それは、
カフカの日記や手紙が、
とつてもなく面白い!
ということです。
カフカはかなり有名な作家ですし、
読んだことはなくても、
名前だけは知っている、
『変身』の「ある朝、目が覚めたら、ベッドの中で虫になっていた」という出だしだけは知っている、
という方はけっこうおられます。
それで興味を持って、
何か読んでみようという気になったとしても、
読むのは、まず小説でしょう。
当然です。
まずは、最も有名で、薄くて読みやすい、
『変身』を読んで、
それで面白いと思ったら、
さらに他の作品に進んで行く、
という人が多いのではないかと思います。
私もそうでした。
しかし、日記や手紙まで読む人は、
あまりいないでしょう。
よほど熱心なファンか、
あとは研究者くらいなもので。
実際、面白い小説を書く作家でも、
日記や手紙となると、
作品ではないですから、
あまり面白くないことが多いものです。
私も最初、
カフカの日記や手紙は、
読みませんでした。
カフカの日記や手紙は膨大で、
全集の半分を占めていたので、
買わずにすませれば、
ずいぶん節約になる、
という実際的な問題もありました。
ところが、あとで、カフカの手紙の一節を目にして、
飛び上がるほどビックリしました。
ものすごく面白いのです。
カフカの書くものは、
小説だけでなく、
他のすべての文章が、
まぎれもなくカフカで、
なんとも面白いのです。
落語の名人、
古今亭志ん生の、
家庭での様子を録音したテープを聴いたことがあります。
家でも、
「おいっ、そこの醤油をとってくんねえ」
「あいよ」
なんて、落語そのものの会話をしていました。
これじゃあ、息子が2人とも名人になるわけだ、
と思ったものです。
ちょっとわかりにくい例えだったかもしれませんが、
カフカの場合も、
何を書いても、つねにカフカなのです。
まるで、さわるものがすべて黄金に変わる王様のようです。
全集の日記や手紙の巻を、
あわてて探しました。
すでに絶版になっていて、
かえって何倍もの値段と、
大変な労力をかけて、
ようやく手に入れることに。
それ以来、折にふれ、
カフカの日記や手紙の
適当なところを開いては、
読んでいます。
じつに、いいです!
このよさを、もっと多くの人に、知ってもらいたと思いました。
知らないのは、もったいない!と。
ところが、今、
カフカの日記や手紙の邦訳は、
古本でしか手に入りません。
それも入手困難ですし、かなりの高値です。
なんとか、日記や手紙の面白さの、
エッセンスだけでもお伝えできないものか……。
それが、今回の本を出した動機のひとつです。
で、それがなぜ「絶望の名言集」になるのかと言うと、
カフカの日記や手紙の名言を集めると、
自然と、「絶望の名言集」になってしまうのです(笑)
絶望名人カフカの人生論/フランツ・カフカ

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