛でてきて、
ゴミを拾ったりしていた場所が、
1日にして破壊されれば、
やはりこれはツライです。
これほどお金が欲しいと思ったことはありません。
お金があれば、せめて周囲の空き地だけでも買い取って、
そのままに残しておくものを……。
そもそも、
自分の土地だからといって、
なんでも自由にしていいものなのでしょうか?
夏目漱石がたしかこんなことを書いていました。
「空を区切って、
ここからここまでは俺のものだなんて言ったとしたら、
ずいぶん滑稽なことじゃないか」
(記憶なので不正確ですが)
土地だって、本当は滑稽なことのような気がします。
自然を区切って、
ここは俺のものだなんて。
沖縄には、久高島という島があって、
神の島と呼ばれていますが、
この島には、
土地は個人の所有するものという概念がないそうです。
……
で、3枚目の写真のように、
現在は、引っこ抜かれた雑木や雑草が、
山に積まれている状態です。
そして今、
台風が2つも来ようとしています。
もう怖ろしい音を立てて風が吹き、
雨が窓に打ち付けています。
このまま台風に直撃されれば、
沖縄の台風というのは、
それはもう凄まじいものなので、
根をはっている木でさえ、抜けて飛んだりすることがあります。
まして、こうして引っこ抜かれて積み上げられているだけでは、
これらはすべて飛ばされるにちがいありません。
そして、近所の家々の窓を突き破る可能性大です。
そう、その近所の家の中には、
私のアパートも入ります。
私の部屋の窓はまさにこの空き地に面しているので。
自然破壊のバチを、
私が受けてしまうことになるかもしれません……。
映画なんかでよく、
嵐の晩に、
木が窓を突き破って入ってくるシーンがありますが、
現実に体験するのは、勘弁してほしいものです。
もはやこの雨風では、
片づけには来ないでしょうから、
台風がそれてくれることを願うばかりです……。